平昌オリンピック6日目、午前10時半からスノボ男子ハーフパイプの決勝が行われた。
注目の3選手の試技の順番は、平野歩夢選手、スコッティ・ジェームズ選手、そしてショーン・ホワイト選手、この順番が選手の心理面に微妙な影響を少なからずとも与えたことは間違いないだろう。
最終的に優勝を争うことになったのは平野選手とショーン選手、見えない火花が激しく散っていた。
先ず1本目、平野選手は、グーフィースタンス(右足を前にして滑る構え)からドロップイン。最初のヒットは彼特有のいつもの高いメランコリー。
切り返して、ここで最高難度のダブルコーク1440を決める。
しかし、次のキャブダブルコーク1080の着地で尻もちをつきスコアは35.25で終わる。
これを見たショーン選手、ダブルコーク1440を1本決め、その後のエアーも手堅くまとめた。
トップに立ったことを確信したショーン選手は、吠えながらヘルメットを取り、ギャラリーに向かって放り上げた。
出来の良さに興奮して思わずというより、多分に平野選手にプレッシャーをかける意味合いが強いように感じた。
結果は94.25、1本目が終了した時点でショーン選手がトップに立つ。
続く2本目、ここで決めなければ苦しくなる平野選手はドロップイン後、ルーティーンのパイプの底から約12、3mにも達しようかというメランコリーを決め、そこから勝負に出る。連続してのダブルコーク1440へのトライだ。それを鮮やかに決める。オリンピック史上、初めて連続してダブルコーク1440が成功した瞬間だった。
繋げてダブルコーク1260、さらにバックサイドのダブルコーク1260を決める。これもオリンピック史上初となるバックトゥバックのダブルコーク1440と1260を4連続で決めたみせた。
ほぼ完璧な試技だった。スコアは95.25、この時点で1本目のショーン選手のスコアを超えた。
その後、スコッティ選手の試技を挟んでショーン選手の2本目の試技が始まる。
平野選手に逆転された以上、連続しての1440を決めなければ金メダルはないショーン選手、当然、1440を試み成功したが、その後、着地に失敗する。
そして、最終ラン。
平野選手は、再び連続しての1440を決めようと試みるも失敗に終わった。オリンピック史上初めて成功したトリックだ。そうそう成功するわけもなかった。
そして、ショーン選手の登場だ。
ここで連続して1440を成功させれば金メダルの可能性は残る。それにトライできなければ金メダルはない。
銀メダル以上が確定しているショーン選手に一切の躊躇は無かったはずだ。
ここまで数々の修羅場を乗り越え幾多の栄光を手にしてきたショーン選手にとって、己を奮い立たせ再びオリンピックでの栄冠を勝ち取るための絶好のお膳立てが揃ったようにも思える展開ではあった。
そして、それはまるで筋書きがあるかのように、ショーン選手の完璧なトリックへと繋がっていった。