遊爺雑記帳

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TPP交渉「合意先送り」は、アベノミクス第三の矢の経済成長政策の遅れへ

2015-08-06 23:58:58 | 日本を復活させる
 TPP交渉の閣僚会合は、大筋合意に至る期待に反して閉幕しました。8月末までの再度の会合を目指していますが、余談を許しません。
 今回大筋合意に至れなければ交渉は長期間漂流する、との危機感が交渉参加国閣僚の間で共有されていなかったのが原因と指摘するのは、みずほ総合研究所 上席主任研究員の菅原淳一氏。
 決裂の直接の原因はニュージーランドの強硬姿勢と、バイオ医薬品のデータ保護期間についての、米国と、豪州、ニュージーランド、マレーシアなどの対峙。
 

TPP交渉「合意先送り」で日本の成長戦略に「停滞」の恐れ|DOL特別レポート|ダイヤモンド・オンライン

■共有されなかった危機感 TPP交渉合意に至らず
 7月28日からハワイで開催されたTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の閣僚会合は、同31日に、期待された大筋合意に至ることなく閉幕した。日本経済団体連合会の榊原定征会長は、「期待が大きかっただけに、大筋合意に至らなかったことは極めて残念である」とコメントしたが、この思いを共有した方は少なくなかっただろう。
 TPP交渉の大筋合意は従来、何度も見送られてきた。しかし、今回の閣僚会合で大筋合意に至るとの期待はこれまでになく高かった。というのは、
今回大筋合意に至れなければ、TPP交渉は長期間漂流する、との危機感がTPP交渉参加国閣僚の間で共有されていると思われた
からだ。
 閣僚会合前、TPP交渉を担当する
甘利明経済財政担当相は、「この会合を最後の閣僚会合にしたい。各国の閣僚も同じ思いを共有している」
(毎日新聞、7月29日)と述べていた。来年秋に大統領選を控える米国の政治日程を考えると、今回大筋合意を逃せば、「数年間は合意が大変困難になる」(ロブ豪貿易・投資相、Australian Government News、7月27日)。
 その危機感が、参加各国閣僚に歩み寄りを促すと期待されていた。
残念ながら、この危機感を共有していたのは、参加閣僚全員ではなかった
ようだ。

■決裂の直接の原因はニュージーランドの強硬姿勢
 報道によれば、
大筋合意見送りの直接の引き金を引いたのはニュージーランドだった
ようだ。国内大手各紙は、「ニュージーランドが乳製品の輸入拡大で強硬姿勢をとり続けたことが合意見送りの主因となった」(日本経済新聞電子版、8月1日)と報じている。
 
ニュージーランドは、近年の自由貿易協定(FTA)交渉において、すべての品目での関税撤廃を約束している。そのため、相手国にも「原則関税撤廃」を強く求め、特に、主要輸出産品である乳製品の自由化を最重視している
。日本が同国からの二国間経済連携協定(EPA)締結の提案に応じてこなかったのもそのためだ。
 今回の閣僚会合における
ニュージーランドの自由化要求は、自由化を求められた日・米・カナダにとっては「法外な要求」(甘利担当相、読売新聞、8月1日夕刊)であったが、自国市場を開放している同国からしてみれば当然のものであり、非妥協的であったのは日・米・カナダの方であった。
 他方、ニュージーランドはTPPの前身である環太平洋戦略的経済連携協定(P4)の参加国であり、TPPにおいても法的な管理を行う寄託国である。その自負があるニュージーランドが自国の要求実現に固執し、合意を壊す側に回ったのは意外にも見える。どうやら、同国が抱いていた危機感は、日米豪などの他国のものと若干異なっていた
ようである。

 今回の閣僚会合の初日に当たる7月28日、
ニュージーランドのピーターソン農業貿易特使は、日・米・カナダの乳製品市場の自由化提案に不満を示し、妥当な改善提案がなければ今回の閣僚会合での大筋合意はないと述べていた
。しかし、同国がTPP交渉の長期漂流もやむなしと考えていた訳ではなさそうだ。ピーターソン特使は、交渉の長期漂流に対する危機感を他国と共有しつつも、あと2、3週間余裕があるとの認識を示していた(Inside U.S. Trade、7月29日)。
 つまり、ニュージーランドは
今回の閣僚会合を大筋合意のデッドラインとして認識していなかった
のだ。今回の閣僚会合における強硬姿勢の背景には、こうした他国との認識の差があったと思われる。

■本当に8月末で合意できるのか? まだいくつも残る難題
 閣僚会合閉幕後、甘利担当相は、「もう一度会合を開けば、すべて決着する」(毎日新聞、8月1日夕刊)、「8月の末までに次回の閣僚会合を持った方がいいという共通認識がある」(同、8月2日)と述べている。また、
ニュージーランドのグローサー貿易相も、「数ヵ月ではなく、数週間のうちに合意できる」という共通理解があるとインタビューに答えている。
<中略>


 仮に、TPP交渉の長期漂流を回避するため、ニュージーランドが態度を軟化させたとしても、それだけで大筋合意に至れる訳ではない。難題はまだいくつも残っている。

■日米間をはじめ各国で対立残る あと3週間での合意は至難の業
 
今回乳製品問題と並んで大筋合意見送りの原因となったとされるのが、知的財産分野におけるバイオ医薬品のデータ保護期間の問題である。12年間を求める米国と、5年間以下を主張する豪州、ニュージーランド、マレーシアなどが対峙している。

 日本では、このバイオ医薬品のデータ保護期間の問題と、乳製品市場の自由化が、大筋合意見送りの二大原因と報じられているが、他の参加国の報道では、
日、米、カナダ、メキシコの間で自動車の関税や原産地規則の問題で歩み寄れなかったことが主因であったと報じているものもある


 日本もまだ米国との間で、日本のコメの輸入枠拡大や、米国の自動車部品関税撤廃などについて合意をみていないようである。カナダは、「聖域」とされる乳製品市場の自由化を求められているが、10月に総選挙を控え、譲歩が難しい状況にある。マレーシアは、政府調達や国有企業規律の分野で、国是といわれるブミプトラ政策(マレー人優遇政策)を緩和し、外資との公平な競争条件を確保することを求められているが、与野党双方の強い反対に加え、ナジブ政権の政権基盤が揺らいでいることから、歩み寄りが難しいとみられている。
 
これらの問題すべてについて、これからの3週間で合意の道筋を見つけることは至難の業である。果たして8月末までに閣僚会合は開催されるのか、開催されても大筋合意に至れるのか
。現時点では、甘利担当相やグローサー貿易相の言葉を信じるほかはない。

■想定される3つのシナリオ 8月末に合意なければ長期漂流
 今後TPP交渉はどうなっていくのか。現時点で想定されるシナリオは3通りある。

(1)楽観シナリオ:8月末までに大筋合意

 一つ目は、8月末までに大筋合意に至るというものである。そのためには、ここで例示したものを含むすべての争点で、参加12ヵ国が歩み寄る必要がある。
TPP交渉を長期漂流させてはならないという強い危機感が共有されない限り、合意実現は難しいだろう。
 すべての争点での合意が困難な場合、一部の争点は最終合意まで先送りするというケースも考えられる。バイオ医薬品のデータ保護期間の問題のように、合意全体のバランスを崩しかねない争点を先送りして大筋合意に至ることはないと思われるが、一部争点では先送りも可能かもしれない。

 また、一部の国が大筋合意に加わらないというケースも可能性がないとは言えない。P4以来の参加国であるとの自負があるニュージーランドが合意に加わらないということは考えにくいが、10月に総選挙を控えるカナダ、国内の政治状況が厳しいマレーシアなどが態度を留保することが懸念される。

(2)悲観シナリオ:交渉は長期漂流、2017年1月以降仕切り直し

 冒頭に示したロブ豪貿易・投資相の発言のように、2016年秋の米大統領・議会選の日程を考慮すると、選挙戦が本格化して国内調整が難しくなる前、遅くとも2016年の早い時期に、TPP実施法案を米議会で成立させる必要があるとみる識者が多い。そのためには、8月末の大筋合意が不可欠となる。
 仮に、8月末に大筋合意に至ったとすると、米国の大統領貿易促進権限(TPA)法の「90日ルール」により、最短でも最終合意に署名できるのは11月末となる。さらに、最終合意文書を議会に提出してからTPP実施法案の提出まで30日間置かなければならないため、議会の開催日程を考えると、最短のケースでも年内に米議会の承認を得るのはほぼ不可能である。
 2016年の早い時期までにTPP実施法案を米議会で成立させる必要があるとすれば、
8月末が大筋合意のラストチャンスとなる。それが実現されなかった場合は、新大統領が誕生する2017年1月以降に交渉が仕切り直しとなる。そうなれば、TPP交渉は2年間ほど漂流状態に陥ることになる。

(3)中間シナリオ:2016年夏までに大筋合意(可能性は低い)
 これら2つの中間に当たるシナリオも考えられる。悲観シナリオは、「米大統領・議会選の選挙戦が本格化すると、TPP実施法案について議会承認を得るのが困難になる」という点を前提としているが、大統領選の年には通商法案の議会承認が不可能ということではない。
 過去には、いずれも大統領選の年であった、1988年に米カナダFTA、2004年に米豪FTA、米モロッコFTAの実施法案が議会で承認されている。この場合、
2016年夏までに大筋合意に至れば、オバマ政権下でTPP実施法案について議会承認を得ることが日程的には可能
となる。
 しかし、これまでのFTAと比べてTPPが米国に与える影響ははるかに大きく、現在の米国内の政治状況も当時とは異なることなどから、大統領選の最中にTPP実施法案が米議会で承認される可能性は低いとみられている。
 日本政府にとっては、このシナリオはあまり望ましくない。「農業分野でかなり痛みの伴う通商協定」(甘利担当相、日本経済新聞電子版、7月9日)の大筋合意、あるいはその承認を得るための国会審議を、来夏の参院選直前に行うことは避けたいところだろう。

■TPP交渉の合意が遅れれば 成長戦略の柱「メガFTA」も停滞
 TPP交渉大筋合意の遅れは、安倍政権の成長戦略の柱の一つであるメガFTA戦略全体の遅滞へとつながりかねない。日本は現在、日中韓FTA、RCEP(東アジア地域包括的経済連携)、日EU・EPAと、TPPと合わせて4つのメガFTA交渉を並行して進めている。TPP以外の交渉は、先行するTPP交渉の行方を見極めようと現在停滞気味である。TPP交渉合意がなければ、2015年中の合意を目指す他の交渉も、このままずるずると長引きかねない。

 これまでに何度も裏切られ続けてきたが、成長戦略の停滞を避けるためにも、8月末までの大筋合意を今度こそ期待したい。


 8月末の大筋合意を期待したいのですが、困難な情勢の様ですね。
 
経済再生相 TPP閣僚会合の今月開催は困難と報告 NHKニュース

 オバマ政権のうちにTPPが実現できるよう今月末に閣僚会合が開かれ、合意に至るのがベストであるのは言うまでもない。ただ、かりにこれでTPP交渉がしばらく漂流したとしても、それでTPPが消滅したわけではない。8月末までに会合を開くことができないようなら、TPP交渉は漂流することになる。オバマ政権でのTPP決着は見込めないことになる。
 かりにそうしたシナリオで進んでいったとき、その先はどうなるのだろうか。これを予想することはほとんど不可能なことではあるが、北米自由貿易協定(NAFTA)の経験が参考になる。
 伊藤元重氏は、そう述べて、米国の元官僚の発言を紹介しておられます。
 「長い目で見れば、国益にあった判断が行われることになる。NAFTAはそれに反対していた民主党候補であったクリントン氏によって実現した。TPPについても、かりにオバマ政権のうちに実現できないとしても、次の政権では実現するだろう。そのときの大統領が共和党であればもちろん、民主党の大統領であっても最終的にはTPPに賛成するはずだ。」
 
伊藤元重:予想外のTPP合意先送り、8月末に閣僚会議を開けるか | BizCOLLEGE <日経BPnet>


# 冒頭の画像は、今月28日の再度の閣僚級会合をめざす甘利明経済財政再生相




  この花の名前は、サンシュユ


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