シニア花井の韓国余話

韓国交流50年の会社経営を引退しソウル定住の日本人が写真とともに韓国の案内をします。

ミュージカル違法チケット10万円【コラム】  

2015年08月30日 12時46分29秒 | Weblog
昨年夏、韓国のミュージカルをめぐるうわさに多くの人が驚がくした。特定のアイドル歌手が出演する日のチケットが中国のサイトで100万ウォン(約10万円)で取引されているというものだった。それが事実かどうかは確認できず、時間の経過とともに忘れ去られてしまった。
 ところが、その話が現実になった。城南アートセンターで上演されたミュージカル『DEATH NOTE(デスノート)』だ。最高14万ウォン(約1万4千円)のVIP席チケットがネット上では最高100万ウォン(10万円)で取引されていたことを、制作会社側が明らかにした。100万ウォンまでは行かなくとも、正規価格に上乗せされた金額で販売されている取引は600件を超えたという。
 制作会社は「100万ウォン」の値段を付けた売り手と直接接触、チケットを無効にして「違法取引チケットでは入場できない」と警告した。前売りチケットサイトには「客席中央前方1階1-3列の17-32番座席は1人1枚に販売を制限する」というあまり見たことのないただし書きが付けられた。
 被害も続出した。ある40代会社員は「娘があまりにも『DEATH NOTE』を見たがっているので、ネット上で売り手と取引したが、お金を払ったのに送られてこない」と悔しさをにじませた。
だが、『DEATH NOTE』は全公演ともチケット販売開始から10分で完売しているため、正規の方法では見ることができない。中東呼吸器症候群(MERS=マーズ)の流行もこうしたチケット争奪戦には関係なかった。 『DEATH NOTE』がそれだけ素晴らしい作品性を持っているのかどうかは別問題だ。メーンキャストたちはかなり実力派があるが、台本・舞台・音楽・振り付けなどで韓国ミュージカルの中で最高レベルかというと、そう言い切るのはためらわれる。 それでも観客が集まったのは、メーンキャストの1人がミュージカル界最高の「チケットパワー」を持つ歌手ジュンスだからだ。アイドルグループJYJのメンバーで、5年前にミュージカル俳優としてデビュー、素晴らしい実力と熱心なファンに支えられ、一気に業界の「優良株」になった。
 問題は、チケットの販売が特定のアイドルに偏りすぎる現象が演劇市場全体に悪影響を及ぼす段階に達していることだ。『DEATH NOTE』の違法なチケット価格100万ウォンは小劇場の創作ミュージカルや舞台なら20本以上見ることができる金額で、文化芸術家の67%の月平均収入よりも多い。しかし、「入手さえできれば高くてもチケットを買いたい」という観客がいるのだ。 
演劇界は貨客船「セウォル号」沈没やMERS流行という悪材料に2年連続で見舞われた。ミュージカル制作者は今後、質の高い作品を手掛けて作り上げるよりも、チケットが確実に売れる数人のアイドルを出演させることに力を入れようとする可能性が高い。実力が十分でない人気アイドルを主演にして作品のレベルを落とす可能性もある。俳優輩出の基盤が不安定になるだけでなく、特定の年齢以外に観客層を広げることもそれだけ難しくなる。長期的に見れば、ミュージカル自体が観客にそっぽを向かれることになるかもしれない「リスク」をはらんでいるのだ。
文化部= 兪碩在(ユ・ソクチェ)次長
韓国大手新聞 朝鮮日報15年8月30日記事抜粋



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。