韓国大手紙・朝鮮日報13年６月25記事抜粋
テレビの教養番組に『安全之王』というコーナーがある。このコーナーで最近、ソウル市内の小学校の前の横断歩道で、自動車が信号や停止線をどれだけ守るかを探るため、隠しカメラを設置して3週間にわたり放送した。停止線をきちんと守る車が連続10台に達すると、10台目の車のドライバーを「安全運転王」として表彰し、プレゼントを贈ることとした。だがその結果は衝撃的なものだった。カメラを設置していた期間中「安全運転王」は一人も現れなかったのだ。停止線を守る車の連続記録は6台が最高だった。学校前の道路（スクールゾーン）では、全ての車が時速を30キロ以下に落とし、信号が赤になったときは停止線を越えてはならない。だが、このような規則を守る善良なドライバーは珍しい。多くの乗用車やトラック、オートバイがためらいなく制限速度を超え、停止する際にはタイヤが横断歩道の白線の上にかかっていた。子どもたちはまるでサーカスのように、車の間を縫いながら道路を渡った。
1996年、『イ・ギョンギュがゆく－隠れた良心を求めて』という番組があった。人通りが少ない深夜の道路で、信号や停止線をきちんと守るドライバーには「良心の冷蔵庫」を贈った。このときも、番組のスタッフたちは「良心の冷蔵庫」を贈るため、一晩中待たなければならなかった。誰にも贈られることのない冷蔵庫が増えていったため、これを集め、恵まれない人たちが暮らす施設に贈ることになった。その後20年近い歳月が流れたが、韓国社会では依然として、同じような状況が続いているというわけだ。
国連開発計画（UNDP）は、実質国民所得や教育水準、識字率、平均寿命などを考慮して算出した人間開発指数（HDI）を基に、各国の社会がどれだけ先進的かを評価している。昨年のランキングで韓国は、世界187カ国のうち12位となった。デンマークやフランス、フィンランド、英国、イタリアといった名だたる先進国が、韓国よりも順位が低い結果となった。また、経済力を基にランク付けする国際通貨基金（IMF）や世界銀行（IBRD）の評価でも、韓国は上位の先進国に分類されている。
だが、交通文化に目を向けると、韓国は全く違う国に変貌する。人口10万人当たりの交通事故による死者数は10.3人で、経済協力開発機構（OECD）加盟国33カ国のうち31位だ。スウェーデン（2.8人）、英国（3.1人）、日本やドイツ（ともに4.5人）といった国とは比べ物にならない。死者のうち歩行者は4人を占め、その半分は高齢者や子どもだ。これは交通弱者に配慮しない暴力的で自己中心的な車文化が生んだ恥ずかしい実態だ。
ある国を訪れる人たちが、その国の印象やレベルを把握する第1の指標が交通文化だ。運転者たちが停止線をきちんと守り、混み合う交差点で互いに譲り合う国では、教養や品位が感じられる。
このような現状を改めるには、市民の意識を向上させることはもちろん大事だ。しかし、市民の意識は時間の経過とともに自然と向上するものではなく、キャンペーンや啓蒙活動にも限界がある。未熟な子どもたちには、知識の教育だけでなく、規範や道理を教える徳育も欠かせないが、これと同じように、共同体の規則を破る成人に対しても、最小限の制度的な強制が必要だ。その最も簡単な方法は、停止線違反や、前の車について交差点に進入するなどの反則をしたドライバーに対し、1日に何回でも反則金を徴収することだ。そうすることで、韓国の交通文化は1年以内に大きく変わることだろう。現在のように、交通警察官が違反の現場をぼんやりと見ているだけでは、職務放棄といっても過言ではない。先進国では法律を犯した者に対する制裁もより厳格になる。米国ニューヨーク州は、スクールゾーンでの速度違反に対し、1200ドル（約12万円）の罰金または30日間の拘留刑を科している。またドイツでは、故意による交通法規違反に対し1000ユーロ（約13万円）の過料を科し、スイスでは交通違反の反則金を、資産や所得に比例し最大108万スイス・フラン（約1億1300万円）としている。
金亨基（キム・ヒョンギ）論説委員
(投稿者注)
韓国の交通文化は、２０年前と比べて運転そのものは、無理な運転をしないでおとなしくなった。
しかし、歩行者無視と過速度運転はかわらない。死亡者が多い原因だろう。
信号のない横断歩道では、歩行者が渡ろうとしても、９９％止まることはないし、信号があっても小さな交差点での信号無視は日常的だ。それも、市内バスやタクシーも目立つ。
テレビの教養番組に『安全之王』というコーナーがある。このコーナーで最近、ソウル市内の小学校の前の横断歩道で、自動車が信号や停止線をどれだけ守るかを探るため、隠しカメラを設置して3週間にわたり放送した。停止線をきちんと守る車が連続10台に達すると、10台目の車のドライバーを「安全運転王」として表彰し、プレゼントを贈ることとした。だがその結果は衝撃的なものだった。カメラを設置していた期間中「安全運転王」は一人も現れなかったのだ。停止線を守る車の連続記録は6台が最高だった。学校前の道路（スクールゾーン）では、全ての車が時速を30キロ以下に落とし、信号が赤になったときは停止線を越えてはならない。だが、このような規則を守る善良なドライバーは珍しい。多くの乗用車やトラック、オートバイがためらいなく制限速度を超え、停止する際にはタイヤが横断歩道の白線の上にかかっていた。子どもたちはまるでサーカスのように、車の間を縫いながら道路を渡った。
1996年、『イ・ギョンギュがゆく－隠れた良心を求めて』という番組があった。人通りが少ない深夜の道路で、信号や停止線をきちんと守るドライバーには「良心の冷蔵庫」を贈った。このときも、番組のスタッフたちは「良心の冷蔵庫」を贈るため、一晩中待たなければならなかった。誰にも贈られることのない冷蔵庫が増えていったため、これを集め、恵まれない人たちが暮らす施設に贈ることになった。その後20年近い歳月が流れたが、韓国社会では依然として、同じような状況が続いているというわけだ。
国連開発計画（UNDP）は、実質国民所得や教育水準、識字率、平均寿命などを考慮して算出した人間開発指数（HDI）を基に、各国の社会がどれだけ先進的かを評価している。昨年のランキングで韓国は、世界187カ国のうち12位となった。デンマークやフランス、フィンランド、英国、イタリアといった名だたる先進国が、韓国よりも順位が低い結果となった。また、経済力を基にランク付けする国際通貨基金（IMF）や世界銀行（IBRD）の評価でも、韓国は上位の先進国に分類されている。
だが、交通文化に目を向けると、韓国は全く違う国に変貌する。人口10万人当たりの交通事故による死者数は10.3人で、経済協力開発機構（OECD）加盟国33カ国のうち31位だ。スウェーデン（2.8人）、英国（3.1人）、日本やドイツ（ともに4.5人）といった国とは比べ物にならない。死者のうち歩行者は4人を占め、その半分は高齢者や子どもだ。これは交通弱者に配慮しない暴力的で自己中心的な車文化が生んだ恥ずかしい実態だ。
ある国を訪れる人たちが、その国の印象やレベルを把握する第1の指標が交通文化だ。運転者たちが停止線をきちんと守り、混み合う交差点で互いに譲り合う国では、教養や品位が感じられる。
このような現状を改めるには、市民の意識を向上させることはもちろん大事だ。しかし、市民の意識は時間の経過とともに自然と向上するものではなく、キャンペーンや啓蒙活動にも限界がある。未熟な子どもたちには、知識の教育だけでなく、規範や道理を教える徳育も欠かせないが、これと同じように、共同体の規則を破る成人に対しても、最小限の制度的な強制が必要だ。その最も簡単な方法は、停止線違反や、前の車について交差点に進入するなどの反則をしたドライバーに対し、1日に何回でも反則金を徴収することだ。そうすることで、韓国の交通文化は1年以内に大きく変わることだろう。現在のように、交通警察官が違反の現場をぼんやりと見ているだけでは、職務放棄といっても過言ではない。先進国では法律を犯した者に対する制裁もより厳格になる。米国ニューヨーク州は、スクールゾーンでの速度違反に対し、1200ドル（約12万円）の罰金または30日間の拘留刑を科している。またドイツでは、故意による交通法規違反に対し1000ユーロ（約13万円）の過料を科し、スイスでは交通違反の反則金を、資産や所得に比例し最大108万スイス・フラン（約1億1300万円）としている。
金亨基（キム・ヒョンギ）論説委員
(投稿者注)
韓国の交通文化は、２０年前と比べて運転そのものは、無理な運転をしないでおとなしくなった。
しかし、歩行者無視と過速度運転はかわらない。死亡者が多い原因だろう。
信号のない横断歩道では、歩行者が渡ろうとしても、９９％止まることはないし、信号があっても小さな交差点での信号無視は日常的だ。それも、市内バスやタクシーも目立つ。
