シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

目線を合わせて被災者に声を掛けた安倍首相【萬物相】     

2016年04月28日 00時52分04秒 | Weblog

南大門市場(投稿者撮影)

 インターネット上で1枚の写真が話題になっている。安倍首相が熊本地震の避難所を見舞った時のものだ。ひざまずき、両手を床に置いて、腰を曲げて被災者と対話する姿が印象的だ。歴史問題に関しては韓国でいい評判が聞かれない安倍首相だが、今回は評判がいい。低い姿勢が被災者たちの痛みを和らげているように見えるというのだ。「韓国の大統領もあのように被災者に接してはどうだろうか」という声もあった。
 74人が死亡した一昨年の広島での土砂災害でも、安倍首相は同じ姿勢で被災者たちに接した。ひざまずき、そのひざに両手を載せた姿が罪人のように見えた。貨客船「セウォル号」沈没事故があってから4カ月後のことだったため、当時も韓国でさまざまな意見があった。もちろん、日本では目新しい話ではない。5年前の東日本巨大地震の現場では、天皇と皇后もひざまずいて被災者を慰問した。記者たちも災害現場の取材時に同じ姿勢で被災者に接する。
 そうした場面を見ていながら、韓国人が何気なく見過ごしてしまう部分がある。慰問を受けた人々も、慰問する側の人物と同じようにひざまずいて応対していることだ。天皇が避難所に入ってきた時、一斉にその方向に向き直り、ひざまずいて座る姿を見ると、これが家族や財産を失って嘆き悲しんでいる人々なのかと思う。見舞う方も、見舞ってもらう方も区別なく、お互い礼儀正しく接する姿に感動を覚える。
 「正座」とは姿勢を正しくして座ることを意味する。日本では脚をそろえて曲げ、ひざまずく「屈膝座法」を正座と見なす。畳の部屋で身幅の狭い着物を着て暮らす日本の生活文化から出た習慣だ。ひざまずく行為が必ずしも謝罪や屈服を意味するわけではないそうだ。地面にひれ伏して頭をこすりつける「土下座」とは違う。韓国人があいさつをする時に手をそろえるのと同様、「屈膝座法」は日本人が守る礼儀作法だ。日本人に聞いてみると「被災者たちが立っていたら天皇や首相も立ったまま彼らに接していただろう」と言う。韓国人がわざわざそうした姿勢をまねる必要はないということだ。
 重要なのは立っているか座っているかではなく、目の高さだそうだ。日本人は上から見下ろす視線を禁忌だと思っている。自分の目線を相手の目線に合わせようとするから座るのであって、結果的に座ったから正座で礼を尽くしたということだ。私は彼の言葉にうなずいた。床に座った被災者を壇上から見舞ってはならない。ひざまずいて「子どもを助けてほしい」と言われた時は、一緒にひざまずいて手を握り、相手と同じ目の高さにするのが見舞うことの第一歩だ。韓国人にとっても必要なのは100の言葉ではなく、まず同じ目の高さではないかと思う。
鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員
韓国大手新聞 朝鮮日報16年4月27日記事抜粋


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