写真は、鳥居 民 「昭和20年」草思社 全11巻。敗戦の年である、昭和20年を公人、私人の日記、公文書などの資料を駆使して再現を試みたドキメンタリー。作者の死亡により未完となった。少し休みが取れたら一気に読んでみようと思っている。
眠れない夜、私は妄想する、8月30日(日)21時55分。報道ステーションが特番として放送される様を。
オープニングロールが終わり、カメラは正面から古舘伊知郎を捉える。深々と頭を下げ、その後、前を見据える古舘。
「こんばんは、報道ステーションの時間です。本来であれば、今日は日曜日ですから報道ステーションはお休みですが、国会周辺のデモが非常に緊迫してきたという情報が入って参りまして、予定を変更いたしまして急遽、報道ステーションを放送することとなのました。国会前には辺見庸子アナウンサーがいます。辺見さん、辺見さん、国会周辺の様子はどうですか」
カメラはライトに浮かび上がる沢山の人びとを映し出す。国会周辺は立錐の余地も無いほど人で埋め尽くされ、どこが車道でどこが歩道かわからない状態だった。
「古舘さん、聞こえますか、(聞こえます辺見さん)私、今日は午後3時頃から国会周辺で取材していました。その頃はどちらかと言うと、警備の警察官の姿の方が目立っていましたが、午後7時を過ぎたあたりからでしょうか、だんだんデモに参加する人々の姿が増え、7時半頃、交通規制が敷かれ、国会周辺は車が入れない状態となりました。現在は、人が車道を埋め尽くす状態となっています。(辺見さん、辺見さんは今、国会周辺のどのへんにいますか?) はい、私はいま国会南口通用門あたりにいます。沢山の人びとが、プラカードなどを持って戦争反対を訴えています。しかしもうどちらに進めばいいかもわからない状態で、非常に緊迫しています。何か危険を感じます。自分の意思ではもう何処にも行けない状態です」
カメラが揉みくちゃに成る辺見アナウンサーを映し出す。カメラがスタジオに変わる。
「辺見さん、もう取材を切り上げて戻ってきてください。国会周辺はいま非常に緊迫した状態にあることがわかります。ここでゲストの方をお呼びします」
カメラがセット入り口を見据える、緊張ぎみセットに入り、着席するゲストを映し出す。
「お帰りなさい、古賀さん」
カメラは古賀を捉える。1秒、2秒、3秒 4秒、5秒。
「ただいま」
こんなことないか。
私の妄想はここで終わり、私は深い眠りにつく、今度は見果てぬ夢をみながら。