写真は キリンの子 鳥居歌集 鳥居 KADOKAWA 1600円 税別。
穂村 弘が週刊文春の書評で取り上げていたので買ってみた。
本のそでにあるプロフールを写してみる。
2歳の時に両親が離婚、小学5年の時には目の前で母に自殺され、その後は養護施設での虐待、ホームレス生活などを体験した女性歌人。義務教育もまともに受けられず、拾った新聞などで文字を覚え、短歌についてもほぼ独学で学んだ。「生きずらいなら、短歌を読もう」と提唱し、その鮮烈な印象を残す短歌は人々の心を揺さぶり、指示を広げ始めている。義務教育を受けられないまま大人になった人たちがいることを表現するためにセーラー服を着ている。
歌を引いてみる。
昼ごはん食べずに群れから抜け出して孤独になれる呼吸ができる
目を伏せて空へのびゆくキリンの子 月の光はかあさんのいろ
目覚めれば無数の髪が床を埋め銀のハサミが傍らにある
母の死で薬を知ったしかし今生き抜くために同じ薬のむ
冷房をいちばん強くかけ母の体はすでに死体へ移る
本読めぬ指にされても本を読む汚さぬようにページを捲る
大根は切断されて売られおり上78円、下68円
君が轢かれた線路にも降る牡丹雪「今夜は積もる」と誰かが話す
遮断機が上がれば既に友はなく見れば遠くに散った制服
手を繋ぎ二人入った日の傘を母は私に残してくれた
作者の境遇と短歌がリンクしてその深みを増す。中城ふみ子の闘病、岸上大作の自死など、短歌の特性の1つだろう。現時点の鳥居の短歌も心を打つものが確かにある。でも私は20年後のセーラー服を脱いだ鳥居の歌を読んでみたいと思う。
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