シニア花井の韓国余話

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【コラム】今日の韓国社会にも「福田リポート」が必要だ

2016年06月24日 19時38分23秒 | Weblog

三星グループ本部ビル(投稿者撮影)

今からちょうど23年前のことだ。1993年6月6日、ドイツ・フランクフルトへの出張に向かうサムスン・グループの李健煕(イ・ゴンヒ)会長(当時)のかばんには、サムスン電子顧問の福田民郎氏が作成した書類が入っていた。李会長による有名な「新経営宣言」のきっかけとなった「福田リポート」だった。日本の電子機器メーカー大手、京セラ出身の福田氏が提案した事項は、サムスンの組織にとって到底受け入れられないものばかりだった。
 10年ほど前、記者が取材の過程で入手した「福田リポート」は、よく知られている13枚の『経営とデザイン』(93年3月)だけではなかった。グループの主な役員たちに「社内限定」で配布された、56枚の『サムスン電子が確保すべき技術に関する提言』(93年1月)、『商品開発のプロセスに関する提言』(92年5月)、『事業部制度の実施に伴うデザイン・マネジメント案』(91年10月)の、計4種類の報告書がある。当時、サムスン電子の顧問に就任して3年目の福田氏は、それ以前にも数回にわたって報告書を提出したが、李会長には手渡されることもなく、しまい込まれていた。
 数日前、久々に「福田リポート」を読んでみた。現在とは比べ物にならないほど後進的だったサムスン電子の水準に対する叱咤(しった)が大部分を占めていたが、今でも参考になるような内容も少なくない。まず、李会長はなぜ、デザイン専門家である福田氏の報告書にあれほど感銘を受けたのか。「福田リポート」で一貫しているキーワードは「デザイン」だが、伝えようとしているメッセージの核心は「十分な改革をしようとするなら、根本から変えよ」というものだった。これは「妻、子ども以外はすべて変えよう」という李会長の発言と一脈相通じる。当時、サムスンの製品は「デザインに問題がある」と指摘する声が多く上がっていた。
「福田リポート」では、「デザインとは、色や形ではない」という文言が随所に登場する。機構の設計や金型の技術は基礎的なデザインであり、中心的なデザインは商品企画だという。サムスンは商品の企画からして問題があるとし、商品の企画書に盛り込むべき25の項目を示した。そして、報告書の末尾では「サムスンの問題点」をこのように要約した。
 「サムスンの問題点としては、商品企画の問題、機構設計の問題、経営戦略の問題、自社の保有技術の問題、関連会社の問題、デザインの決定システムの問題、販売に関する問題が混在している。理由を明確化しておらず、全てデザインの問題として扱っている。(一つの問題だけを改善していては)根本的な解決にはならない。デザインの問題だけ解決しようとするのは、対症療法にすぎない」
 福田氏が23年前、サムスンに対して示した診断は、現在の韓国社会にそのまま適用してもよいように思える。韓国が直面している危機は、政治や経済など特定の分野の問題ではない。それにもかかわらず、根本的な問題解決ではなく、対症療法に終始しているため、解決の道は遠いように感じる。何か事件が起これば、即興的で感性的な対応に終始する。今の韓国社会にも「福田リポート」は必要だ。もちろん、福田氏の報告書を十分に理解できるリーダーが求められることは、言うまでもないことだ。
李仁烈(イ・インヨル)産業1部次長
韓国大手新聞 朝鮮日報16年6月23日記事抜粋


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