よのなか研究所

多価値共存世界を考える

六番目の国になるのは?

2013-03-26 22:30:32 | 戦略

                                                          Photo ( 陸軍工業技術専門学校正門、タキシラ、パキスタン )

 幸か不幸か、世界の紛争処理は国連の安全保障理事会によって対応策が決まってしまうことが多い。中でも五つの常任理事国(Permanent member of UN Security Council)の権限が大きい。米ロ英仏中の五カ国が拒否権(Refusal Rights)を持っているからである。また、この五カ国は核保有国でもある。国連安保理での拒否権と兵器としての核保有が、大国を大国たらしめているのである。

ところが、このところ、六番目の国が登場している。

イランの核開発問題、シリアでの内乱状態の終息に向けての動きで「P5+1」という目新しい文字を見聞する機会が多い。日本のメディアではまだそうでもないが、海外メディアに目をやると毎日のように出ている。つまり、国連安保理の常任理事国五カ国にもう一カ国、ドイツが加わってその解決策を考え実行しよう、とする一連の動きを指している。すなわち、現実には米ロ英仏中独の六カ国が枠組みが登場しているのである。

その五つの常任理事国は、United Nations=連合国(中国語では聨合国)、つまり先の大戦の戦勝国の中の主要国であるから国連に参加した国は途上国はじめ全加盟国が五大国の力を認めていた。同時に、非常任理事国という役割が投票で選ばれた10カ国に用意されている。任期は二年で二期連続はない。日本は最多の八回就任している。

主要な議決は5+1015カ国の投票で過半数を必要とするから、非常任理事国のうち7カ国が反対に回れば否決されることになる。しかし、何といっても常任理事国の力は強い。その力の根源となっているものが拒否権というわけである。

そこにドイツが登場した。拒否権は与えられていないものの、なぜドイツだけが特別扱いをされているのか、と疑問に思うひとも多いと思う。筆者にもよくは理解できない点があるが、よくよく、日本という国は冷遇されていると思う。なにしろ、国連はじめ、国際機関への出資金では長年にわたり、米国に次いで第二位であった。現在も出資利率ではやや低下したもの国連に二番目に多くの資金を提供している。自国の意見を表明できない国が多額の経費負担をしている。

歴史的背景は異にするものの、大戦の敗戦国という点ではドイツと同じである。ともに古くから一つの文化圏を形成し、近代産業を育成し、教育に力を入れ、競争力の強い工業製品を作りだしてきた。国民性はおおむね勤勉である。しかし、両者の国際政治の舞台での力は大きな差がある。というよりも、そこでの日本の影響力はほとんどない。なぜそうなっているかについては多くの見解がある。

安保理での拒否権と並ぶもう一つの力の源、核保有についていえば、現実には五カ国以外にいくつかの国が核兵器を保有し、また保有が疑われている。1998年にインドとパキスタンは核実験を行い、六番目、七番目の核保有国となった(インドは1974年に最初の核実験をしている)。それ以外にも北朝鮮とイスラエルの核兵器保有が確実視されており、又、イラン、シリア、ミャンマーなどが疑惑を持たれていたが、各国諜報機関による過大評価または誤情報によるものとされ、現在も不明諒のままである。

ドイツは自国では核兵器を開発していないが、その国土にベルギー、イタリ―、オランダと並んで米軍の核兵器が存在している、とされている。

核兵器に関しては、世界六番目の保有国としてインドはほぼ公認されている。NPTに非加盟の国でありながら、アメリカは米印原子力協定を結んで民生用に限りウランの供給を認めている。すなわち、核クラブの準メンバーとして認めたのに等しい。日本政府も米国に追従してインドに多くの例外措置を認め、核保有について事実上認めている状況にある。オバマ米大統領に至っては2010年のインド訪問の際に「インドの常任理事国入りを支持する」と発言しているのである。ちなみに日本について同様の発言はない。

世界の主要国としての第六番目の国は、現実の国際紛争等の調停の場ではドイツであり、将来の有るべき姿としてインドが浮上しているわけだ。この二国の内、どちらが六番目の座を獲得するか、ということではなく、両者が同率六位であり、以下ははるかに離れて置かれている、ということだろう。パキスタンやインドネシア、南アフリカやブラジルはひそかに反発していることだろう。

日本は相変わらずおカネを提供し、物言わぬ経済大国として存在感の薄い役回りを続けることになる。もし日本が多くの国からその役割を期待されるとしたら、世界に向けて「軍縮」なかでも「核軍縮」を説き続けていくことにある、と思う。公平に見て、日本の役割はそのくらいのものである。

(歴山)

 



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