Photo (太平洋から打ち寄せる波、奄美大島)
「太平洋・島サミット」が開催された。
島国である日本がアジア諸国同様、太平洋の島々と手を携えて安定と繁栄を目指すことは重要である。沖縄県名護市での開催も意義があると思われる。特に今回は、東日本震災の教訓を踏まえた自然災害対応で協力を拡充することが議題にとなったとのことである。
「太平洋・島サミット」はオセアニア地域の協力機構「太平洋島嶼フォーラム(PIF)」加盟国の首脳らを招き、日本が1997年に東京で開催し、それ以降三年ごとに開催してきている。その点では日本の行動は速かった。しかしその後会議の場での協力確認や体制づくりを進めてきたが実体ある支援は乏しかった。そこに経済力を強めた中国が割り込む形で存在感を増してきている。
今回出席した太平洋諸国13カ国の中にはかつては台湾を承認していた国が多かった。現在も数カ国が台湾を独立国としている。そんな背景もあって、中国は2005年から09年の間に6億ドル(480億円)の経済援助を実施してきた。幾つかの国は中華民族を代表する主権国家として台湾から中国に乗り換えてきている。財政基盤の弱い途上国が資金や技術を必要とするのは世界中どことも同じである。中国が発展途上国に資金を援助し、低金利の貸付けを行うことはむろん評価すべきことである。他方、日本はこの地域への政策が遅れていることは否めない。
中国は、トンガやフィジーとは軍事交流も進めている。これを非難することは今の日本には出来ない。経済力を背景にアメリカが中南米をはじめ、アフリカ、中東、東南アジアの途上国で行ってきたことの焼き直しであり、中国が経済力を背景に同様の行動をとるに至った、ということである。
遅ればせながら、今回の第六回太平洋・島サミットで、日本政府は今後三年間に計5億ドル(約400億円)に上る政府開発援助(ODA)を拠出する意向を表明した(27日、各紙)。また、今回豪州、ニュージーランドに加え初めてアメリカが参加したことも注目された。ただ、今回米政府が送り込んできたのは閣僚級ではなく、筆頭国務次官補代理、Principal Deputy Assistant Secretary for East Asian and Pacific Affairs、という立場の人物にとどまっている。あきらかに抑制された力の入れ方と見える。
日本がODAによる支援を表明したのも、狙いはこの地域で影響力を強めている中国への対抗心である、とも報じられている。また、「航行の自由」の確保を含めた海洋ルールの順守、を首脳宣言で初めて打ち出したのも、中国を意識したものであるとされている。
中国は東シナ海や南シナ海で海洋権益の拡大を計っているが、鉱物や海洋資源などを狙い、太平洋諸島に関与を深めていくことになるのは間違いない。太平洋の広い海域で中国とアメリカが対恃する事になるかもしれない。
ここで気がつかされるのは、APEC「アジア太平洋経済協力会議」にこれらの国々は出席していないことである。なぜ太平洋の諸国がアジア太平洋の会議に招かれていないのだろうか。APECは経済協力を目的としているから経済未発達の国は関係ない、と言うことだろうか。経済規模が小さすぎて論ずるに足りない、と言うことだろうか。
「アジア太平洋」と呼びながら、太平洋の国々を排除していたことは、APECの欠陥であり、単なる落ち度では済まされないものがある。その目的とするところが地域の安定や協力ではなく、大国同士の勢力争いの場であるに過ぎないことを如実に物語っている。日本政府はAPEC加盟の時点で、これら太平洋諸国の加入について提言をすべきであったし、今になってそのことを悔やんでいるのかもしれない。
アメリカが「アジア太平洋」への関与を高める、と云い、中国が海上権益の確保は主権国の権利である、と主張する時代を迎え、自主的外交戦略の構築が期待されるのだが。
(歴山)