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FTA戦略、農家補償より国民負担の最小化を【社説】                      

2014年11月16日 01時39分59秒 | Weblog
韓国大手新聞  朝鮮日報14年11月14日記事抜粋
 与野党は11月13日、国会外交委員会でオーストラリア、カナダとの自由貿易協定(FTA)批准同意案を採決・可決し、それと並行して国内の酪農・畜産農家に対する支援策についても審議を行った。畜産政策資金の金利引き下げ、無許可畜舎の許可、貿易利得共有税の法制化に向けた検討、営農相続控除限度額を現在の5億ウォン(約5300万円)から15億ウォン(約1億5800万円)へ引き上げることなどだ。与党はこれらの対策に今後3920億ウォン(約413億円)以上の予算が必要になると見込んでいる。
 農林畜産食品部(省)の試算によると、この二つのFTAが施行されれば、輸入牛肉と豚肉による韓国国内の畜産農家の被害額は今後15年で1兆7500億ウォン(約1850億円)以上に達するという。これらの農家にそれなりの補償を行うべきなのは当然のことだ。しかし政府はチリ、米国、欧州連合(EU)とのFTA締結を進める際、およそ30兆ウォン(約3兆2000億円)規模の農家支援策を取りまとめた。中でも畜産分野は13兆8000億ウォン(約1兆4600億円)と最も割合が高かった。政府はさらにオーストラリア、カナダとのFTA関連でも2兆1000億ウォン(約2200億円)規模の支援策をすでに発表しており、今国会ではここからさらに4000億ウォン(約420億円)が積み上げられたのだ。
 畜産農家の年間所得は平均5272万ウォン(約556万円)で、稲作農家の平均である2332万ウォン(約246万円)の2倍を大きく上回っている。ここからさらに畜産農家への支援策が次々と行われるのであるから、他の農家との公平性という観点から当然問題があるだろう。しかも相続税の控除額を引き上げることや、無許可の畜舎を認めることがFTAと何の関係があるのかも疑問だ。
 政府は今回、二つのFTA批准同意案を国会に提出してから1カ月以上にわたりこれを放置していたが、朴槿恵(パク・クネ)大統領のオーストラリア訪問が近づいた10月末になって突然、早期の採決を求め始めた。そのため与党の政策委員長が経済副総理に対し「党は大統領府の下請けではない」などと抗議する場面もあった。しかも外交委員会がFTA同意案を提出してからわずか1週間で農家への補償策が決まったのだから、審議はずさんなものだったはずだ。政府は中国とのFTAに関しても、11月10日の首脳会談に合わせるため内容が不十分なまま交渉を終わらせ、国内からは「拙速」との批判を招いていた。李明博(イ・ミョンバク)政権は2008年、大統領の訪米に合わせてFTAに伴う牛肉市場の開放を推し進めたが、その影響で狂牛病(牛海綿状脳症〈BSE〉)問題をめぐるろうそくデモを自ら招いてしまった。大統領の海外歴訪に合わせてFTAを無理に推進すると、後から大きな代償を支払わねばならなくなるのは当然のことだ。
 これまでもFTAが締結されるたびに「補償が行き過ぎ」といった指摘は少なくなかった。例えばチリとのFTA締結の際にも政府は「農家への影響を最小限に抑える」という名目で、1兆2000億ウォン(約1300億円)以上の基金を立ち上げて運用した。ところが後の調査によると、実際の被害状況を確認もせずに補償金を支払った事例や、廃業していない多くの農家に総額で数百億ウォン(100億ウォン=約11億円)もの廃業補助金を支払ったケースなどが明らかになっている。
 輸出依存度の高い韓国経済は、今後も引き続きFTAを拡大していかねばならないだろう。しかしFTA締結国の数を増やすことばかりに力を入れ、その後の対応で過剰補償ばかりを行っていては、国全体が大きな負担を抱え込んでしまう。米国、中国、EUという大きな市場とのFTAはすでに決着がついたのだから、今後FTAを進める場合は国民への負担を最小限に抑える方向へと交渉戦略を見直すべきだろう。





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