シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

低レベルに甘んじる韓国料理のシェフに「高い基準」を見せよう【コラム】 

2015年12月08日 14時29分40秒 | Weblog
金持ちは高い韓国料理を食べよ
 ちょっと「しゃくに障る」話から始めたいと思う。
 ソウル・城北洞にある高級韓国料理レストランに行ってきた。どれだけ高いかというと、値段を聞いた人が皆「あり得ない!」と言うほどだ。何人かは突っ掛かるような口調で聞いてきた。「あっそう、さぞかしおいしかったんでしょうね?」。平凡な会社員のくせに身の程もわきまえずに…といったニュアンスだ。「味だけならうちの社員食堂だっておいしいじゃない」。別に譲歩して言っているわけではない。おいしいかどうか、という点だけなら、ユウガオの入った咸安の「ヨンポタン(タコ鍋)」、コチュジャン(トウガラシみそ)をたっぷりつけて焼いた奉化のイカ炭火焼き、量は少ないがおいしい羅州のコムタン(牛テールスープ)、それに先日会社の社員食堂で食べた肉入りチョル麺(歯応えのある韓国の麺料理)、どれも皆おいしかった。
 それならば、この「あり得ない値段」のレストランに、どうして行く決心をしたのか。1カ月ほど前、知人に連れられてそのレストランに入り、お茶だけ飲んだことがあった。インテリアデザイナー出身のオーナーシェフが奥から器を出してきて見せてくれた。それは1500年代に作られたという文化財級の白磁だった。中指でその器をはじいてみたら、澄んだ鐘の音が鳴った。脚のしっかりしたお膳、木を削って作った伝統的な重箱や木製家具、いずれもカネさえあれば手に入るという品物ではなかった。このように目の肥えたシェフがどんな料理を作るのか、非常に興味が湧いた。シェフがやたらと「自慢話」をするので「それじゃあどれほどすごいのか腕前を見せてもらおうじゃないの」という気持ちもあった。
結論は、(こんなに素晴らしい料理が味わえるのなら)シェフの偉そうな態度は多少我慢しなければならない、ということだ。舌で感じた料理の味や、これまで見たこともない趣のある器、素晴らしかったのは決してそれだけではなかった。
 30年寝かせたしょうゆで煮込んだという公州産の玉光栗は、実に甘みがあった。伝統的なしょうゆを長期間寝かせると、塩の成分が結晶となって沈み、まろやかになって甘みが出てくる。くりをしょうゆで煮たかと思えば、カルビにはしょうゆではなく塩を使っていた。それも、にがり成分を取り除いた新安産の高級塩だ。塩とワイン、発酵液で味付けしたというカルビを食べてみて、実に驚いた。しょうゆの場合、塩辛さ、コク、甘みがあるが、塩はたいてい、単純に塩辛いだけだ。しょうゆが四輪駆動車だとすれば、塩は一輪車だ。しかしわずか一つのタイヤだけで、タイヤ四つの自動車よりも遠くまで走るという印象を受けた。
 腕の良いシェフは、使い慣れた材料で全く異なる質感の料理にトライする「化学の実験者」だ。その点で「韓国料理の新発見」という言葉がぴったりだった。その日は米国と日本の有名シェフたちが団体で訪れ、食事会をしていた。「選手」同士は互いに探りを入れるのだろう。
 一緒に行ったメンバーの中には「愛国者」が多く、大統領の主宰する大統領府の夕食会に出席したことのあるメンバーもいた。このメンバーは「器も料理も『エセ韓国料理』だった」と嘆いた。また、外国の韓国公館で食事をしたという別のメンバーは「外国の公館では、シェフたちの韓国料理に対する基準があまりに低すぎる(低いレベルで妥協している)」と話した。大統領は世界の超一流の人物に会い、外交官はその国の実力者たちと会う。「韓国キムチ、ワンダフル」というレベルを超えて、韓国の飲食文化をもっと理解してもらわなければならない人々だ。
韓国の一流シェフの多くは、インタビューで「最高の料理は」と聞かれると「母が作ってくれた家庭料理」と答える。「母の味」というフレーズは、妻の料理に文句をつけるときには有効だが、プロの料理人が判で押したように基準とすべきものではないはずだ。韓国の一流シェフの目指すものが「家庭料理」だとすれば、香港、ニューヨーク、パリなど「飲食産業」で稼ぐ国・都市のようには到底なれないだろう。
 これはシェフだけのせいではない。「肉も、食べたことのある人がよく食べる(経験があった方がよくできる、という意味のことわざ)」と言われるように、おいしいものを食べた経験のある人こそがおいしい料理を作る。韓国料理のシェフたちに「より高い基準」を見せてやるべきだ。金持ちが高い料理を食べ、高級店のシェフたちが金を稼ぎ、彼らの才能を社会に「還元」できるようにすべきだ。歌手PSY(サイ)の母、キム・ヨンヒさんはレストラン事業で成功しているが、そのキムさんが次のようなことを提案した。「高級店のシェフたちが『若手シェフ』をあらためて教育し、その費用は自治体や国が負担する。その代わり若手シェフは外国公館や政府機関の厨房(ちゅうぼう)で、教育を受けた期間と同じだけ働いて奉仕してはどうか」。この提案を実行に移せば、われわれが普段食べている安い庶民料理はもちろん、「大統領府の料理」の質がより良くなるのではないかと思った。
デジタルニュース本部=朴垠柱(パク・ウンジュ)副本部長
韓国大手新聞 朝鮮日報15年12月7日記事抜粋


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