シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

韓国で葬儀場乱立、適正数の2倍超に

2015年11月08日 09時36分40秒 | Weblog
 10月25日午後、ソウル市永登浦区のある葬儀場では、葬儀室6室のうち3室が空いていた。もともと地下1階に葬儀室が3室あったこの葬儀場は、4年前に男性(59)が共同経営者1人と買収した。男性は20億ウォン(約2億円)を投資し、2-5階に葬儀室6室(45坪-100坪)を新たに設け、地下1階には葬儀室の代わりに遺体安置所や事務室などを作った。男性は葬儀指導者7人とアシスタント9人採用した。ところが、買収以来、男性はずっと赤字を出している。その間に借金も3億ウォン(約3000万円)に達した。男性は「1カ月に35件以上葬儀があれば採算が取れるが、20件にもならない」と語った。
 男性の葬儀場が赤字なのは、「客」が少ないからだ。男性は「近所に葬儀場が多すぎるから客が少ない」と言った。葬儀場は永登浦区だけで10カ所もある。保健福祉部(省)によると、昨年末時点で全国の葬儀場は1073カ所(葬儀室4900室)に達するという。1998年に約400カ所しかなかった葬儀場が、この16年間で2倍以上に増えたのだ。韓国の一日の平均死亡者数は733人(2014年)で、普通は三日葬(亡くなってから三日目に葬儀を行うこと)であることを考えれば、現在の葬儀室数は適正数(2200室)の2倍以上ということになる。核家族化と共に孤独死も増えているほか、二日葬をするケースもあり、今後葬儀場はさらに余剰状態が進む可能性が高い。
 葬儀場が「雨後の竹の子」式に増えたのは、「葬儀業は金になる」という話が一時期取りざたされたためだ。20億ウォンを投じて葬儀場を買収した男性は「死ぬ人がいなくなることはない。葬儀室の使用料、弔問客の食事、寿衣やひつぎの販売費などを合わせると、葬儀1件当たり50万-100万ウォン(約5万-10万円)程度手元に残ると思った」と言った。1カ月に葬儀を約40件扱えば、元が取れて利益も出ると思ったということだ。だが、近隣に葬儀場が増えたため、葬儀室が埋まらない日の方が多くなったそうだ。1998年に、葬儀室1室で事業者登録さえすれば葬儀場の営業が可能な「自由業」になったことも乱立をあおった。
葬儀場が有り余っている状況の中、葬儀場業界でも「カネがある者はさらに金持ちに、カネがない者はさらに貧乏になる」という声が聞かれる。昨年約40億ウォン(約4億円)の黒字を出したソウル市松坡区の警察病院葬儀場は、200億ウォン(約20億円)をかけて葬儀室12室(9960平方メートル)を設ける第2葬儀場増設計画を進めている。そうした一方で、道峰区にある葬儀室2室の葬儀場は6年連続の赤字に悩まされ、倒産の危機にひんしている。この葬儀場は1カ月に葬儀が2-3件しかないとのことだ。
 この葬儀場の事務長(41)は「近くに月80件も葬儀を扱う大型病院があるため、毎月約1500万ウォン(約150万円)の赤字だ」と語った。
 小規模葬儀場の中には、食事や葬儀用品を原価よりかなり高く販売し、赤字を補てんしている所もあると言われる。ある葬儀関係者は「中国製の寿衣は原価が通常3万ウォン(約3000円)にもならないが、葬儀場では遺族から20万-60万ウォン(約2万-6万円)取っている」と言った。
 暴利や違法行為に走るケースも少なくない。警察庁は昨年、葬儀業者の特別取り締まりを実施し、「遺族を紹介する代わりに互助会に1件当たり収益の20-50%をリベートとして渡した」「安い中国製の寿衣を韓国製と偽って高く売った」「弔花の使い回しをした」として葬儀業者1114人を立件した。葬儀場の赤字を遺族に押し付けた形だ。
 葬儀場の余剰問題が深刻になっていることから、国会は現在の自由業的な葬儀場営業を申告制に切り替え、一定の施設・設備を備えた上で管轄の自治体に申告するよう葬事法を改正した。この法律は来年1月から施行される。保健福祉部関係者は「現在の葬儀場業界は過当競争や暴利搾取につながっており、消費者の権利が侵害される可能性が高いため、規制は避けられない」と語った。
キム・ジョンファン記者
韓国大手新聞 朝鮮日報15年11月8日記事抜粋
(投稿者注)
韓国では、中規模以上の病院には葬儀場が併設されている。


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