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乳児噛み殺し事件 従順なレトリバーが凶暴化する5つの引き金

2017-03-31 06:15:28 | 新聞記事・Webニュース・テレビ・書籍・ブログなど

乳児噛み殺し事件 従順なレトリバーが凶暴化する5つの引き金

2017年3月25日(土) デイリー新潮



「従順で利口」の代名詞「ゴールデンレトリバー」

東京・八王子市で、大型犬が乳児を噛み殺した“事件”は、全国800万と推計される愛犬家世帯を慄然とさせた。
その犬種とは「ゴールデンレトリバー」。
「従順で利口」の代名詞とされる人気犬だったからだ。
「赤子」に狂暴な牙が向けられた「引き金」とは――。

***

自らもゴールデンレトリバーを飼育する俳優の津川雅彦さんが、「信じられない。その一言しかないね」と言うように、これが愛犬家の間で衝撃を持って受け止められたのは、何より、“加害者”がゴールデンレトリバーだったから。
「飼いやすい犬」として知られ、例えば、「愛犬の友」編集部がまとめた『決定版 ゴールデン・リトリーバーと暮らす』には「性格」の説明に、〈従順で、利口で天賦の作業能力を備える。優しく、友好的で、自信に満ちている〉とある。
それゆえ、盲導犬、警察犬の仕事もするばかりか、高齢者や障害者と触れ合う「セラピー犬」の役割も果たしているのだ。
大型犬としては人気は不動のナンバー1。
その「優しさ」は子どもに対しても同様だそうで、前掲書には、こんな説明もある。
〈子供に対しては力を加減しながら、ときにじっとガマンしながら、包容力をもってつきあいます。手荒く歯を立てることもないし、子供を獲物に見たてて攻撃する心配もありません。むしろ、子供を危険から守ったり、異変があれば大人に知らせてくれる頼もしい存在。子守役ともいえるほどの安心感があります〉
今回の事件と比較してみて、あまりに対照的だが、では、なぜ「頼もしい」はずの犬は大事な乳児の命を奪ってしまったのか。
一体、何が引き金を引いたのか。

■恐怖、嫉妬
まず、「当該の犬が抱いた不安や恐怖が噛み付きを誘った可能性があります」と言うのは、「野村動物病院」の野村道之院長である。
「レトリバーを含め、本来は感情をコントロールできる犬でも、突発的に攻撃衝動を得る状態というのがある。これは条件が揃えば、どんな犬でも程度の差こそあれ、起こる可能性があるのです」
今回の場合、何が不安や恐怖のキッカケになったか定かではないが、「赤ちゃんは二足歩行ではなく、四足でハイハイし、時折奇声を上げたりする。変った生き物が入り込んできたら、時と場合によっては、怖がることもあるかもしれません」と言うのは、「遠藤ドッグスクール」の遠藤暁彦トレーナーだ。
「あるいは、普段自分を可愛がってくれるおじいちゃんやおばあちゃんが、今日に限っては、その生き物を可愛がる。それに嫉妬をして噛んでしまったという可能性もないことではないと思います」
とりわけ人の気持ちを察する犬だけに、負の感情にも敏感というワケなのだ。
「私が気になったのは、飼い主さんの“うちの犬は臆病で・・・”という言葉です」と、遠藤氏が続けて別の要因について指摘する。
「あくまで一般論ですが、『臆病な犬』というのは、社会性に欠ける面が多い。もしかすると、飼い主さんは可愛がる一方で、子犬の頃に身に付けるべき社会性をマスターさせることが出来なかったのではないか、とも推測できるのです。世の中には赤ん坊からお年寄りまで、さまざまな人がいて、可愛がってくれる人もいれば、そうでない人もいる。一般に社会性が低い犬は、テリトリー意識が非常に強く、そこへ赤ちゃんが入ってきたがゆえの事件だったのかもしれません」

■習性のままに
もっとも、祖父母の近所の住民に話を聞くと、「昔から複数の犬を飼い、厳しく躾けていた」、「犬についてはプロはだしで、他の飼い主にアドバイスをしていたほど」などの証言もある。
ゆえに、狂暴化とは離れたところに「引き金」を見るのは、言わずと知れた元人気歌手で現在は犬のしつけ教室「AFC」主宰。
「優良家庭犬普及協会」専務理事も務める佐良直美さんである。
「普段それほど見慣れていない、ミルクの匂いのする生き物がテリトリーに入ってきた。興味本位で思わず咥えてしまったというのが実態かもしれません」
問題は、その「場所」だという。
「レトリバーというのは、もともとイギリスで水鳥の猟犬として開発された犬。ハンターが撃った鳥を、水辺で咥えて運んでくるのが仕事で、レトリーブというのは『回収』の意味なのです。ですから、レトリバーは旧来の習性のままに、軽く噛む時も運びやすい頭を噛んだ」
それが場所が場所だけに、致命傷になってしまったとも想像しうるのだ。
さらには、今回のケースとは少し離れるが、と前置きをして、「稀に精神的に疾患をかかえた犬がこうした攻撃性を示す」(専門家)との指摘もあるのである。
元東京高検検事で、弁護士の川口克巳氏によれば、「本件でお母さんが自分の両親に厳罰を求めることはないでしょうから、当局もそれを十二分に考慮し、祖父母を重過失致死罪で立件しておいて、罰金で済ませる、あるいは不起訴にして、注射済票を着けなかったなどの、別の形式犯の罰金で済ませるといった処置になるのではないでしょうか」
と言うから、2人が重罰を受けることはなさそうだが、それにしても、この祖父母が、残りの人生に重過ぎる十字架を背負ってしまったことは間違いない。

■愛犬家への教訓
翻って、では全国に数多いるゴールデンレトリバー愛好家への教訓は何か。
専門家が口を揃えて言うのは、「どんなにレトリバーがおとなしくても、100%の安全はない」ということだ。
上記に触れた5つの「引き金」も、いずれも身近に起こりうることばかり。
先の佐良さんは、「小さな子どもがいる時は万が一のことを考えて、ケージの中に入れておくべき。いくら可愛い犬だからと言って、犬を信用し過ぎるのは厳禁です」
これを受けて前出の遠藤氏も言うのだ。
「レトリバーは、後ろ足で立てば120~130センチ程度になりますから、少なくとも小学校の3~4年生以下の子どもがいたらケージで飼うべきです。あるいは事前にお子さんの匂いの付いたタオルをかがせるなどの“準備”が必要だったのではないでしょうか。どうしても、飼い主は自分の犬に対しては甘くなってしまうのです」
愛犬ブームの一方で起きた悲劇の教訓は、犬が獣であり、凶器になりうるという、ごくごく当たり前だが、見落しがちな事実。
しかしその代償として一家が見た現実は、あまりに重いと言わざるを得ないのだ。

特集「なぜ大事な乳児を噛み殺したのか? 800万『愛犬家世帯』が慄然!従順な『レトリバー』が狂暴化する『5つの引き金』」より
「週刊新潮」2017年3月23日号 掲載


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