早起き梟のひとりごと

仕事に追われる日々を少しだけ立ち止まって見つめてみると・・・

腕時計顛末記その1

2017-08-23 05:13:54 | 出来事

写真は、私が生まれて初めて買った腕時計。

故あって、腕時計が必要となった。時間が分かれば良いだけだから何でもよしと、地元の大山ハッピーロード商店街の時計屋に赴いた。ウインドー越しに時計を見つめる。店のおばちゃんと目があった。するすると私の横に忍び寄るおばちゃん。まずい私はこの手の接客にからっきし弱い。

「何かお探しですか」

「腕時計を、何しろこの歳で初めて腕時計を買う気で、これは」指さす私。

「こちらは、女性用ですね」

「そうなんですか、ではこれは」指さす私。

「そちら、文字盤が黒ですと少し見ずらいですから、初めてなさるなら文字盤が白の方がよろしいかと」

「そうなんですか、ではこれは」文字盤が白の物を指さす私。

「そちら、文字がアラビア数字ですと少し見ずらいですから、初めてなさるなら文字は普通の方がよろしいかと」

「そうなんですか、ではこれは」文字盤が白で、文字が普通で、ゴールドが基調の物を指さす私。

「そちらですか、初めてでしたらやはり、シルバーが無難かと、こちらなど如何でしょうか」

てな訳で、購入したのがこの時計。

結局、私の意思は何1つ反映されなかったけど、時間が分かりさえすれば良いのだから、まっいっか。

数日後、この時計をして颯爽と助手席に乗り込む私。運転手はゾエ。

さりげなく腕時計に眼をやる私。

「時計、買ったんですか」

「わかった」

「分かりますよ、そんだけちらつかせれば」

これ見よがしに、時計をゾエにかざす私。なにやら意味深な笑みを浮かべていたゾエが笑い出した。

「何だよ、なにが可笑しい」

「自分で、選んだんですか、その時計」

「まあな」

また、意味深な笑みを浮かべてハンドルを握るゾエ。

「何だよ、そんなに可笑しいかこの時計」

「可笑しくはないですよ。ただ」

「ただ、なんだ」

「クリケットに誘われたオヤジが小学生の上履きをはいて登場。みたいな感がありますね」

「なるほどね」

数日後、この時計をして普通に助手席に乗り込む私。運転手は元請けのE氏。

「あれ、八木さん、腕時計なんかしてた」

「この前、買いました」

「どこの」

「...........」

「どこのメーカー」

「SEIKOみたいです」

「SEIKOか、」と言って腕時計をちらつかせる、E氏。

「どこのメーカーですか」

「見てわからない。ローレックス、でも知る人ぞ知る地味なローレックス」

それからE氏の腕時計の蘊蓄が続いた。

私はその時決めた。

鼻白むことも、鼻で笑われることもない腕時計を買ってやると

この話の続はまたいつか。