ジーン・ウールの不思議な旅

ジーン・ウールは不思議な女性です。姿を変えて過去にも未来にも現れます。
もしかしたら貴方の友人や奥様かも知れません。

店主ご挨拶

ようこそお越し下さいました。 昨年(2010)、3ヶ月の雲水修行に行ってまいりました。 私は働き者で(自己申告)、精舎は朝は早く夜は遅く「朝瞑想」の時間は、気がつくといつも寝ておりましたが・・。 私の人生の1ページに、思いがけないご褒美を頂けたような日々を過ごさせて頂きました。・・ま、主婦でも決心ひとつで如何様な道も開けるんですね。 今も精舎に行くと「実家に帰った」ような気がします。 このブログ管理人は、最近物忘れ症候群中につき、おいで頂いた感謝を申し上げ、コメントを頂いても書いたり書かなかったり、付き合いが悪いことのご無礼をお許し下さいませ。

「天地人」の今 好きなところ 3

2009-10-15 09:19:45 | 本の話・素敵な話
3.
その年の九月
兼続の父樋口惣右衛門兼豊が、米沢城下の屋敷で病のため世を去った。(テレビでは先週の最後の場面だ)

今週はこの続きからだね。

伏見にいた大国実頼は、父危篤の報を聞き、馬を飛ばして駆けつけたが、臨終はおろか、葬儀の席にさえ間に合わなかった。米沢にたどり着いたときには、惣右衛門の死から、すでに10日がたっていた。

「兄者に話がある」
濡れた目の奥に、思い詰めたような光がある。
「上方で噂を聞いた」
「噂・・」
「兄者が、本多佐渡守の息子を婿養子に迎えるという噂だ」

「・・・」

「しかも竹松を廃して直江家を継がせ、景勝さまにお世継ぎの男子なきときには、本多の息子を上杉家の世子にすえることまで考えていると聞いた。よもや、事実ではあるまいな、兄者」

・・嘘だな、兄者・・・嘘ではない・・・なに・・

「なぜ、本多ごときにそこまで媚びねばならぬ。おのれの保身のために上杉家を売ったか、兄者ッ」

・・おのれのためではない・・・ならば、なぜ・・

「関ヶ原のいくさがおわってから、わしは世の中というものを、いままでとは違う目で見つめ直すようになった。天下は誰のものか。この上杉家はいったい誰のものであるのか」

・・決まっている、天下は秀頼さまのもの・・上杉家は景勝さまのもの・・いや、そうではない・・

「天下は、天下の天下だ。上杉家もまた、景勝さまおひとりのものではない。国は、その国にもっともふさわしきものが治める。それが、道理だ」

・・徳川に喧嘩を売った兄者はどこへ行った。それほどまでして、生き残りたいか・・

「生き残りたい。いや、変わりゆく世のなかで、わしは命を賭け、上杉家を生きのびさせてみせる」

「徳川の諜者といわれる本多の次男に、上杉家を継がせる。それが兄者の考えた生き残りの策か」
 
「・・本多の後ろ盾があれば、上杉家は取りつぶしをまぬがれる。家臣たちの誰一人として、路頭に迷わずにすむのだ」

「笑わせる」 実頼は、あざけるような笑いを口もとに浮かべた。だが、その嘲笑とはうらはらに、涙が頬をつたい落ちている。

いいねえ。一気に書いたんだね。
読みながら泣いているのは私だけ?

そして、つづく