和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

夏の漱石文庫3冊。

2007-07-07 | Weblog
出久根達郎著「作家の値段」(講談社)をぱらぱらとめくっていたら、漱石の箇所はこうはじまっているのでした。
「2006年は、夏目漱石が『坊ちゃん』を発表してから、ちょうど百年になる。前年は『吾輩は猫である』から百年、2007年は、『野分』「虞美人草」から百年、翌年は、『三四郎』『抗夫』と、これから毎年、続く。そうして、2016年が、『明暗』執筆百年であり、漱石没後百年となる。翌年が、漱石誕生百五十年で、今世紀前半の『漱石記念年』は一応これで終了となる。」(p150)

ことほどさように、漱石は話題をさらってゆきそうであります。
ということで「夏の漱石文庫3冊」を思いついたわけです。

 「漱石の夏やすみ」高島俊男著 (ちくま文庫)
 「漱石先生の手紙」出久根達郎著(講談社文庫)
 「漱石人生論集」出久根達郎解説(講談社文芸文庫)

自分の好きな文庫を並べる楽しみ。
今年の夏はほかに

 「座右の名文」高島俊男著(文春新書)
 「読書通」谷沢永一著(学研新書)

の2冊を、自分の再読書としてあげておきたいなあ。
その「座右の名文」には漱石が登場しますが、
その「読書通」には漱石が見あたらないわけです。
ということで、谷沢永一著「執筆論」(東洋経済新報社)から
辛口の漱石を引用してみようと思ったのです。

「日本近代文学会の春季大会(51年5月15日)では・・・あらかじめ論旨のレジュメを提出しておくように求められたので・・あえて近年に出た漱石論評の書に触れ、暗に越智治雄を批判する旨を示しておいた。学会の機関誌『日本近代文学』創刊号の巻頭に論文を寄せるなど、当時は学界を睥睨(へいげい)する観もあった東京大学教養学部助教授の越智治雄が刊行した『漱石私論』(46年)の筆法は、一世を風靡するかのような勢いであったけれど、このように豆腐のうえで踊るような足許の確かでない恣意的な駄弁は学界を毒すること甚だしいと私は懸念していた。・・その時が来た。私は慎重に草稿を練ってゆく。発言時間は20分である。・・他人を批判するに際しては、堂々と後暗いところがないとばかり、適度に諧謔(ユーモア)を交えながら、できれば聴衆が吹きだすような、明かるく朗らかな気配を漂わせながら進むべきであろう。当日になった。越智治雄は病いのためせんだって入院したと聞く。本人がそこに居ようと居まいと一向に構わない。会場は満席で座れず劇場のように立っている人もいる。あとで聞くところ出席者はほぼ1000名、うち会員でない一般の参加者が七割であったとか。私は20分きっちりで壇を降りた。・・・・・・・」(p127~129)

現在は、一世を風靡した観のある「漱石私論」のたぐいは、少なくなったのでしょうか?もっとも、今大学では、文学部がなくなるかどうかの瀬戸際ということで「私論のたぐい」の駄弁どころではないのかもしれません。それにしても、漱石は漱石。ということで、この夏、空白の時間を漱石で埋めるという予定を組んでみるわけです。

余談ですが、最近グレン・グールドのCDを聞いています。
すると横井庄一郎著「『草枕』変奏曲 夏目漱石とグレン・グールド」(朔北社)という本があるではありませんか。
その「はじめに」にはこうあります。
「この人ほど『草枕』を愛読したという話をほかに聞かない。しかも日本人ではなく、外国人であり、世界的な著名人でもある。20世紀で最もユニークな天才ピアニストといえばいいのだろうか、その名をグレン・グールド(1932~1982)という。カナダに生れてカナダに没した、実に個性あふれる人物であった。彼はこの漱石の『草枕』を『20世紀の小説の最高傑作の一つ」と評価し、死に至るまで手元に置いて愛読していたのである。・・・」(p8~9)

余談の蛇足になりますが、グレン・グールドのCDをネットで検索していたら、
テレビドラマにもなった漫画「のだめカンタービレ」のベストCDにグレン・グールドが、ちゃんと入っいるようです。

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