柳美里の今日のできごと

福島県南相馬市小高区で、
「フルハウス」「Rain Theatre」を営む
小説家・柳美里の動揺する確信の日々

位置と時間

2018年06月12日 08時10分00秒 | 日記
今朝は、上野のビジネスホテルで目覚めた。

夜中から明け方にかけて、三度目覚めた。

自分がどこに居るかわからない不安みたいなものに揺すり起こされたのである。

目覚めて、何秒間か考える。

30秒ぐらいなのかもしれないし、もしかしたら1分は過ぎたのかもしれない、走馬灯的な時間。

東由多加にとっては最後の、息子にとっては最初の住まいだった渋谷区松濤のマンションの和室の天井を眺めているような気がする。

違う。

東は、死んだんだ、と気づく。

次は、わたしが初めて建てた家、鎌倉市扇ガ谷の2階の寝室の天井と、庭が見える大きな窓ーー、違う、あの家は売却して別の人が暮らしているんだーー。

南相馬市原町区の夜の森公園近くの築50年以上の古家、あの家から息子は高校に通った。
三人で並んで眠った2階和室の、斜めの床に体を横たえ、斜めの天井を眺めている気がする。

違う、小高だ。

小高に引っ越したんだ。

昨年7月に購入し、本屋フルハウスを営んでいる小高の2階寝室の天井ーー、ではない。

じゃあ、どこだ?

ホテル。

あぁ、上野か。

という感じで、ゆっくり記憶の縺れをほぐしていくのだが、最近、認知機能か衰えているような自覚があるから、怖い。

これ、寝起きだから、じゃ済まないんじゃないか?

寝て起きて、何分、何十分経っても、どこにいるか思い出せなくなったら、パニックになるだろうな?

徘徊する認知症の老人の感覚が、少し解る。

その感覚を、書いてみたい気がする。

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