松尾 油彩
秋の気配。岩田です。
土曜午前クラスの松尾さん。彼の絵はいつも型にはまらぬ面白さに溢れている。
絵を描く上で、描き写すという行為よりも構成に重きを置き、様々な要素が混然一体と化すことで複雑な様相を示すのだ。
伊藤若冲。
江戸時代に活躍し、多くの作品を残した絵師。その中に一見普通の絵に見えるのだけど、近づくとまるで小さいタイルが無数に貼られているような、小さいマス目状に区切られ、描かれた屏風がある。
松尾さんのこの作品も、若冲へのオマージュのような要素が含まれているのかもしれない。
でも彼の作品は、若冲のそれよりも更に複雑。完成のイメージを持って描き始ることは困難で、最初はある程度の青写真を思い浮かべながら描くしかないだろう。
作品を見ると、所謂油彩然として描かれている中に若冲のタイル的要素が絡っており、更にそのシルエットがエビなどの生き物のようにも見えるのだ。しかもそのタイルは艶を帯びている。
松尾さんの作品は「実験」。まるで完成が見えないからこそのワクワクドキドキを楽しんでいるようにもみえる。
現在は、カシュ―という樹脂をタイル状に塗り制作を始めている。それを研いで磨いて漆のような質感を出している。
さて、次はどんな作品が紡ぎだされるのだろう。実に楽しみだ。