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「ペットロス」を癒す8つの方法

2021-04-09 05:52:10 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

ペットの死は悲しんでもいい…「ペットロス」を癒す8つの方法
〈愛犬を亡くした記者が涙の取材〉

2021年3月8日(月) 文春オンライン

コロナ禍でペットを飼う人が増えている。
昨年、新たに飼われ始めた犬は推計46万頭、猫は48万匹と前年比で10%以上も増加(ペットフード協会調べ)。
だが、別れの時はいつか必ず訪れる。
どうすればその衝撃から立ち直ることができるのか。
体験した記者がレポート。
妻からの電話「ミント、今、逝っちゃったみたい」
そのとき、私はスーパーの「精肉売り場」にいた。
ポケットの中で携帯が震えているのに気づいた瞬間、心臓がすくみ上がった。
画面に妻の名前が表示されたのを見て自分が「やらかした」ことを悟った。
「今どこ? ミント、今、逝っちゃったみたい」
家まで走る間、「まだあったかいから……」という涙声の妻の言葉が、頭の中でグルグルと回っていた。
昨年5月6日、私は犬を亡くした。
雑種のオスで名前を「ミント」という。
享年19歳6カ月は、人間でいえば100歳を超えている。
亡くなる3日前から、ほとんどエサを食べられなくなり、その前日の夜からは、てんかんの発作が頻発し、ミントも私も妻もほとんど一睡もできなかった。


大往生だった「ミント」

◆予想していたはずの「衝撃」だったが……
そして迎えた、その日。
ミントは午前中に発作を起こしたものの、昼をすぎると、やや落ち着き、ようやくウトウトしはじめた。
「今日は長い夜になるな」
そう感じた私は、この間に動物病院に鎮静薬をもらいに行き、ついでに衰えた犬の食欲を刺激できるものはないかと、スーパーに寄ってしまったのである。
リビングに飛び込むと、クッションに横たわるミントの姿が飛び込んできた。
涙とともに「ごめん!」という言葉が溢れて止まらない。
まるで寝ているようにしか見えないが、その瞳だけが、光と一緒に生命が消えたことを物語っていた。
ペットを飼っている人で、「いつか来るその日」のことを考えない人はいないだろう。
自分もそうだった。だが、いざその時を迎えてみると、予想していたはずの「衝撃」に、ほとんど何の備えもできていなかったことを思い知らされた。

◆「ペットロス」とは何なのだろう
ミントが亡くなって1週間後、冷蔵庫を整理していた妻が「こんなの買ったっけ?」と手にした「カブ」を見て、反射的に涙が出た。
それはあの日、スーパーで「カブのすりおろしなら食べられるかも」と、買ったものだった。
カブで号泣する自分に戸惑いながら、「これはマズい」と思った。
どうすれば「ペットロス」を乗り越えられるのか。
その衝撃を和らげる方法はあるのだろうか。
インターネットで調べてみても、なかなか自分が必要としている情報には辿り着けなかった。
この経験が本稿の出発点である。
そもそも「ペットロス」とは何なのだろうか。
「私は『ペットを亡くしたときの飼い主の深い悲しみの反応と立ち直りまでの全容』と定義しています」
そう語るのは、ペットロスに詳しい帝京科学大学の濱野佐代子准教授(アニマルサイエンス学科)だ。
ペットを失った直後に、深い悲しみや孤独感、罪悪感といった感情を抱くことはごく自然な反応だ。
問題はその期間が長引き、さらに睡眠障害や「何もする気が起きない」といった状態に陥ってしまう場合だ。
ある調査によると、ペットを亡くした飼い主のうち、死別直後で59.5%、2カ月後でも56.7%の人が、「医師の介入を要する精神疾患」のリスク群と判定されている(北里大学獣医学部・木村祐哉氏らの「ペットロスに伴う死別反応から医師の介入を要する精神疾患を生じる飼主の割合」2016年)。

◆ペットの死は悲しんでもいい
一方で前出の濱野氏は、次のように指摘する。
「誤解してはいけないのは、ペットロスは病気ではありません。大切な存在を失うという意味では、家族とか親しい友人を亡くすのと同じです。ただペットロスの場合、周囲の理解を得られにくい。ペットを亡くしてショック状態の人に対して、周囲が『ペットが死んだくらいであんなに悲しむなんて』という反応を示すケースも少なくない。ペットロスを『公認されていない悲嘆』と呼ぶ研究者もいます」
中には飼い主自身が「こんなに悲しむ自分はおかしいのでは」と思ってしまうケースさえあるという。
「まずペットの死は『悲しんでもいいんだ』ということを知ってほしい。カギとなるのは周囲の支えで、これを『グリーフケア(喪失の悲しみに寄り添うサポート)』と言います。その提供者候補として、同じくペットを亡くした人や心の専門家のほか、家族や友人、動物病院の獣医師や動物看護師、ペット仲間などが挙げられますが、実際にはペットを亡くすと動物病院やペット仲間とは疎遠になることが多いようです」(同前)

◆いいホームドクターを見つける
そこで、獣医師で「動物医療グリーフケアアドバイザー」の阿部美奈子氏は、全国の動物病院の医療関係者を相手にグリーフケアの講習などを行っている。
「私はよく獣医の皆さんに、ペットが亡くなった後でも『病院においでください』と言える動物病院であってほしい、とお願いするんです。亡くなったペットと一緒に病院に来てもらって、『待ってたよ』と声をかけて優しくブラッシングをしながら、綺麗にしていく。それだけでも飼い主さんはだいぶ救われます。いいホームドクターを見つけることが、ペットロスへの大事な備えとも言えます」

◆ペットロスが重くなる人の傾向
ところでペットロスが重くなりがちな人に、共通の傾向はあるのだろうか。
「まず事故死や突然死といった予期せぬ別れは、悲しみも強くなります。また周囲のサポートがなく、悲しみを共有できる人がいない場合も、深刻になりがちです」(前出・濱野氏)
獣医でありながら、臨床心理士の資格も持つ濱野氏は一昨年、大学附属動物病院に「家族の心のケア科」を開設し、元飼い主たちの声に耳を傾けている。
「まだできたばかりですが『こんなこと誰かに相談していいと思わなかった』という方もいました。よく『ペットを亡くした人にどう声をかければいいのでしょうか?』とも聞かれるんですが、ただ、寄り添って話を聞いてあげるだけで十分だと思います」(同前)
一方で「ペットに依存しすぎると、ペットロスがひどくなる」とも言われるが、これについては濱野氏も阿部氏も「必ずしも、そうではない」と口を揃える。

◆飼い主としての責任感が強すぎる人は要注意
「依存というとイメージがよくないですが、それだけ強い絆で結ばれるペットと巡り会えたことは幸運なんです。亡くなった後の喪失感はもちろん大きいですが、それは幸せだった証でもあります。  むしろ私の印象では『飼い主としての責任感が強すぎる人』の方が、ペットロスは重くなりやすい気がします。飼い主として最後まで治療をやるべきという信念で、獣医師に言われた通り、100パーセントを自分に課す人ですね」(阿部氏)
なぜ、それがいけないのだろうか。
「責任感の強い人は治療に夢中になるあまり、ペットを本来の『〇〇ちゃん』ではなく『病気ちゃん』として見るようになってしまうからです。治療のためなら、嫌がる薬を飲ませ、点滴にも通う。その子に長生きしてほしい一心で頑張るわけですが、いざ亡くしてしまうと、苦しそうに治療を受ける最期の姿がフラッシュバックしてくる。『あんなに嫌がっていたなら、無理にやらなきゃよかった』という後悔や罪悪感に苛まれてしまうんです」(同前)

◆ペットの幸せそうな姿が飼い主に『回復のエネルギー』を与える
大事なことは、最期まで、病気ではなく、ペットと向き合うことだという。
「彼らが求めるのは、飼い主との変わらない平和な日常だけです。飼い主が病気しか見ずに暗い表情をしていると、ペットは『自分が何か悪いことをしているのではないか』と考えて、落ち込んでしまう。これは不幸です。終末期での重要な治療は『痛み』をとってあげるだけでいい。ペットは自分の病名を知りません。痛みさえなければ、自分のペースで好きなものを食べて動いて、好きな場所で寝ます。その幸せそうな姿が、ペットが亡くなった後も、飼い主に『回復のエネルギー』を与えるんです」(同前)
重要なのは、この回復のエネルギーをいかに得るか、だ。
以下、私自身の経験と、ペットロスを経験した人への取材をもとに、できるだけ具体的に書いてみたい。

〈お別れのセレモニー〉
「実はお別れの時間がとても大事なんです」と前出の阿部氏は語る。
私も経験したことだが、ペットを亡くした直後でも、火葬の手配など事務的な作業は意外にできてしまうものだ。
「そうなんです。それで葬儀屋さんに『今日の夕方なら』と言われて、慌てて火葬してしまう方も多いのですが、お別れの時間が短すぎると後で引きずります。亡くなってからお別れのセレモニーまでの時間、心ゆくまで身体を撫でて、話しかけて感謝の気持ちを伝えることが大切です。バギーにのっけて散歩してもいい。きちんと保冷の処置をしておけば、慌てる必要はありません。私も、亡くなった犬と5日間、一緒にいたことがあります」(同前)
できれば、ペットの生前に、葬儀社や葬儀場の目星をつけておくといいという。
「縁起でもない」という声もあろうが、納得のいくお別れができれば、ペットロスからの回復も早くなる。

〈花を供える〉
ミントを亡くしてから2日後、突然、美しい花が自宅に届けられた。
贈り主は、散歩コースにあったワインショップのオーナー夫妻だった。
ミントは愛犬家の2人の店に寄るのが大好きだったので、その死はメールで知らせていた。
今回初めて分かったことだが、犬を亡くすと、その存在を記憶しているのは自分たち家族だけ、という錯覚に陥って、それが悲しみに拍車をかける。
そんなときに「ミント君のこと忘れないよ」というメッセージとともに届けられた花には、本当に救われた。
急にぽっかりと空いた部屋の空間を物理的に埋めてくれるのも有難かった。
このとき以来「ペットを亡くした人には花を」と私は誓うようになった。

〈思い出の品〉
お皿、首輪やリード、缶詰、オムツやオシッコシート、お気に入りの毛布、小さい頃遊んでいた玩具……ペットを亡くした飼い主は、これらの大量の遺品を前に途方に暮れる。
捨てるべきか、残すべきなのか。
5年前に愛犬を亡くした恵子さん(仮名・40代)は、こんな話を教えてくれた。
「犬を亡くした直後に『見るだけで辛くなるから』と遺品を全部処分した方がいたんです。でも、しばらくしてから『あの子が生きていた証が何もなくなってしまった』と、もの凄く後悔されていました。だから私は、うちの子の遺品はいったんしまって、少し落ち着いてから整理しました。今も晴れた日は、お気に入りのクッションの上で、あの子が寝ているような感じがして、嬉しいんです」
ペットが遺してくれたものからもエネルギーをもらって、回復していくのだ。

〈オンリーワンなお守り〉
その恵子さんは、愛犬の小さな骨をケースに入れて肌身離さず持っている。
「何かあったら語りかけたりもしてますね(笑)。一緒にいる気がするんです」
前出の阿部氏も頷く。
「ペットの手形とか足形のスタンプをお守りとして持っている人もいます。骨もそうですが、オンリーワンなものを残しておくと、後々、本当に救われます。私がおすすめしているのは『家族写真』です。エンディングが近づくとみんな写真どころじゃなくなるのですが、病院では私が声をかけて撮らせてもらってます。最期の瞬間まで誇り高く生きるペットと一緒の写真は、家族の財産になります」

〈動画を撮っておく〉
写真といえば「亡くなった直後は(ペットの)写真を見ると泣いてしまった」という人が多かった。
私も例外ではなかったが、なぜか動画は不思議と見ることができた。
動画の中の愛犬の姿に思わず頬がゆるみ、悲しみがだいぶ癒された。
「そういうケースは初めて聞きましたが、興味深いですね。もしかすると写真だとペットのリアクションがないから、見る側の悲しい気持ちがそのまま投影されるのかもしれません。その点、動画はリアクションが映っているので、その場面での楽しい気持ちを追体験しやすい可能性はあります。それぞれの人に適した向き合い方があるのかと思います」(前出・濱野氏)
もっと動画を撮っておけばよかったと少し思う。

〈リードをもって散歩〉
インターネットで、「亡くした犬のリードをもって散歩する」という方法が紹介されていたので、私も試してみた。
カバンにリードをつけて実際に犬と散歩したコースだけでなく、行ってみたかったけど行けなかった場所などを歩き回った。
特に亡くした直後は、歩いている間だけは気分が紛れるので、2、3時間歩くこともザラだった。
確かに一定の効果はあったように思う。

〈新しい子を飼う?〉
「ペットロスを癒すには、新しい子を飼うしかない」。
よく言われることだが、前出の濱野氏はこう語る。
「確かにそれで癒される人もいるのですが、私はおすすめしません。悲しみから立ち直るという過程まで含めて、ペットと過ごす時間だと思いますし、そこを経て人間的な成長を遂げる人も多い。その過程をパスしてしまうと、また別のペットロスを抱え込むだけになってしまいます」

◆ペットが生きている間にできるたったひとつのこと
このように、ペットを亡くした後の喪失感への対し方は人それぞれだ。
だが、ペットが生きている間にできることは、実はたったひとつしかない。
「一緒に暮らしているときに存分に愛情を注いで楽しむこと。愛情が深いと亡くしたときの悲しみも深くなりますが、『楽しい思い出』『温かい思い出』が、やがて喪失の悲しみを癒す助けになります」(同前)
「出会ったときのこと、楽しかったこと、たくさん話しかけて、撫でて、出会えた幸運を噛みしめながら、その子と向き合って1日1日を幸福に過ごすことに尽きます」(前出・阿部氏)

◆積み重ねた幸福の記憶は、後できっとあなたを助けてくれる

記者と愛犬の「ミント」

ミントを亡くして9カ月が経った。
最期の瞬間を看取れなかった後悔は、今もチクリと胸を刺す。
話を聞いた人のなかには「10年以上前に亡くした犬のことを思い出さない日はない」という人もいたが、この喪失感が完全に消えることはないのだろう。
それでも、喪失感と幸福感との間を振り子のように揺れ動いていた思い出は、時が経つほどに幸福感の側にとどまる時間が増えてきたようにも思う。
なぜ先に亡くなると分かっているのにペットを飼うのか――その答えも自分なりには少し見えてきた。
ペットを飼っている人は、家に帰ったら、ぜひ撫でてみてほしい。
その幸せは手に触れることができる。
積み重ねた幸福の記憶は、後できっとあなたを助けてくれるはずだ。

伊藤 秀倫/週刊文春 2021年2月25日号

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