写真は草津 開運亭 旅館。
十数年前にかみさんと2人で2泊だか3泊したことがあった。二階の部屋だったが、古い建物でかみさんが歩くたびに、床や窓が軋んで音を立てた。
部屋で微睡んでいると、女将さんから声がかかり障子が開いた。
「お客さん、床が軋むたびにぽん太が怯えるので部屋を代わってくれませんか」
「、、、、、、、、」
話の見えない私達は顔を見合った。女将によると。
10年近く前、店の主人が山に山菜採りに行った時、怪我をした子狸を見つけた。可愛そうに思い家に連れて帰って治療したところ、数日で元気になったので、山に返しに行ったのだが、主人の傍らを離れようとしないので、いとおしくなって連れて帰って来た。その日以来、ぽん太と名ずけて家族同然に過ごして来たのだが、ここ数ヶ月、老衰なのか下の部屋で伏せっているとのこと。そんなぽん太がかみさんが歩くたびに床が軋み、怯えていると言う。
私達は二階の隅の部屋に移った。かみさんも摺り足で歩く様になった。
精算のため私達は荷をまとめ下へ降りた。
「ありがとうがざいました、部屋まで代わって頂きましたが、昨晩、ポン太は亡くなりました」
返す言葉のない私達は顔を見合った。
その後、ぽん太は剥製となり今も開運亭の玄関にいる。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます