埼玉県立近代美術館 2010年7月10日(土)-9月12日(日)
本展のご案内サイトはこちら
この間の日曜日(9月5日)は久しぶりに埼玉近代美術館へ。企画展もなかなか面白そうだし、この日は関連イベントで映画『レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴ』の無料上映もあり、涼しい館内でしばし時を過ごしてきた。
映画の方は語り出すと止まらないので置いておくとして、今回は展覧会の感想のみを留めておきたいと思います。
まずは、展覧会の概要の一部をパネルから(青字部分):
本展はロンドンで1950~60年代にかけて日常生活に取り入れられた各国のインダストリアル・デザインを紹介することで、この時代を見つめ直すとともに、ファッションや音楽をベースとした若者文化を取り上げ、当時のライフスタイル全般を振り返ります。
そんなわけで、会場にはそれこそ当時製造された車、スクーター、家具などの大物から、ラジオ、テレビ、カメラ、洋服、キッチン用品など諸々の日用品に加え、エレクトリック・ギターや初期マーシャル・アンプ、レッド・ツェッペリンのギタリストであるジミー・ペイジのギターや衣装、ビートルズ他のレコード・ジャケットなどなど、この頃の勢いあるロンドンのカラフルな様相が想像される品々が所狭しと並んでいた。
一応5年ごとくらいに区切って、パネルに各時代の事象が下記のような感じで説明されている:
1950年
朝鮮戦争が始まる。
世界初の量産型ソリッド・ギター「ブロードウェイ」発売。
この二つの史実が並列されているあたりが、本展の趣旨を明確に物語っていると思われます。
では、目が留まった作品をざっと挙げてみます:
『スクーター ベスパ125cc』 ピアッジョ社 (1951)
第二次世界大戦終結後、1950年代半ばにはヨーロッパ経済が急激に復興し、モビリティの大衆化が進んだ、という解説が入り口にあったが、まさに世の人々がスクーターに跨り、颯爽と街中を移動していたことを想像させる乗り物(画像中、12番がそれです)。あの「ローマの休日」でオードリー・ヘプバーンが乗っていたのもこのベスパだそうだ。シートや足を置くスペースも広く、スカート姿の女性でも足を揃えて乗れるし、フォルムが全体に丸っこいのは、種を問わずこの時代の製品に共通する意匠かもしれない。私もこれに跨って、ヨーロッパの田舎道とか気ままに走ってみたいなぁ。
『自動車 ミニ・ヒーリー カブリオレ』 BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション) (1959)
赤いミニのカブリオレ。展示では屋根が開けられ、中が見えるようになっていた。普通のミニなら助手席に乗ったことがあるが、車体が低くて本当にこじんまりと座席に収まる感じだった。久しぶりにミニの正面に立ってみたが、愛嬌のある表情してますね~。
『ポケット・トランジスタ・ラジオ 2R-21』 ソニー (1965)
ソニー製の小さいトランジスタラジオがいろいろ並んでいて、どれも軽快なデザインで手に取りたくなるものばかり。ここに挙げたのは(画像はないけれど)正方形のもので、手のひらにすっぽり収まりそうなサイズ。赤と黒の2色あり、オブジェとして飾っておきたい。
『デイ・ドレス』 マリー・クワント (1964-65年頃)
画像中、10という番号がついているドレス。襟元や脇に走るラインなどなかなかしゃれたデザインで、明るいマロン色も素敵。細身に見えるデザイン、というか、実際細身じゃないと着られないサイズ。この時代のイギリスの若い女の子たちは、きっと皆ツイッギーのようになりたくて、ダイエットに励んだのでしょうね。他人さまの国に対して大変失礼な言い方だけれど、現在ヨーロッパ一の肥満大国となってしまったイギリスにこんな時代があったなんて、と思ってしまった。
ジミー・ペイジの所蔵品
ピンクのヴェルヴェット・スーツを着こなせる人って、そうザラにはいないでしょうね。私は金ボタンが並んだフロック・コートが断然かっこいいと思ったけれど、それにしてもパンツが何て細身なこと!ジミー・ペイジって若い頃こんなに細かったんだなぁ、としみじみ(でも60歳代後半になった今も、さほどお太りになっていないようにお見受けしますが)。
ギターに関しては、古いものもあるにはあるが、ギブソンのレスポールは2000年代製造のものだし、『天国への階段』での演奏で有名な、あの6&12弦のダブルネック・ギターもクローン・モデルだったので(復刻版という意味だと思うけれど、ギターにもクローンという言葉を使うのですね)、私としてはちょっと期待過多だったかもしれない。
レコード・ジャケット
LPレコードのジャケットが連なるディスプレイを見上げて、ああ、この正方形の中にはアートがあったなぁ、と感慨を覚えた。昔、CDの大きさに縮小された時も一抹の寂しさを覚えたが、今やそれすらも消滅しそうな勢いの音楽メディア。音楽とアートの結びつきが希薄になるのは何か間違っているような気がする。そういえば本展のチラシも、LPジャケットを模したデザインをしていて、企画者のセンスを感じます。
これが広げたチラシ
本展は今度の日曜日、9月12日まで。もしご興味のある方は、お急ぎ下さい。
ついでながら、次回の企画展は「アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」。9月25日(土)-12月12日(日)です。
「丸沼芸術の森」が所蔵するワイエス・コレクションの全貌を紹介する、最初で最後の機会となるそうです。
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この間の日曜日(9月5日)は久しぶりに埼玉近代美術館へ。企画展もなかなか面白そうだし、この日は関連イベントで映画『レッド・ツェッペリン 狂熱のライヴ』の無料上映もあり、涼しい館内でしばし時を過ごしてきた。
映画の方は語り出すと止まらないので置いておくとして、今回は展覧会の感想のみを留めておきたいと思います。
まずは、展覧会の概要の一部をパネルから(青字部分):
本展はロンドンで1950~60年代にかけて日常生活に取り入れられた各国のインダストリアル・デザインを紹介することで、この時代を見つめ直すとともに、ファッションや音楽をベースとした若者文化を取り上げ、当時のライフスタイル全般を振り返ります。
そんなわけで、会場にはそれこそ当時製造された車、スクーター、家具などの大物から、ラジオ、テレビ、カメラ、洋服、キッチン用品など諸々の日用品に加え、エレクトリック・ギターや初期マーシャル・アンプ、レッド・ツェッペリンのギタリストであるジミー・ペイジのギターや衣装、ビートルズ他のレコード・ジャケットなどなど、この頃の勢いあるロンドンのカラフルな様相が想像される品々が所狭しと並んでいた。
一応5年ごとくらいに区切って、パネルに各時代の事象が下記のような感じで説明されている:
1950年
朝鮮戦争が始まる。
世界初の量産型ソリッド・ギター「ブロードウェイ」発売。
この二つの史実が並列されているあたりが、本展の趣旨を明確に物語っていると思われます。
では、目が留まった作品をざっと挙げてみます:
『スクーター ベスパ125cc』 ピアッジョ社 (1951)
第二次世界大戦終結後、1950年代半ばにはヨーロッパ経済が急激に復興し、モビリティの大衆化が進んだ、という解説が入り口にあったが、まさに世の人々がスクーターに跨り、颯爽と街中を移動していたことを想像させる乗り物(画像中、12番がそれです)。あの「ローマの休日」でオードリー・ヘプバーンが乗っていたのもこのベスパだそうだ。シートや足を置くスペースも広く、スカート姿の女性でも足を揃えて乗れるし、フォルムが全体に丸っこいのは、種を問わずこの時代の製品に共通する意匠かもしれない。私もこれに跨って、ヨーロッパの田舎道とか気ままに走ってみたいなぁ。
『自動車 ミニ・ヒーリー カブリオレ』 BMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション) (1959)
赤いミニのカブリオレ。展示では屋根が開けられ、中が見えるようになっていた。普通のミニなら助手席に乗ったことがあるが、車体が低くて本当にこじんまりと座席に収まる感じだった。久しぶりにミニの正面に立ってみたが、愛嬌のある表情してますね~。
『ポケット・トランジスタ・ラジオ 2R-21』 ソニー (1965)
ソニー製の小さいトランジスタラジオがいろいろ並んでいて、どれも軽快なデザインで手に取りたくなるものばかり。ここに挙げたのは(画像はないけれど)正方形のもので、手のひらにすっぽり収まりそうなサイズ。赤と黒の2色あり、オブジェとして飾っておきたい。
『デイ・ドレス』 マリー・クワント (1964-65年頃)
画像中、10という番号がついているドレス。襟元や脇に走るラインなどなかなかしゃれたデザインで、明るいマロン色も素敵。細身に見えるデザイン、というか、実際細身じゃないと着られないサイズ。この時代のイギリスの若い女の子たちは、きっと皆ツイッギーのようになりたくて、ダイエットに励んだのでしょうね。他人さまの国に対して大変失礼な言い方だけれど、現在ヨーロッパ一の肥満大国となってしまったイギリスにこんな時代があったなんて、と思ってしまった。
ジミー・ペイジの所蔵品
ピンクのヴェルヴェット・スーツを着こなせる人って、そうザラにはいないでしょうね。私は金ボタンが並んだフロック・コートが断然かっこいいと思ったけれど、それにしてもパンツが何て細身なこと!ジミー・ペイジって若い頃こんなに細かったんだなぁ、としみじみ(でも60歳代後半になった今も、さほどお太りになっていないようにお見受けしますが)。
ギターに関しては、古いものもあるにはあるが、ギブソンのレスポールは2000年代製造のものだし、『天国への階段』での演奏で有名な、あの6&12弦のダブルネック・ギターもクローン・モデルだったので(復刻版という意味だと思うけれど、ギターにもクローンという言葉を使うのですね)、私としてはちょっと期待過多だったかもしれない。
レコード・ジャケット
LPレコードのジャケットが連なるディスプレイを見上げて、ああ、この正方形の中にはアートがあったなぁ、と感慨を覚えた。昔、CDの大きさに縮小された時も一抹の寂しさを覚えたが、今やそれすらも消滅しそうな勢いの音楽メディア。音楽とアートの結びつきが希薄になるのは何か間違っているような気がする。そういえば本展のチラシも、LPジャケットを模したデザインをしていて、企画者のセンスを感じます。
これが広げたチラシ
本展は今度の日曜日、9月12日まで。もしご興味のある方は、お急ぎ下さい。
ついでながら、次回の企画展は「アンドリュー・ワイエス展 オルソン・ハウスの物語」。9月25日(土)-12月12日(日)です。
「丸沼芸術の森」が所蔵するワイエス・コレクションの全貌を紹介する、最初で最後の機会となるそうです。