ジーン・ウールの不思議な旅

ジーン・ウールは不思議な女性です。姿を変えて過去にも未来にも現れます。
もしかしたら貴方の友人や奥様かも知れません。

さまよえる魂 4

2006-10-15 21:42:03 | さまよえる魂
4.
木枯らしも好き。暖かい暖炉の薪の匂いを運んでくるから。
夕暮れも好き。なつかしいわが家と、なつかしい父や母の思い出につながるから。
雨降りも好き。雨だれも好き。ひとりぼっちも・・・・。

その時、嫌というほど指を噛まれました。アンタレスです。齧歯類は歯が長く、噛まれると深い傷を負います。
「ジーン・ウールしっかりしなよ。逃げなきゃ駄目だ」
アンタレスには、幻は見えませんでした。でも、得体の知れない存在がジーン・ウールをすっぽりと覆っていたことは感じ取っていました。尻尾がバッと広がっています。それで、何度もジーン・ウールに訴えていたのに、聞こえなかったので、最後の手段に訴えたのです。血が流れ、傷口がズキズキと痛みました。

その後不思議なことが起きました。ジーン・ウールの指先からしたたり落ちた筈の血が、一滴の痕跡も残さず消えてしまったのです。気がつくと先ほどジーン・ウールを誘惑していた幻も消えています。

アンタレスが、ジーン・ウールのポケットから光る石を探し出して言いました。
「ジーン・ウール、この石が僕に言ったんだ。ジーン・ウールが危ないってね。」
その石は、地底の青色人からもらった石でした。いつの間にポケットに入っていたというのでしょう。あれは夢だったはずです。
手にとって眺めると、石は次第に輝きを増してゆき、四角い石の面に一人の男性の姿が浮かびました。いつかその姿がジーン・ウールには、忘れることの出来ないものとなりました。ジーン・ウールは銀のサークレットを作り、サークレットの中心に光る石をはめ込みました。石はダイヤモンドのようにジーン・ウールの額の上で輝いています。そしてサークレットはジーン・ウールの頭に昔からあったようにピッタリと収まりました。

サークレットをつけるようになってから、不思議なことに心はいつも暖かく、一人でいても一人ではありませんでした。何かにつながっていると信じられたのです。
可愛いアンタレスがそばにいたからだけではありません。遠くにいても愛しい方を、ジーン・ウールはいつも心で感じていられたのです。

でも、今宵の夢はこれでおしまい。ジーン・ウールの不思議な話はまた明日。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。