これが、実は中断されていなかったとの東電の発表で、急速に話が打ち切りになってきています。たまたま継続注入されていたからすべてよしでいいのでしょうか。いいえ、官邸が海水注入で紛糾し、真水が切れてから海江田氏が指示を出すまでの間は、官邸や東電本社、原子力委員会といったトップ層の間では海水の注入が空に浮いていた=注水の決断がなされていなかったのです。このトップの決断の停滞についての追及は、たまたま注水が継続されていたからと言ってうやむやにしては、原発事故対応の真相をゆがめることになってしまうのではないでしょうか。
官邸、東電本社、東電福島のこの間のやりとりについて、朝日が今朝(5/29)の朝刊に載せていました。
東京電力福島第一原発1号機の海水注入問題で、3月12日夜の東電内のちぐはぐなやり取りの実態が、関係者の証言などから分かってきた。海水注入の一時中断は本社と発電所で「合意した」と東電は説明してきたが、この合意はあいまいで、本社は明確な中断指示をしていなかった。発電所は所長判断で注水を続行。つじつま合わせが、のちに問題を大きくさせた。
海水注入は12日午後2時50分、清水正孝社長が指示。午後7時過ぎに注水が始まった。ところが、午後7時25分、官邸にいた東電幹部の武黒一郎フェローが「首相の了解が得られていない。議論が行われている」などと本社に伝えた。
本社の緊急時対策室や福島第一原発、福島第二原発、福島第一に近い現地指揮所「オフサイトセンター」などは、テレビ会議システムで結ばれ、連絡を取り合っている。本社はテレビ会議で、武黒フェローからの連絡を、発電所の吉田昌郎所長らに伝えた。
原子力・立地本部長の武藤栄副社長は「首相の了解がなくては注水できないという空気だと伝わり、本社と所長が合意した。理解いただけるまで中止しようとなった」と説明する。武藤副社長は、このときオフサイトセンターでテレビ会議に加わっていた。
本社にいた小森明生常務は「首相の了解を得るまでの一時的な中断で、ある面でやむを得ないという風に本社側は思っていた」。
この会議で吉田所長は黙っていた。中断に反対しておらず、本社では所長が中断を了承したと理解。「合意」は形成された。小森常務によると、注水や停止の指揮権限は原子力防災管理者である発電所長にあるため、あえて本社から中断を指示しなかった。
あいまいな「合意」の後、吉田所長は原発の運転責任者らに中断を指示せず、注水を続けた。指示を受ける立場の所員は数人。事実を知る人間は、発電所内でも限られていた。
午後8時5分、海江田万里経済産業相が原子炉等規制法に基づき海水注入を命令。発電所は吉田所長名で「20時20分に海水注入を始めた」と、実態と異なる報告をファクスで本社に入れた。このつじつま合わせが、海水注入の中断を既成事実化させた。
注水の「中断」問題が国会で問題になり、東電本社は24、25両日に吉田所長らから聞き取り調査。注水を中断していなかったことが発覚した。(中川透)
一連のこの騒動には、次の問題点があります。
先ず一つ目は、事故当初は、海水注入は廃炉を意味することになり、東電が躊躇するのを官邸が主導し注入に踏み切ったとの話がありました。しかし、そうではなくて、真水が切れた段階で東電が自主的に海水注入に踏み切っていたということになり、当初の官邸主導の話はなかったことになります。
二つ目が谷垣氏との党首質疑で論点となった、官邸が海水注入を中断させたという点です。
東電幹部の武黒一郎フェローが「首相の了解が得られていない。議論が行われている」などと本社に伝えたと言うことですから、カンカラ菅が直接指示をしてなくても、官邸内では海水注入に対しカンカラ菅が疑念を抱き議論がなされていたことは間違いなく、それが斑目氏の発言騒動を含んでいるということでしょう。
注入が継続されていなければ、ここの停滞がもっと致命的な事故拡大を招いていたかもしれず、谷垣氏の追及は、継続されてしかるべきです。
三つ目が、カンカラ菅が注入中断をしていない証拠として、「海水注入が始まっていることは知らなかった。知らないのだから中断の指示をするはずがない。」と、ぬけしゃあしゃあとのたまわっていることです。
東電と官邸の間の連絡がうまくなされていないと威張っているのです。危機管理意識のある普通の責任者なら口が裂けても恥ずかしくて言葉に出せない話です。正直とも言えますが、その場逃れの言い訳が優先し、総理大臣としての責任感も危機管理意識もかなぐり捨てています。しかも、東電から官邸へは海水注入の連絡はなされていたとの報道もありますね。
谷垣氏は、この点を追及していません。あらかじめ練習した問答の想定外の問題点が出てきても、想定問答のシナリオの範囲でしか追及できないのです。これは、この件に限らず随所で出てきています。
四つ目は東電の組織の問題で、本社が現場を把握・管理が出来ていないし、現場も本社へ「ほうれんそう」をしていないという、およそ日本企業とは思えない乱脈ぶりです。
注水中断決定の会議で発言せずに注水を継続しておきながら、経産相からの指示が出たら、再開しましたとつじつま合わせをした。IAEAの査察がくるので正直に話すことにしたとは、正しいことをしたとはいえ卑怯者のそしりは免れません。
過去にも隠蔽工作が露呈し、全原発の停止があり、夏の電力供給がピンチとなり電気予報を出すなどして綱渡りでしのいだことがありました。
こんな危ない会社に危ない原発を任せたり、首都圏の電力を任せてきたのかとおもうとぞっとしますし、津波対策も独断で遅れてり、低レベルで留められていたのだと理解できます。
カンカラ菅は、「情報が当初正確に伝わらなかったことは、責任を感じている」とし、吉田所長の処分は必要ないと言っていますね。
菅首相、吉田所長の処分必要ないとの認識(読売新聞) - goo ニュース
同じ大学だからなのか、己に非があったからかどうかは解りませんが、総理大臣だからといって、企業の中の人事や賞罰に、軽々に口出してよいものではないでしょう。
東電も不問に伏すというのは、タケシが言うように、吉田氏のせいにしていますが、実はグルだったりするのかもしれませんね。
繰り返しますが、注水が継続されていたから終わりではなく、内在する基本にかかわる問題点の追及はうやむやにすべきではなく、野党もメディアも続けるべきでしょう!
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