東京国立博物館 2009年1月2日-1月25日
昨日の昼前、今年初の上野へ。年末から素晴らしい晴天続きで、この日もほとんど雲のない、ウェッジ・ウッドのジャスパー・ブルーを思わせる濃い青空。やっぱり湿気がないと色彩が映えるものだなぁ、としばし本館を背景に空を仰ぎ見る。博物館の正門や本館入口などには例年のごとく立派なお花が活けてあって、お正月の華々しい気分を演出。獅子舞や和太鼓の演奏などもあって、外国人の方も大勢みえていた。
毎年干支にちなんだ美術作品の企画展示を楽しみにしている。今年は「豊かな実りを祈る―美術の中の牛とひと―」と銘打たれた展示。牛、と聞いても余り美的な感じはしないが、確かに長いこと我々日本人の生活に密接に関わってきた動物の一つである。「牛耕の図柄は春の訪れ」、ひいては「五穀豊穣」のイメージとして美術作品に好んで使われたと解説にある通り、今回の展示でも絵、彫刻、着物など様々な作品に登場する牛の姿を楽しんだ。
森徹山筆 『牛図屏風』(江戸時代・19世紀)と渡辺華山筆 『牧牛図』(江戸時代・19世紀)の両作品を観て、牛の瞳が青く描かれているのに少し驚いた。なんとなく青味がかったイメージが無きにしもあらずだが、こんなに青く見えるものだろうか? ネットで牛の画像を検索してみたが、決め手となるような写真は1枚も見つけられなかった。最後に本物の牛を見たのがいつだったか思い出すこともできないが、タンチョウの例もあることだし(次回書きます)、今度牛を見る機会があったら目に注目してみたい。
牛水滴(17‐18世紀)
水滴とは、墨をするための水を蓄えておく文房具。動物をかたどった水滴の中では、牛水滴が一番数が多いそうだ。確かに体が大きいから容量が大きいし、フォルムも安定していて使い勝手がよさそうだ。昔から、象などより日常生活で目にする身近な動物ということで好まれたのだろう。ケースの中にたくさん並んでいるのを見ると、一個欲しくなる(書道などたしなみもしないくせに)。
十二神将立像 丑神 (鎌倉時代・12~13世紀)
薬師如来とその信者を護る12の武神で、それぞれ12の干支を戴く。今年の干支に因んで展示されている丑神様も、武神だから甲冑を着用して形相も猛々しいのだが、視線を上にずらしていって、兜の上に牛の標識が正面を向いてちょこんと載っているのが目に入ると、どうしても力が抜けるというか、微笑ましいというか。牛も激昂すると大暴れすると思うが、普段の顔つきや体つきはどうしても牧歌的で平和な動物のイメージ。辰、寅、馬などはかっこいいかもしれないが(と考えると、卯や子はもっと可愛らしくなってしまうことだろう)。
常設展には、円山応挙の『臥牛図』もあった。タイトルの英訳「OX」が余りに味気ない感じがしたけど。
企画展以外で印象に残った作品:
菱川師宣 北楼及び演劇図巻 (江戸時代)
肉筆画(絹本着色)で、全長7m近くもある図巻。吉原遊郭と歌舞伎の光景を集めたもので、展示されていた部分では、賑やかな往来に沢山の艶やかな女性の姿。あの『見返り美人図』と同じポーズで立っている女性が何人かいて、師宣の決めのポーズなんだな、などと思いながら観入った。肉筆画ということで、師宣の繊細な線描がとりわけ美しく鑑賞された。
浮世絵
お正月関連の題材も含め、何点か作品が出ていた鳥居清広(1752‐1815)。実は昨年、江戸東京博物館にて開催された「ボストン美術館 浮世絵名品展」にて目に留まった人。流麗な線と、色彩がとても私の好みだった。その時展示されていた作品の一つが『当世遊里美人合(花下酔美人)』。
余談。ミュージアム・ショップをブラついていたら、突然ピーヒャララ~と甲高い笛の音がして、獅子舞の一団がお目見え。ちょうど入口の辺りにいた私は、獅子に頭を差し出す他の方々の後ろに回って何となく逃げ腰の体であったが、いくら奥の方へ逃れても獅子の一人が私を追うごとくやって来るので、観念して恐る恐る頭を差し出し、ガブリとやってもらった。コツンと音がしてちょっぴり痛かったけど、去年は何かと体調を崩しがちだったので、期せずしてこの頭噛みのお祓いをして頂いてよかったかもしれない。
昨日の昼前、今年初の上野へ。年末から素晴らしい晴天続きで、この日もほとんど雲のない、ウェッジ・ウッドのジャスパー・ブルーを思わせる濃い青空。やっぱり湿気がないと色彩が映えるものだなぁ、としばし本館を背景に空を仰ぎ見る。博物館の正門や本館入口などには例年のごとく立派なお花が活けてあって、お正月の華々しい気分を演出。獅子舞や和太鼓の演奏などもあって、外国人の方も大勢みえていた。
毎年干支にちなんだ美術作品の企画展示を楽しみにしている。今年は「豊かな実りを祈る―美術の中の牛とひと―」と銘打たれた展示。牛、と聞いても余り美的な感じはしないが、確かに長いこと我々日本人の生活に密接に関わってきた動物の一つである。「牛耕の図柄は春の訪れ」、ひいては「五穀豊穣」のイメージとして美術作品に好んで使われたと解説にある通り、今回の展示でも絵、彫刻、着物など様々な作品に登場する牛の姿を楽しんだ。
森徹山筆 『牛図屏風』(江戸時代・19世紀)と渡辺華山筆 『牧牛図』(江戸時代・19世紀)の両作品を観て、牛の瞳が青く描かれているのに少し驚いた。なんとなく青味がかったイメージが無きにしもあらずだが、こんなに青く見えるものだろうか? ネットで牛の画像を検索してみたが、決め手となるような写真は1枚も見つけられなかった。最後に本物の牛を見たのがいつだったか思い出すこともできないが、タンチョウの例もあることだし(次回書きます)、今度牛を見る機会があったら目に注目してみたい。
牛水滴(17‐18世紀)
水滴とは、墨をするための水を蓄えておく文房具。動物をかたどった水滴の中では、牛水滴が一番数が多いそうだ。確かに体が大きいから容量が大きいし、フォルムも安定していて使い勝手がよさそうだ。昔から、象などより日常生活で目にする身近な動物ということで好まれたのだろう。ケースの中にたくさん並んでいるのを見ると、一個欲しくなる(書道などたしなみもしないくせに)。
十二神将立像 丑神 (鎌倉時代・12~13世紀)
薬師如来とその信者を護る12の武神で、それぞれ12の干支を戴く。今年の干支に因んで展示されている丑神様も、武神だから甲冑を着用して形相も猛々しいのだが、視線を上にずらしていって、兜の上に牛の標識が正面を向いてちょこんと載っているのが目に入ると、どうしても力が抜けるというか、微笑ましいというか。牛も激昂すると大暴れすると思うが、普段の顔つきや体つきはどうしても牧歌的で平和な動物のイメージ。辰、寅、馬などはかっこいいかもしれないが(と考えると、卯や子はもっと可愛らしくなってしまうことだろう)。
常設展には、円山応挙の『臥牛図』もあった。タイトルの英訳「OX」が余りに味気ない感じがしたけど。
企画展以外で印象に残った作品:
菱川師宣 北楼及び演劇図巻 (江戸時代)
肉筆画(絹本着色)で、全長7m近くもある図巻。吉原遊郭と歌舞伎の光景を集めたもので、展示されていた部分では、賑やかな往来に沢山の艶やかな女性の姿。あの『見返り美人図』と同じポーズで立っている女性が何人かいて、師宣の決めのポーズなんだな、などと思いながら観入った。肉筆画ということで、師宣の繊細な線描がとりわけ美しく鑑賞された。
浮世絵
お正月関連の題材も含め、何点か作品が出ていた鳥居清広(1752‐1815)。実は昨年、江戸東京博物館にて開催された「ボストン美術館 浮世絵名品展」にて目に留まった人。流麗な線と、色彩がとても私の好みだった。その時展示されていた作品の一つが『当世遊里美人合(花下酔美人)』。
余談。ミュージアム・ショップをブラついていたら、突然ピーヒャララ~と甲高い笛の音がして、獅子舞の一団がお目見え。ちょうど入口の辺りにいた私は、獅子に頭を差し出す他の方々の後ろに回って何となく逃げ腰の体であったが、いくら奥の方へ逃れても獅子の一人が私を追うごとくやって来るので、観念して恐る恐る頭を差し出し、ガブリとやってもらった。コツンと音がしてちょっぴり痛かったけど、去年は何かと体調を崩しがちだったので、期せずしてこの頭噛みのお祓いをして頂いてよかったかもしれない。
私も今年は東博の浮世絵、すべてのクールに
出かけようと思っています。
今年もよろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
そういえば、今年の元旦もニワトリの餌やりに行かれた
のでしょうか?
私は余り浮世絵は詳しくないので、今度お会いした時にでも
是非いろいろ教えて下さい。どうぞ宜しくお願い致します。