よのなか研究所

多価値共存世界を考える

武器はどこから、

2013-01-23 22:27:36 | 時事

 

                                 Photo ( 広島平和公園からのぞむ原爆ドーム )

アルジェリアでの多国籍からなる武装集団によるBP(ブリティシュ・ペトロリアム)社の天然ガスプラントでの人質事件と、これに対するアルジェリア政府の現場襲撃は何ともやりきれないものがある。日本企業の海外事業史上最も大きな悲劇であった。一昔前なら中東・アフリカでイスラーム武装勢力の襲撃事件があっても日本人が狙われることはないと、との思い込みがあったが、小泉政権下でのイラクへの自衛隊派遣・駐屯、自衛隊の補給艦による米軍を主体とする多国籍軍艦隊への燃料補給以来、そんな考えは通用しなくなった。

歴史をひもといても、日本が中東・アフリカの国土に攻め込んだことはなく、領土争いに加担したことも、奴隷貿易にも関与したことはほとんどなかったはずである。国境線が縦横の直線や不自然な斜め線であったりするのは、西欧列強の支配地区を基に線引きされたものである。今回の事件で被害者を出した英・仏・米ら欧米諸国と我が国の間には明らかな差があった。アフリカの地にこれまで実害をもたらしたことはなく、各国の資源輸出のためにその開発・建設を手伝う、又、資源探査を行うという仕事で日本の数社がアフリカで業務に従事しおり、数百人規模の専門家と作業員が駐在しているのである。外務省はじめ、政府関係部署に、日本人は安全との思いがあったとしたら反省するときではないか。

それにしても、映像を見る限り武装勢力も政府軍に負けないほどの大量の重火器を持っていたようだ。報道各社の一致するところでは、リビアのカダフィ政権が倒れた時に、大量の武器弾薬が周辺地域に流出し、その一部が今回の武装集団に回っていたとのことであるが、現実には複雑な背景があるのだろう。現在シリアにおいても反政府武装勢力が政府軍に対抗して内乱状態になっている。彼等の武器はどこから来ているのかは報道でも余り聞くことがない。不思議なことに、シリアにおいては反政府側を欧米諸国及び日本が支持していることである。主権国家の政府を信任しないということであれば、先に国家不承認を伝えるべきではなかろうか。一応の終結を見ているスーダン内戦では、スーダン政府がイスラーム政権であったのに対し、南部の元英国支配地域のキリスト教急進派が反乱を起こし、長い内戦の後に南部の自治権が認められ、さらに住民投票の結果独立が認められた経緯がある。

共通していることは、いずれの場合もそこに大量の武器が流入していることである。アフガニスタンには1979年のソ連軍の侵攻で大量の重火器と戦車が持ち込まれ、これに対抗してアメリカがパキスターン経由で対戦車地雷、対空ロケット弾などの武器を大量に運び込み当時のムジャヒディンに提供した。現在アメリカはじめ有志連合軍が手を焼いている相手はこの時の兵器を現在も使用している。

世界中に兵器が散乱しているのは合法非合法の武器商人の手によるが、その出どころは武器輸出国である。スウェーデンのストックホルム世界平和研究所が毎年発表している「SIPRIリポート」 2012年版の武器輸出国ランキングは以下の通りである。

1アメリカ、2ロシア、3フランス、4中国、5ドイツ、6イギリス、7イタリ―、8スペイン、9スウェーデン、10オランダ、そしてこれ以下で意外な国は11イスラエル、13スイス、などがある。ここでも国連安保理の常任理事国五カ国とドイツのG6が上位を占めているが、米・ロの数字が他を圧している。軍事費では二位の中国は輸出額は意外に小さいことがわかるが、単価の低い兵器を大量に輸出していると推測される。


民主党政権下に「武器禁輸三原則」の緩和が決められたが、民主党の三年間を全否定している自民党やその支持者たちもこれは評価しているようだ。日本の兵器の改良技術は優れており、本格的に取り組めば日本製の兵器が世界各国に売られ、それがやがて闇市場に出回り、今回と同じような反政府組織の手に渡ることは容易に予想されるところである。これまで自国製の兵器で死傷される兵士・民間人は欧米諸国がほとんどであったが、ことがこのまま進めば日本人が日本製の兵器で傷つく日がやってくるのかも知れない。

かつて盛んに議論された「軍縮」というテーマは、近年では出る幕を失しなったかに見える。非対称の戦闘はますます増えていくとの予測がなされている中、本来なら、今こそ我が国が「反核」と並んで「軍縮」を世界に向けて発信するときではないか、そうでないと尊い命を失った同胞の霊魂は浮かばれない。合掌!

(歴山)