柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

うつらうつら

2023年04月04日 17時41分02秒 | 日記
写真は、病室の壁に貼ってある注意書きです。
基本、ベッドの上にいます。
電動ベッドなので、頭を立てたり下げたり、高さを上げたり下げたりして、ベッドの上で暮らしています。

ときどき、うつらうつらすると、夢をみます。

ーー夕暮れの埠頭の海水の中に息子(14、5歳)と二人で首まで浸かっている。
日没の太陽は見えず、海面は重油のように黒くてらてら光っている。

「あッ! いま、足んとこに魚がいたッ! 手づかみで獲っていい?」わたしは息子に訊ねるが、息子からの返事は無い。

と、わたしたちの隣に大きなマグロみたいな魚が浮かび上がる。
泳いではいない。
尾鰭を動かしてるから、生きてはいる。

「これ、二人で陸にあげて、漁師さんに買ってもらおうよ」
とわたしが言い、わたしは頭の方を、息子は尾っぽの方を持って、二人で魚を埠頭の上まで引き摺りあげる。

コンクリートの上の魚をよく見ると、体には熊みたいな焦げ茶の毛が生えていて、顔は人間の男ーー、両目を閉じて苦しそうに口を開けている。

漁師がやってきて、その顔にかがみ込む。
「この魚には金は出せないな。水を飲ませた方がいい。元気になれば、切り身に出来っから。切り身にすりゃあ元の形は誰にもわからない。買ってやるよ。水、水を飲ませてやってな」と、漁師は元来た道を去っていく。

わたしと息子は、もうほとんど陽が残っていない埠頭を見渡し、水道を探すが、無いーー。

ここで、目覚めました。

他にもいくつか、千切れ雲みたいに流れてきては消える映像の断片を見たけど、もはや、思い出せない。

































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