OLD WAVE

サイケおやじの生活と音楽

初めて買ったフランク・ザッパ

2010-02-10 14:01:04 | Rock Jazz

Hot Rats / Frank Zappa (Bizarre / Riprise)


フランク・ザッパについて、何をどうやって書けば良いのでしょう……。

そんなことを思うより他はないほど、フランク・ザッパという人は鬼才、異能の天才、大衆音楽の芸術家、サイケデリックロックの巨匠、凄腕ギタリスト、ジャズロックフュージョンの開拓者、現代音楽の面汚し、等々の異名がどっさりあって、もちろんそれは制作発表してきたレコードや夥しいライプステージに接した人々の十人十色の気分を素直に表したものでしょう。

しかしフランク・ザッパについては、その名前だけが独り歩きしている感じが確かにあって、特に我国では1960年代末頃から音楽雑誌に記事やレコード評が載っていても、なかなか実際には聴く気になれなかったのが、サイケおやじの気持でした。

なにしろラジオから流れてくるようなシングルヒットも無く、ジワジワと日本盤も出ていたLPにしても、言葉が理解出来ないと十分に楽しめない云々という評論解説があっては、高いレコードに手が出るはずもありません。

そして時が流れました。

昭和40年代も後半なると輸入盤が安く買える環境になったその頃、私の前に忽然と現れたのが、本日ご紹介のアルバムです。

これは結論から言うと、だいたいが自分のバンドだったマザーズを率いての活動をやっていたフランク・ザッパが、あえてソロ名義で作り、1969年に発表したもので、内容はジャズフュージョン系のインスト演奏がメインになっていますから、言葉の問題を抜きにして楽しめる、実に嬉しいレコードだったのです。

 A-1 Peaches En Regalia
 A-2 Wille The Pimp
 A-3 Son On Mr. Green Genes
 B-1 Little Umberllas
 B-2 The Gumbo Variations
 B-3 It Must Be A Camel

参加メンバーはフランク・ザッパ(g,b,per) 以下、マザーズの要だったイアン・アンダーウッド(p,key,sax,fl,etc)、ジャン・リュック・ポンティ(vln)、マックス・ベネット(b)、ジョン・ゲラン(ds)、ポール・ハンフリー(ds)、Ron Selico(ds) といったジャズ系のミュージャンに加え、シュギー・オーティス(b)、シュガー・ケイン・ハリス(vln)、キャプテン・ビーフハート(vo) 等々の大衆芸能組も侮れない活躍をしています。

まずA面ド頭「Peaches En Regalia」が今日に至るもフランク・ザッパの代名詞のひとつになっている、実に強烈なゴッタ煮フュージョンの極みつき! その親しみやすくて不思議なテーマメロディは民族音楽のようでもあり、極楽浄土の和みのようでもあって、実に素敵ですよ。きっとYMOのメンバーや渡辺香津美も大好きじゃないのかなぁ~。各方面で相当にパクられているのは言わずもがな、僅か3分半の密度の濃さは圧巻!

また同系の「Son On Mr. Green Genes」はフランク・ザッパの旧作なんですが、自身の強烈なギターソロをメインに大幅に雰囲気を変更してのジャズフュージョン決定版! ポール・ハンフリーのドタバタファンクなドラムス、マックス・ベネットの蠢くエレキベース、イアン・アンダーウッドが重層的な彩りを添えるサックスやキーボードによって、尚更の混濁を演出しています。

そして正統派モダンジャズを歪めたような「Little Umberllas」は、例えば今日のフレッシュ・サウンド・ニュー・タレントあたりで若手のモダンジャズプレイヤー達がやるような屈折感がありますし、全くの正面突破でロックジャズを演じきった「The Gumbo Variations」には、プログレの連中がモダンジャズに挑戦した数々の目論見を粉砕するが如きエネルギーが充満しています。

気になるキャプテン・ビーフハートの吠えるボーカルは「Wille The Pimp」で楽しめますが、ここでは黒人大衆芸能の人気者だったシュガー・ケイン・ハリスのバイオリンが良い味出しまくり♪♪~♪ 過激で猥雑な両者の競演が、淡々として濃密なリズム隊に支えられているようで、しかし意地悪く躍動するマックス・ベネットのペースが激ヤバですよ。もちろんフランク・ザッパの呪術的ギターがジワジワと存在感を強めていくあたりも流石だと思います。う~ん、このギターソロ、中毒しますよ♪♪~♪

で、こうした演奏も含めて、このアルバムはダビング作業やテープ編集によって作られたものですが、そうした手際の良さが目立ちつつもイヤミはそれほど感じないと思います。

それはオーラスの「It Must Be A Camel」を聴けば納得というか、ローランド・カークと共通するような、異端でありますが、極めてジャズっぽい演奏ですから、そこに様々な詐術があったとしても、ジャズ者には一概に否定出来ないところじゃないでしょうか、苦しい言い訳かもしれませんが……。

まあ、それはそれとして、このアルバム全篇を通して活躍が顕著なイアン・アンダーウッドは正式な音楽教育を受けた曲者ですから、ピアノやキーボード、サックス等々の担当楽器の至極真っ当な音の出し方、幅広い音楽性を感じさせるアドリブや伴奏の上手さは要注意でしょうね。フランク・ザッパの参謀として、最高の適役を長くやってくれたのは幸いでした。

ということで、フランク・ザッパのある一面しか表現されていないとはいえ、入門用としては聴き易いアルバムです。

実際、サイケおやじが最初に買ったフランク・ザッパのレコードが、これでした。

本当に普通のジャズフュージョンとしても楽しめると思いますよ。

ただし安易な和みを求めるとハズレます。

告白すれば、私がこれを買ったのだって、楽器屋に集う諸先輩方のご意見に従ったわけで、その時にも覚悟が要求されていました。

そして結果は個人的に大正解! 以降、ぼちぼちではありますが、フランク・ザッパの後追いとリアルタイムでの修行を積み重ねる、つらい悲喜こもごもがスタートしたのです。

最後になりましたが、丸っきりホラー映画のポスターみたいなジャケ写とデザインもインパクトが大きいですよね。CD化もされていますが、機会があればアナログ盤もぜひ、体験していただきとうございます。

コメント (2)
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