よのなか研究所

多価値共存世界を考える

相手にされないニッポン、

2013-04-03 08:16:36 | 時事

                                Photo ( 艦真和上も上陸した大陸交易の拠点坊津、鹿児島県 ) 

インドの有力紙「ザ・ヒンドゥ」の編集長シダールタ・ヴァラダラージャンが来日し、筆者も講演を聞く機会があった。その前日、南アのダーバンで開催されたBRICS首脳会議で「ブリックス銀行BRICS Bank」の設立が発表されたこともあって会場は満席、質疑も時間が超過する熱気ぶりだった。

ヴァラダラージャン氏はインドのもう一つの有力紙「ザ・タイムズ・オブ・インディア」の編集にも関わっていた経歴を持つジャーナリストであるが、米国のニューヨーク大学、カリフォルニア大学で教鞭をとっていたこともあり、広い人脈を持つ人物である。エネルギー問題、金融問題、核の軍事・民生利用、海賊対策など今日の世界の抱える問題点に触れながら国際政治のダイナミズムを語ったが、残念ながら日本について触れたのは最後にほんの数分であった。

同氏の世界理解はG2(米国と中国)にインドが加わることで、トライアングル(三角形)を形成し、安定をもたらすことができる、と言うものである。

「メジャー・プレイヤー」は米・中・印にEU、ARC(地域協力機構、ASEAN、アフリカ連合など)であり、一国としての日本は、経済規模は大きいものの世界の舞台では「ジュニア・パートナー」である、と言いたかったようだ。
一緒に聞いていた知人の一人は、「主催者が日印関係について喋るということを伝えておかなかったのではないか」と感想を述べたが、ヴィラダラージャン氏は世界のどの国に出向いても話す内容を変えはしないだろう。

 

一見、順調に船出したかに見えた自民党政権であったが、世界の新聞を見る分にはほとんど出番がない。むしろ、日本に逆風が吹き始めていているのである。政府関係者と一部の政治家の言動と行動、マスコミの主張はむしろこの国を孤立の道へと誘導している。

たとえば、日本政府が「日米豪連携」を呼びかけているさなか、オーストラリアのギラート首相は今週外相、貿易相ら過去最大の代表団を引き連れて中国を訪問中である。ギラートは「中国封じ込め策は拒否する」と公言して日本の提案に反対している。

今回は海南島、上海、北京を訪問しているが、海南島では中国版ダボス会議「ポアオ・フォーラム」に参加することになっている。

安倍政権が暴走気味に突っ走っているTPPについては、米国自動車連盟はじめ幾つかの有力団体が「日本の加入に反対」の意向を表している。財政赤字のため予算執行を議会の許可を得て徐々に進めているアメリカのオバマ政権は国防費の削減を余儀なくされており、在日米軍が例年開催してきた「市民友好祭」もそのあおりを受けて開催できないほどである。米国内にもいろいろな意見があり、日本から自国軍隊の撤退を主張している議員も団体も存在する。オーストラリアのみならず、アメリカの政界やマスコミの中でも日本よりは中国を大事なパートトトナーとする人が意外に多い。今でも農村部に住むアメリカ人は中国と日本の区別のつかない人がほとんどである。それはヨーロッパでも同様である。よほどの高学歴者か、日本や中国と直接かかわりのある人でないと両者の区別もつかないのが現実である。

これらに輪をかけているのが、特定の外国人を誹謗・排斥するシュプレヒコールを連呼するデモ行進が首都東京で毎週行われていることだろう。見るに耐えかねる「ヘイト・メッセージ」は街頭のみならず、ネット空間で飛びかっている。このような光景やネット空間でのメッセージが他国・他人にはどのように映っているのか想像力が働かないのだろう。一度刷り込まれたら、他の思考が入り込む余裕のない脳味噌の持ち主たちなのだろう。外国人排斥行はfヨーロッパでも見られるが、それゆえヨーロッパの人たちはこのような事象に敏感である。

そんな中、「憲法改正」や「国防軍設立」などを国会に提出しようという議論が浮上してきている。サンフランシスコ講和条約締結六十年を祝おうという話も飛び出してきた。現在の政権の首脳たちが考える国政の優先順位は理解が難しい。取巻きにはアイデアマンが揃っているようだが、「アイデア倒れ」となる思いつきレベルのものが多い。

戦争ができる国にしたい、といっても、アメリカはもちろん、中国も、ロシアも一国で立ち向かうには余りに大きな国である。せいぜいアメリカの後ろに立って大国に小手先のちょっかいを掛けるのが関の山である。ヴァラダラージャン氏が「ジュニア・パートナー」と言ったのはそういうことを指しているのではなかろうか。

聖徳太子の言とされる「和を以て貴しとす」を掲げて、世界に向けて「軍縮」を呼びかけ、各国がそれを実行する環境を整えることに協力することが、この国にできる国際社会への貢献ではなかろうか。

(歴山)



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