OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

ホリーズにサイケデリックは似合っていたか?

2010-02-13 15:17:22 | Hollies

キング・マイダスc/w君はサンシャイン / The Hollies (Parlophone / 東芝)

1970年代に入ってからのCSN&Yの大ブレイクは各方面に影響を与えましたが、サイケおやじにとって困ったのは、そのメンバーのひとりだったグラハム・ナッシュが在籍していたホリーズの中古盤が値上がりしてしまったことも、そのひとつでした。

そのホリーズと言えば、なんといっても「バス・ストップ」の大ヒット以降、日本でもそれなりの人気があったイギリスのビートグループでしたが、時代の要請もあって、そのサウンドは何時しかサイケデリック系フォークロックへと発展進化しています。

しかし同時に従来のポップス系のフィーリングに拘るファンの気持とズレが生じていたのは、否めないところじゃないでしょうか?

リアルタイムでは、とりあえず好きなバンドだったホリーズというサイケおやじにしても、経済的な問題から彼等のレコードはホイホイ買えるわけもなく、それゆえにラジオの洋楽番組を頼りに楽しんでいたわけですが、そこから新曲扱いで流れてくる歌と演奏が、少しずつでありますが、迷い道になっている感じを受けていました。

今となっては、ホリーズがグラハム・ナッシュの主導によって、ビートルズやアメリカのサイケデリックロックを意識した音楽性へと踏み込んでいった云々が理解されるのですが、少年時代のサイケおやじにすれば、「ホリーズ=バス・ストップ」という図式を何時までも望んでいたのです。

そして、そんなモヤモヤを結論づけてしまったのが、昭和42(1967)年に発売された、本日ご紹介のシングル曲「キング・マイダス / King Midas In Reverse」でした。

それはアコースティックギターをメインにした不穏なムードのイントロから、キャッチーでありながら、どこか煮え切らないメロディ展開、途中から入って来るエレキベースやドラムスの混濁した存在感が、ホリーズならではの素晴らしいコーラスワークを汚しているように思えましたし、クライマックスに向けて重ねられていくストリングスやオーケストラが、ほとんどビートルズの「Strawberry Fields Forever」と同系の怖いサイケデリックロックになっていたのです。

う~ん、「バス・ストップ」からは1年ちょっとで、この変貌!?!

もちろん以前にも書きましたが、当時のサイケおやじはビートルズのそうした方針には懐疑的というか、はっきり言えば理解出来ないことから不安を感じていたのが正直な気持でしたので、ホリーズに対しても拒否反応が出たのでしょう。

実は後に知ったところによれば、この曲はグラハム・ナッシュがプロデューサーや他のメンバーの反対を押し切ってレコーディングし、シングル発売した結果、英米でも期待外れのお情け小ヒットだったそうですし、これがきっかけとなって、グラハム・ナッシュはホリーズを脱退することになるのですが……。

そんなことは知る由もなかった翌昭和43(1968)年、ホリーズは初来日公演を行い、この時はテレビにも出演し、確か口パクで歌っていた記憶があるんですが、この時の所謂来日記念盤として発売されたのが、この「キング・マイダス」と同じ時期に作られていた、サイケデリックロックの定番アルバム「バタフライ」でした。

しかしサイケおやじは、リアルタイムで聴けるはずもなく、時が流れました。

その間、何時しかリーダー格だったグラハム・ナッシュがホリーズを脱退し、メンバーチェンジがあった報道が地味になされ、なんとなく私もホリーズへの興味を薄くしていったのです。

そして更に時にが流れ、ついにCS&NからCSN&Yの人気が沸騰した時、サイケおやじには再び、ホリーズへの熱い思いが復活し、後追いで集め始めた彼等のレコードで蒐集に苦労したのが、本日のシングル盤だったのです。

なにしろ前述したアルバム「バラフライ」には未収録でしたし、ロクにヒットもしていなかったシングル曲でしたからねぇ……。私の手元にやってきたのは昭和51(1976)年になっていましたが、前述したとおり、ドタマにくるほど値上がりしていましたよ。まあ、今日ほどの狂乱価格ではありませんが。

しかし内容は、その時だったからこその感動というか、はっきりとサイケデリックロックの醍醐味が分かりかけていた私にとっては、ストライクゾーンのど真ん中♪♪~♪

さらに嬉しかったのが、B面収録の「君はサンシャイン / Everything Is Sunshine」が、短いながらもグラハム・ナッシュ特有の優しいメロディと独り多重コーラスが冴えた名曲・名唱の決定版♪♪~♪ もうほとんどCS&Nの世界が出来上がっているといって、過言ではないと思うほどです。

ちなみに、これも後に知ったことではありますが、このシングルの両面とも、完全にグラハム・ナッシュのソロレコーディングに近い作りだったそうですから、さもありなんですよね。そしてグラハム・ナッシュが抜けた後のホリーズが、再びポップス系ロックバンドへと立ち返り、「ごめんねスザンヌ」のウルトラヒットを出したのも当然の帰結だったと思います。

ということで、サイケデリックロックなんていうものが、如何にリアルタイムの一般音楽ファンにとっては重荷だったか?!? そんな証明のひとつになりうる隠れ名曲シングル盤が、本日の1枚でした。

おそらく現在では両曲ともにCD化されていると思われますので、機会があればお楽しみいただきたいところですが、このシングル盤のジャケットに顕著なように、取繕ったサイケデリック風味こそが、当時の洋楽の気分だったことをご理解願いたいところです。

つまり雰囲気に酔って聴くのも、音楽の楽しみのひとつかもしれません。

コメント
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