裁判の百年間の物語 夏樹静子の12編なり
「裁判百年史ものがたり」 夏樹静子 文藝春秋
2008年から「オール讀物」に連載されたもの。
2009年の裁判員制度スタートを意識して書かれた物語。
>1 来日したロシア皇太子が襲撃された「大津事件」(明治24年)
8 ロシア皇太子 「すっきりした眉と涼しい眸、鼻の下に短い髭を貯えた貴公子らしい容貌」。なんだい、ほめすぎ。やなかんじ。
>2 幸徳秋水らによる天皇暗殺謀議事件:「大逆事件」(明治42年)
27 かたや大逆事件の青年 「社会主義の本を読みあさり」。なにこの書き方。貪欲に読書するすがたを「あさる」と表わすんだ。
31 「維新の元勲・伊藤博文がハルビン駅頭で、韓国人安重根に射殺された」 えっ、そのころ韓国ないだろ。
40 幸徳秋水「聞取書及調書の杜撰」 ずっとまえからそうなのね
>3 日本で初めての陪審裁判(昭和3年)
希望すれば晩酌も、可。
金持ちしか陪審員にならないから、名誉職みたいなもんか。
このまえ聞いた武内更一弁護士の分析と真逆。
>4 東条英機の翼賛政治体制がらみで起きた「翼賛選挙事件」(昭和18年)
えらいじゃん裁判官。
>5 銀行員の大量毒殺で有名な「帝銀事件」(昭和23年)
93 自白を続けたのは検事の取調中の17日間。その後39年間、終始一貫、無罪を主張し続けた。
>6 有罪無罪が二転三転した難事件「松川事件」(昭和24年)
111 文壇の長老9人の連盟による書面を裁判長宛てに提出。いまは、そんなのないなあ。
112 広津和郎 政治裁判とし見るのではなく、あくまで刑事事件としてみる 中央公論に5年の連載。
157 正木ひろし「裁判官」がベストセラーに 映画「真昼の暗黒」。
>7 ”わいせつ性”が問われた「チャタレイ事件」(昭和26年)
伊藤整の訳文は、おもしろくなかった。
>8 共犯者の自白の信用性が問題となった「八海事件」(昭和26年)
166 真犯人の手紙16通を、刑務所が差押える。出所者の伝言を弁護士や記者に言ったので判明。ひどいぞ。
>9 尊属殺規定が違憲とされた「娘による父殺し事件」(昭和43年)
189 まえに「強姦し五児を産ませて五度中絶 鬼畜の父の娘の悲劇」と歌った事件だが、高裁とんでも裁判長でてくる。
>10 未成年者に対する死刑判決として有名な「永山事件」(昭和43年)
171 やはり堀川恵子のルポが最高だなあと思いながら頁をめくる
>11 不倫をした”有責配偶者”からの離婚請求を初めて認めた「離婚裁判事件」(昭和62年)
別居して38年か。諸外国との対比。
>12 被害者参加規定の整備に奔走した弁護士の活動:「被害者の求刑」(平成9年~現在)
268 光市事件の被害者遺族がでてくる。被害者参加に関して良いことばかり書いてある。
対談 元最高裁長官と、語り尽くすだって。
よいしょしあってて...気持ち悪い(と思うわたしは、ひねくれもの?)
全286頁、労作ではある。