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遠いいこえ
12
房江は後部シートにもたれて大きな寝息を発てていた。
電話はO駅の駅長からだった。
「逢沢さんのお宅でしょうか。私はO駅の駅長の木村と申しますが、加藤房江さんはお宅のお母さんでしょうか」
ゆっくりとした丁寧な言葉使いであった。
「はい。左様でございます。もしかして母がそちらに・・・」
育子は途中から気づいたのか声がうわずった。
「迷子と言うのもなんなんですが、迷われまして構内をうろつかれて、いいえ、歩いておられまして、階段に躓かれまして。怪我のほうはただ脛を擦りむいたと言う程度でして。今、私の部屋で休んで頂いておるのでございますが、このままずぅとお預かりしておくと言うのも何でございますから」
受話器を持って育子はいらいらしていた。
「ご迷惑をお掛けしております。そちらにすぐに伺いますのでどうか宜しくお願いいたします」
育子は受話器を置き深々と頭を垂れた。が、
「JRも親切になったものだわ。だけどもっと迅速に言葉を発車出来ないものかしら」
と言って逢沢に同意を求めてきたのだった。
駆け付けると房江は駅長室のソファに横になり眠っていた。
「今日のところは何も聞かないでそーとして置いてあげてください。よくあることですよ。生まれ育った所へ帰りたいと言う願望があって、こうして駅までは辿り着くのですけれど、どのように行っていいのか分からなくなってしまって。故郷を捨てて子供達と一緒に町に出てきたのはいいのですけれど、年を取って参りますとなじんだ生まれ故郷の空気が恋しくなりまして、ついふらふらと自分でも分からなくなって足がその方向へ向くらしいのですね。つまり子供の家出のようなものかも知れません。癖が付くのです。こうして駅長をやらせて頂いておりますと、何十人と言う御老人とお友達関係になりましてね。総て、このおばあちゃんのようにして最初は巡り合うのですけれど、何度も、いいえ何十回と言う巡り合いを重ねている御老人もおられましてね。なにか、なにかが、間違っているんでしょうか。昔はこれほどでもありませんでしたが・・・」
駅長の穏やかな言葉が逢沢の胸を打った。
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皆様御元気で・・・ご自愛を・・・ありがとうございました・・・。
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あいつは加奈子を抱いた。この日から加奈子は自分で作った水槽の中で孤独な魚と化した。
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1982年、まだ美しかった横浜―風変わりなおんぼろ塾で、あたしたちは出会った。ロケット花火で不良どもに戦いを挑み、路地裏を全力疾走で駆け抜ける!それぞれが悩みや秘密を抱えながらも、あの頃、世界は輝いていた。大人へと押しあげられてしまったすべての人へ捧げる、あなたも知っている“あの頃”の物語。
作者のブログです・・・出版したあとも精力的に書き進めています・・・一度覗いてみてはと・・・。
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