最初に消灯したのは、22時ぐらいだったと思う。
左足の傷口がどうにも痛くて眠れないので、痛い時にのむようにと渡されているロキソプロフェン Na錠60mgを、23時にのんだ。
(毎食後、痛み止めのカロナール錠500を、胃薬のレバミピド錠100mgと共に服用し、抗生剤も1日2回点滴してもらっています)
しかし、痛みはおさまらない。
左親指に火をつけられて燃やされてるみたいな痛みで、思わず処方箋袋を手にするが、ロキソプロフェンは間隔を6時間あけなければいけないと注意されている。
(わたしはたびたび出血性胃炎と十二指腸潰瘍で喀血して入院し、喘息の持病もある)
痛みを堪えながら、Twitterのタイムラインを見たり、本を読んだりしていて、午前2時半に目薬をさして、「蒸気でアイマスク 完熟ゆずの香り」を目にあてて、眠ることを試みる。
紺のブレザーに紺のタイトスカート姿の女性事務員が、わたしが寝ているベッドをまたいで部屋から出て行ったり、足元に土偶の目と口だけみたいな顔が寄り集まっていたり、夢とも幻覚ともつかないものに悩まされた後、わたしはどこか別の部屋に寝ていた。
階下で東が帰ってきた音がした。
体は動かせない。
指一本動かせない。
劇団員が酔っ払った東を担いで階段をのぼってくる音がして、「危ない! やめて!」と叫ぼうとしても、声が喉につかえて出てこない。
わぁぁぁぁぁ!という東の叫び声と、階段を落ちる音がした瞬間、金縛りが解ける。
扉を押し開けると、真っ直ぐにつづくコンクリートの非常階段があり、東の衣服と毛布みたいな布だけが散らばっている。
東が死んだ。
死んで、いなくなった。
あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
という自分の絶叫で目覚めた。
目を開けると、病室だった。
仰向けのまま読書灯に手を伸ばし、泣いている自分の顔を照らす明かりの中で、東は死んだんだ、東の死からもう21年経ってるんだ、と自分を納得させた。
時計を見ると、午前3時半。
4時間半あいたので、ロキソプロフェンをのんだ。
(写真は、昨夕看護師さんに消毒の仕方を教えてもらった時に、術後初めて見た傷口です)