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「白身フライ 生態系壊す?――アフリカ産輸入魚『ナイルパーチ』」
2006.12.29 朝日新聞(朝刊)
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レストランでフライ、ソテーとして出される白身魚が、1万㌔も離れたアフリカから輸入されているケースがあることを知っていますか――。ナイルパーチと呼ばれるスズキの仲間で、2㍍にも成長する魚、しかし、生息するアフリカ・ビクトリア湖では、大量に繁殖して、生態系を壊すという問題も起こっている。日本では、この問題をテーマにしたドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢」が公開され、話題になっている。
(庄司直樹、石井徹)
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産地の湖で大量に繁殖
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ナイルパーチは、日本に観賞用として幼魚が輸入されているほか、食用として、三枚おろし(フィレ)の形で冷凍され、アフリカから海路で運ばれてくる。フィレが大きいため切り身にしやすく、ほかの白身魚に比べて加熱しても身割れがしないのが特徴だ。
ホテルのバイキングや国際線の機内食向けが多く、大型テーマパークのレストランなどでも使っているという。メニューではフライやソテーなどの料理になり、魚種が示されないことが多い。
05年の日本の輸入量は約2500㌧。99年は約9千㌧あったが、ここ数年は価格の高騰で減る傾向にある。欧州連合(EU)に次ぐ量だ。
水産最大手のマルハ(東京都千代田区)は05年、ケニア、タンザニア、ウガンダ3国から約1200㌧を輸入、国内流通のほぼ半分を占める。千葉県成田市の食材卸カナディアンリーフ(加瀬邦康社長)は、インターネットを通じて地方発送している。値段も日本のスズキに比べれば安いので、業務用として根強い需要があるという。
淡水湖では面積が世界第2位のアフリカ・ビクトリア湖に、外来種ナイルパーチが食用の目的で放流されたのは、1950年代以降。この湖は生物多様性の宝庫で「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていた。80年代に爆発的に増え、在来種のほとんどは絶滅し、生態系は一変した。湖畔の町には一大魚産業が誕生し、農村から人が押し寄せた。
映画「ダーウィンの悪夢」は、町の裏の側面に注目する。貧富の差が拡大し、売春、エイズ、ストリートチルドレン、ドラッグがはびこる。やがて湖の環境は悪化し、ヨーロッパからの武器密輸の疑いも浮上するストーリーだ。
80年代に青年海外協力隊員としてケニアに滞在し、その後、ビクトリア湖の水産業を調査した横須賀学院高校教諭の秋元徹さん(47)はこう指摘する。
「ナイルパーチを諸悪の根源のように描いている点では偏りがあるが、アフリカの貧困の悪循環を考えるにはいい教材だ」
貧困が深刻化し、都市のスラムが広がって治安が悪化しているのは事実だが、それはビクトリア湖範に限らない。ナイルパーチは、雇用や地域経済、外貨獲得の面ではプラスだが、ナイルパーチが放流されたことによる生態系の破壊は取り返しがつかない、という。
「アフリカのように遠くから大量のエネルギーを消費して運ばれた淡水魚をたべることに、疑問を持つ人は多いのではないか。日本の消費者は、すくなくとも何を食べているのかを知る必要がある」と話す。
映画は、フーベルト・ザウパー監督。04年ベネチア国際映画祭の賞などを受賞。06年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされた。東京・渋谷のシネマライズで上映中。来年1月以降、札幌、名古屋、大阪、福岡など全国で順次公開。詳しくはホームページ(http://www.darwin-movie.jp)で。
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【キーワード――ナイルパーチ】映画「ダーウィンの悪夢」で話題に
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アカメ科の魚。全長2㍍。重さ100㌔にもなる大型の肉食だ。日
本で生息可能なのは沖縄だけで、国内での野生化や河川や湖沼での
定着報告はない。ただ、生態系への影響は大きいと見られるため、
環境省は「要注意外来生物リスト」に載せて飼い主に警戒を呼びか
けている。北米産の特定外来生物ブラックバスのような存在で、ど
ちらも国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワー
スト100」に指定されている。
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「白身フライ 生態系壊す?――アフリカ産輸入魚『ナイルパーチ』」
2006.12.29 朝日新聞(朝刊)
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レストランでフライ、ソテーとして出される白身魚が、1万㌔も離れたアフリカから輸入されているケースがあることを知っていますか――。ナイルパーチと呼ばれるスズキの仲間で、2㍍にも成長する魚、しかし、生息するアフリカ・ビクトリア湖では、大量に繁殖して、生態系を壊すという問題も起こっている。日本では、この問題をテーマにしたドキュメンタリー映画「ダーウィンの悪夢」が公開され、話題になっている。
(庄司直樹、石井徹)
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産地の湖で大量に繁殖
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ナイルパーチは、日本に観賞用として幼魚が輸入されているほか、食用として、三枚おろし(フィレ)の形で冷凍され、アフリカから海路で運ばれてくる。フィレが大きいため切り身にしやすく、ほかの白身魚に比べて加熱しても身割れがしないのが特徴だ。
ホテルのバイキングや国際線の機内食向けが多く、大型テーマパークのレストランなどでも使っているという。メニューではフライやソテーなどの料理になり、魚種が示されないことが多い。
05年の日本の輸入量は約2500㌧。99年は約9千㌧あったが、ここ数年は価格の高騰で減る傾向にある。欧州連合(EU)に次ぐ量だ。
水産最大手のマルハ(東京都千代田区)は05年、ケニア、タンザニア、ウガンダ3国から約1200㌧を輸入、国内流通のほぼ半分を占める。千葉県成田市の食材卸カナディアンリーフ(加瀬邦康社長)は、インターネットを通じて地方発送している。値段も日本のスズキに比べれば安いので、業務用として根強い需要があるという。
淡水湖では面積が世界第2位のアフリカ・ビクトリア湖に、外来種ナイルパーチが食用の目的で放流されたのは、1950年代以降。この湖は生物多様性の宝庫で「ダーウィンの箱庭」と呼ばれていた。80年代に爆発的に増え、在来種のほとんどは絶滅し、生態系は一変した。湖畔の町には一大魚産業が誕生し、農村から人が押し寄せた。
映画「ダーウィンの悪夢」は、町の裏の側面に注目する。貧富の差が拡大し、売春、エイズ、ストリートチルドレン、ドラッグがはびこる。やがて湖の環境は悪化し、ヨーロッパからの武器密輸の疑いも浮上するストーリーだ。
80年代に青年海外協力隊員としてケニアに滞在し、その後、ビクトリア湖の水産業を調査した横須賀学院高校教諭の秋元徹さん(47)はこう指摘する。
「ナイルパーチを諸悪の根源のように描いている点では偏りがあるが、アフリカの貧困の悪循環を考えるにはいい教材だ」
貧困が深刻化し、都市のスラムが広がって治安が悪化しているのは事実だが、それはビクトリア湖範に限らない。ナイルパーチは、雇用や地域経済、外貨獲得の面ではプラスだが、ナイルパーチが放流されたことによる生態系の破壊は取り返しがつかない、という。
「アフリカのように遠くから大量のエネルギーを消費して運ばれた淡水魚をたべることに、疑問を持つ人は多いのではないか。日本の消費者は、すくなくとも何を食べているのかを知る必要がある」と話す。
映画は、フーベルト・ザウパー監督。04年ベネチア国際映画祭の賞などを受賞。06年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にもノミネートされた。東京・渋谷のシネマライズで上映中。来年1月以降、札幌、名古屋、大阪、福岡など全国で順次公開。詳しくはホームページ(http://www.darwin-movie.jp)で。
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【キーワード――ナイルパーチ】映画「ダーウィンの悪夢」で話題に
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アカメ科の魚。全長2㍍。重さ100㌔にもなる大型の肉食だ。日
本で生息可能なのは沖縄だけで、国内での野生化や河川や湖沼での
定着報告はない。ただ、生態系への影響は大きいと見られるため、
環境省は「要注意外来生物リスト」に載せて飼い主に警戒を呼びか
けている。北米産の特定外来生物ブラックバスのような存在で、ど
ちらも国際自然保護連合(IUCN)の「世界の侵略的外来種ワー
スト100」に指定されている。
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