言葉の魔法

2009-09-09 01:05:33 | Weblog
 言葉の魔法、というのがある。魔法の言葉とも言える。
 私は時たまそれが使える。だから猛獣たちもあやすことができる。
 そして私以外には、なかなか使っている人を見ることはなかった。
 (魔法レベルでなくても、言葉に関して、裏打ちされたものを扱っている人は、私にとっては実はとても少なく感じる。言葉の実体のない人たちの、なんと多いことかと思う。)

 今日私がある事情でお寿司屋さんのバイトを休みになって結局出勤することになったことについては、たぶんかなりの人たちが知っていたらしい(割合よくあることらしいのだ)。
 それで、入ってそうそう板さんBがカウンター越しにひそひそ声で「今日よかったな、入れて」と声をかけてくれた。ちょっとびっくりして「ありがとうございます、私も生活かかっているんでありがたいです」と思いきって正直に答えたら、返ってきた答えがずばりだった。
 それをここに書くことは今はできないけど、この人のことばのセンス、力は本当にすごいなあと思った。的確に無駄のないまさに的を射たコンパクトな答え。それでいて言葉をバカにしていないし、人を操ろうともしていない。本当に言葉の魔法を使う。その声かけだけでも嬉しかったのに、なんというか内心舌を巻いた。

 帰りしな、板長が「今日はお疲れさま。疲れた?」と聞いてきた。前半からかなりの混雑ぶりで、走ってしまったくらいだったし。予定外というのもあって、疲れてないことはない。笑顔で「少し足が疲れました」と答えたら、板さんBが「大丈夫だ、まだまだ大丈夫って顔してるな」と一言。それがまた、言いくるめるのでもなくその気にさせようとしているのでもなく、不思議な力を私の中に落としていく。言葉の贈り物だ。
 板さんB、本当にすごい。言葉の魔法をここまで使えるとは、年の功ももちろんだが、本当に驚く。久しぶりの、新鮮な尊敬である。