よのなか研究所

多価値共存世界を考える

人口と国家、  

2013-01-03 08:21:50 | メディア

 

                      

                                           Photo ( 過疎の村の廃屋、鹿児島県宇検村 ) 

元旦の新聞各紙に目を通し、さほど気の利いた特集は気がつきませんでした。ベタ記事の中に、「昨年末の日本の人口が前年末に比べ21万2千人減った」と報じられていました。すでに2006年から減少に転じた人口推移は、これから坂道を下り落ちるように減り続け、2050年に一億人を割り込み9515万人に、やがて6千万人台、4千万人台へと向かうと予想されています。総務省統計局や生命保険会社の将来の人口予想数は、調査の度に減少幅が拡大しているところに問題の根深さが見てとれます。

さらに深刻なのは、生産人口の減少です。すなわち、人口が減るのみならず高齢化が促進することで、生産人口は2030年に6740万人、2050年には4930万人となるとの予想です。

1960年代から世界にもまれな経済成長を成し遂げた日本ですが、今度は世界にもまれな人口減少という状況を世界に披露することになるわけです。

しかし、悲観だけしている場合ではではないのです。人口が縮小していくのは日本だけではありません。先進国は移民の国アメリカ合衆国を除けば全て減少しています。手厚い社会保障で知られる北欧諸国、たとえばスウェーデンでも人口は減っています。現在人口の増加傾向が続いているのは、南アジア、中近東、北アフリカ、中南米諸国と言われています。そのなかでも、現在人口世界一位の二位の中国とインドもやがては人口減少に向かうと予想されています。中国は2016年にピークを迎え減少に転じるとの予想ですが、残る三年後ですね。インドはさすがにまだまだ人口は増え続け、2025年に14億人でピークを迎える、とされています。なにしろ、中国が「一人っ子」政策を採っているのに対し、インドは独立以来「四人家族」を推奨する政策、つまり子供は二人まで、という政策が取られていました。それはまた、「コミュナル」と呼ばれた大家族制度や地域主義や階層からの脱却をも合わせて進める政策でした。インドがピークを迎えても、バングラデシュ、パキスターン、インドネシアは引き続き人口大国として残ります。

こうしてみますと、この先日本の国家経営は厳しい状況が続くことは確かですが、考えようによっては世界に先駆けてこれへの対処方法を構築することができれば、そのことが世界のお手本となることができます。国会で、また報道機関たるメディアが議論すべきことはこのことなのです。マスコミは部数競争、視聴率競争で忙しいですから、地味だが本質的で長期的な問題は扱いが小さくなります。そこでは、「戦争が出来る国に」とか、「地域経済連携協定に乗り遅れるな」とか、「今年は株価が上がる年」といったテーマに、スポーツ中継や芸能人の楽屋話しの方が経営に寄与します。本当に論ずべきことが何であるかは後回しになりがちです。

これは、日本だけの問題ではなく、マスメディア、とくにテレビという「魔法の箱」(今では「魔法の板」か)を生みだした人類の共同の問題なのです。

メディアは「何かを伝える」機能と「何かを隠し通す」機能とがあり、為政者や権力者は後者を好む傾向があります。私企業であるメディア各社も最後は「カネ」の前には無力です。経営が破綻してはメディアの責務を果たせなくなりますから、ある意味では当然です。メディアが権力者と広告主からの圧力をかわすことは困難であることを理解してやる必要があります。

(歴山)