モノ作り・自分作り

東横線 元住吉 にある 絵画教室 アトリエ・ミオス の授業をご紹介します。
美術スタッフが、徒然に日記を書いています。

二つの武器の使い方

2022-06-22 23:51:44 | 大人 日本画


馬込  岩絵具・顔彩/パネルに和紙

行きたい展覧会や観たい映画が沢山あるのに肝心の時間がないです、ナツメです。今日は月曜大人クラスの馬込さんの作品をご紹介します!今回は2枚の日本画を制作されました。

まず左の作品。構成が非常に面白く、兎を渦巻く波の下には真上から見た亀甲模様が描かれています。

兎、波、亀と聞くと「因幡の白兎」や「うさぎとかめ」などの物語が連想されますが、まさに物語のように背景が気になってくる一枚です。甲羅の模様や兎の毛並みの線を墨で描くという平面的な描写をされているのですが、間に青色で濃淡をつけた波を挟むことでレイヤーのような階層構造になりました。渦の流れも相まって、観ていると奥へ奥へとまるで海の下に引き込まれていくような気分になります。普段パワフルな油絵を描かれる馬込さんですが、この絵にもそんな力強さが表れているように感じます。

 

そして右の作品。左の作品とは打って変わって、今度は写実的に描かれました。めいいっぱい目を上に伸ばしているカタツムリが可愛らしいですね!こんな風景を丁度梅雨のこの時期に見かけることが出来そうです。

淡い色合いの背景の滲みの使い方が非常に効果的で、境界も曖昧になるほど色が広がり重なり合っているため、雨上がりのような明るく湿度のある印象を受けます。また、全体としては明度の同じパステルカラーなのですが、左下に少し暗く彩度も高い青を置くことで左下から右上への視線誘導までされています、素晴らしい!カタツムリも殻の硬くて凸凹のある質感や体が少し透けている様子など、「リアルすぎて若干気持ち悪い」とまでは行かない一歩手前のところで高い観察力で緻密に描写しています。

本当に同じ人が描いたんだろうか?と思ってしまうほど表現の振り幅が大きい2枚ですが、見事に画面に合わせて強さと繊細さの二つの力を使いこなしているのは、馬込さんの成せる技です。どちらも武器に、今後の作品にも使い分けて下さいね!

コメント
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