今回は、環境省の調査結果を紹介します。
これまでに2回重要な調査結果を発表しています。
①平成10 年5 月「内分泌攪乱化学物質問題への環境庁の対応方針について –環境ホルモン戦略計画SPEED'98–」を策定(平成12 年11 月改定)
②平成22年7月の「化学物質の内分泌かく乱作用に関する今後の対応― EXTEND2010 ―」
内容
○ 魚類に関する研究
・野生メダカ(中国、韓国を含む)の1%程度に遺伝的性と個体の性が一致しない個体(性転換個体)が存在することを見いだした。また、性転換個体の出現は遺伝的な変異であることが明らかになった。
・メダカの雄稚魚は、女性ホルモン様物質に対して高い感受性を示すこと、及び遺伝的雄に卵巣を形成させるメカニズムが明らかになった。
・9種類の魚種(メダカ、ゼブラフィッシュ、ファットヘッドミノー、トゲウオ、ローチ、コイ、キンギョ、ブルーギル及びグッピー)の女性ホルモン受容体αは、女性ホルモン(エストラジオール)に関してはほぼ同じ反応を示すが、既に使用されていない農薬DDT 関連物質に対しては、感受性に種差があることが示された。メダカやグッピーは感受性が高いが、コイやキンギョなどは感受性が低いことが明らかになった。
メダカを用いてビテロゲニンアッセイ及びパーシャルライフサイクル試験を実施し、必要に応じてフルライフサイクル試験を追加して実施した。
その結果、試験を実施した36 物質のうち、環境中の濃度を考慮した濃度で4-ノニルフェノール(分岐型)と4-t-オクチルフェノールでメダカに対し内分泌かく乱作用を有することが強く推察され、また、ビスフェノールA とo,p’-DDT でもメダカに対し内分泌かく乱作用を有することが推察された。残りの32 物質については、明らかな内分泌かく乱作用は認められないと判断された。
○ 無脊椎動物等に関する研究
・昆虫成長制御剤等の幼若ホルモン様化学物質をばく露したミジンコ類(単為発生を行うため、通常は雌のみが発生)に雄仔虫が出現すること、及びその際に変動する遺伝子群が明らかになった。
・ノニルフェノールの甲殻類(アミ類)に及ぼす影響に関する実験において、環境水中濃度よりやや高い濃度のノニルフェノールはアミ類の脱皮を抑制することで成長阻害を引き起こすことが認められた。
海産の巻貝の一種であるイボニシで、メスにオスの生殖器官が形成され発達する生殖器異常が我が国沿岸部で広範囲に認められ、環境中の有機スズ化合物トリブチルスズ、トリフェニルスズとの関連が見いだされた。
○ ほ乳類に関する研究
・特定の系統のラット(Wistar Hannover GALAS)に認められていた甲状腺腫大の原因が遺伝子の変異であることが明らかになった