遊爺雑記帳

ブログを始めてはや○年。三日坊主にしては長続きしています。平和で美しい日本が滅びることがないことを願ってやみません。

ヤルタ密約の有効性 英国も疑念を持っていた

2016-12-05 23:58:58 | ロシア全般
 ロシアが北方四島を第二次大戦の結果としてロシア領となったと主張していますが、その根拠とする「ヤルタ密約」について、米国は「米政府の公式文書でなく無効」とし、ソ連(当時)の領土占有に法的根拠がないとの立場を示していましたが、英国も疑念を示していたことが英国立公文書館所蔵の英外交電報で明らかになったのだそうです。
 ヤルタ密約に署名した3カ国のうち、米国に続き、英との二ヵ国が「ヤルタ密約」は法的根拠が乏しいとの立場であれば、ロシア領の主張の根拠は崩れることになります。
 

英、ヤルタ密約に疑念「米大統領が越権署名」 1946年に在外公館に電報 (12/5 産経 一面)

 【ロンドン=岡部伸】ロシアがソ連時代から北方領土領有を主張する最有力根拠としてきた「ヤルタ密約」(ヤルタ協定のうち極東密約)の有効性について、ルーズベルト米大統領が権限を越えて署名し米議会で批准されていないことを引き合いに、英政府が大戦終了後の1946年2月に疑念を示していたことが英国立公文書館所蔵の英外交電報で明らかになった

 電報は、米英ソ3カ国が同11日にヤルタ密約を公表する2日前の9日、英外務省から全世界の在外英公館54カ所に「緊急かつ極秘」に一斉に送られた。電報の冒頭には「ソ連のスターリン首相、ルーズベルト米大統領、チャーチル英首相が45年2月11日にクリミア会議(ヤルタ会談)でソ連の対日参戦条件について極秘に合意した密約内容の文書が含まれる」と記され、米英ソ3政府が合意から1年後にあたる46年2月11日に、それぞれの議会で合意文書を発表するとしていた。
 「ソ連の樺太、千島列島の占拠は日本が敗戦するという文脈の中で取り扱われるべきだ」とした上で、「ルーズベルト大統領が権限を越えて署名したことや、米上院の批准もない状況下での有効性について米国内で論議が起こるかもしれない」として、「(英国は)その議論に巻き込まれないよう注意すべきだ」と警告している。

 
ソ連はヤルタ密約を根拠に当時有効だった日ソ中立条約を破棄し、満州(中国東北部)や北方四島に侵攻し占領
。後継国家のロシアも北方領土の領有権を主張してきた。

 一方、米国では53年に就任した共和党のアイゼンハワー大統領が年頭教書演説で、「あらゆる秘密協定を破棄する」と宣言して問題が表面化。56年には、
アイゼンハワー政権が「ヤルタ協定はルーズベルト個人の文書であり、米政府の公式文書でなく無効」との国務省声明を発表し、ソ連の領土占有に法的根拠がないとの立場を鮮明にした


 一方、当事国の一つである英国は立場を明らかにしてこなかったが、チャーチル首相が41年8月、ルーズベルト大統領と領土不拡大の原則をうたう大西洋憲章に署名している。今回の電報を通じ、密約が大西洋憲章に反するとの英政府の46年当時からの認識が示された形だ。

--------------------------------------------------
【用語解説】ヤルタ密約
 1945(昭和20)年2月4日から11日まで、クリミア半島ヤルタで米国のルーズベルト大統領、英国のチャーチル首相、ソ連のスターリン首相による連合国3カ国首脳会談が開かれた。
ルーズベルト大統領はソ連による千島列島と南樺太の領有権を認めることを条件に、スターリン首相に日ソ中立条約を破棄しての対日参戦を促した
。会談では、ドイツ降伏後2カ月または3カ月でソ連が対日参戦することが秘密協定としてまとめられた。また、国際連合創設を協議し、ドイツと中・東欧での米ソの利害を調整することで大戦後の国際秩序を規定。東西冷戦幕開けのきっかけにもなった。
---------------------------------------------------

 英外交電報では、「ヤルタ密約」(ヤルタ協定のうち極東密約)の有効性について、ルーズベルト米大統領が権限を越えて署名し米議会で批准されていないことを引き合いに、疑念を示していたのだそうで、「有効性について米国内で論議が起こるかもしれない」として、「(英国は)その議論に巻き込まれないよう注意すべきだ」と警告していたのだそうです。
 日ソ中立条約を破棄し、満州や北方四島に侵攻し占領したロシアですが、「ヤルタ密約」を領有権の根拠と主張することは、参加三カ国中一国だけとなり、劣勢にたたされ、孤立することとなります。
 領有権を主張する根拠も失うことになります。
 ヤルタ密約は、連合国首脳が交わした軍事協定にすぎず、条約ではなく国際法としての根拠を持っていないことにもなり、当事国が関与しない領土の移転は無効という国際法にも違反している。
 

ヤルタ密約 露の四島占拠に根拠なし 国際法違反、薄れる正当性 (12/5 産経)

 「北方四島は第二次大戦の結果、ロシア領になった」。ロシアが領有権を主張する最大の根拠である「ヤルタ密約」(ヤルタ協定のうち極東密約)を交わした3カ国のうち、ソ連(当時)の領土占有に法的根拠がないとの立場を1950年代に鮮明にした米国に続き、英国が密約の有効性に疑念を示したことが英外交公電で明らかになり、ロシアによる「不法占拠」が一層色濃く浮かび上がった
。(ロンドン 岡部伸)
 
ヤルタ密約は、連合国首脳が交わした軍事協定にすぎず、条約ではなく国際法としての根拠を持っていない。当事国が関与しない領土の移転は無効という国際法にも違反している。日本政府は「当時の連合国の首脳間で戦後の処理方針を述べたもので、領土問題の最終処理を決定したものではなく、当事国として参加していない日本は拘束されない
」(平成18年2月8日、国会答弁)との立場だ。

 米国は戦後、日本の立場を支持し、ソ連の法的根拠を認めない姿勢を示してきた。米上院は1951年にサンフランシスコ講和条約を批准承認する際、ソ連に有利となるヤルタ密約の項目を「含めない」との決議をし、
アイゼンハワー政権も56年に「無効」を発表。2005年には当時のブッシュ大統領がラトビアのリガで「ヤルタ会談は史上最大の過ちの一つ」と批判
した。
 ところが、ロシアはソ連時代からヤルタ密約を最大の根拠に領有権主張を繰り返し、日本の外務省は「ソ連政府は『ヤルタ協定』により、択捉島、国後島、色丹島および歯舞群島を含むクリール諸島のソ連への引き渡しの法的確認が得られたとの立場を取ってきた」(同国会答弁)と説明してきた。
 露外務省は11年2月、北方領土に対するロシアの主権は「合法」であるとの声明を発表。その根拠を「第二次大戦の結果」とし、ヤルタ協定▽ポツダム宣言▽サンフランシスコ講和条約▽国連憲章107条(旧敵国条項)-で認証されたと強調した。
 プーチン大統領は15年9月の国連総会で「ヤルタ合意こそ世界に平和をもたらした」と語り、戦後の国際秩序の出発点と評価した。

 もう一つの当事国である
英国は密約が米ソ主導で結ばれたこともあり、立場を明らかにしてこなかった
。日本の外務省は英国の立場について、平成18年2月の国会答弁で「わが国の認識を否定するものではない」とのみ答えていた。
 ヤルタ密約に署名した3カ国のうち、
ソ連以外の米英両国が「(密約は)法的な根拠に乏しく拘束力を持たない」との立場を取るとなると、密約を根拠に北方四島の領有を主張するロシアの正当性が一層薄れることになる

 
ヤルタ密約「英政府、当初から有効性を疑問視」 京都大学名誉教授・中西輝政氏 (12/5 産経)

 ヤルタ密約を結んだ3カ国の一つである英国は冷戦時代、フランスとともにソ連との正面衝突を回避するため、ヤルタ協定に対する立場を鮮明にしてこなかった。終戦から約半年後の1946年2月、「密約」公表直前に英外務省が全在外公館にあてた公電は、内閣の了解を経た英国の公式な立場を示すものだ。公電は領土移転の署名をしたルーズベルト大統領が米国の大統領権限を越えていることや、米議会の批准もない状況下での有効性について疑念を示しており、英政府が当初からヤルタ密約の法的な有効性に疑問を抱いていたことがうかがえる。公電で疑問を呈した通り、数年後にアイゼンハワー政権が「密約」を無効とした米国と同様に英国が有効性を事実上否定していた
ことがわかり、北方四島の主権を主張するロシア側は一層法的根拠を失うことになるだろう。


 トランプ新大統領の、プーチン礼賛姿勢を観て、対日接近にブレーキをかけ、北方四島のロシアの領有権の主張を始めました。
 山口での首脳会談も、北方領土問題の「新たなアプローチ」は、不発に終わる見込みが濃厚。
 
 「ヤルタ密約」は、条約ではなく、領有権を主張する根拠となりえないことがはっきりしてきた今、日ソ間で締結された、最新の条約は、「サンフランシスコ条約」にはソ連が参画していないことから、北方領土については、「ポーツマス条約」があげられます。
 仕切り直しで、「ポーツマス条約」に遡って交渉を開始することではいかがでしょう。四島で交渉していては、四島は獲得出来ません。南樺太と千島列島全島を日本領土とする、「ポーツマス条約」からスタートしてこそ、四島の奪還が可能となります。

 

 いずれにしても、大障壁なのは、ロシアの基地の帰趨。
 米軍基地付で返還された沖縄方式で、ロシア、米国、日本が納得できるのか。日米同盟の適用範囲はどこまでか。
 ロシアの領有権は譲らないと言い始めたプーチン大統領。
 日本の経済支援も、トランプ氏の動向を見据えながら、一時保留にし、「ヤルタ密約」への英国政府の現状認識も確認しつつ、立ち止まって様子見、仕切り直し(柔道なら、待て)の、体制・戦術再構築の流れになってきましたね。

 

 # 冒頭の画像は、ヤルタ密約に臨む、チャーチル、ルーズベルト、スターリン(左から)




  この花の名前は、レイジンソウ


↓よろしかったら、お願いします。



写真素材のピクスタ


Fotolia


ソ連が満洲に侵攻した夏 (文春文庫)





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 12月4日(日)のつぶやき | トップ | 12月5日(月)のつぶやき »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

ロシア全般」カテゴリの最新記事