紀野一義氏は、宮沢賢治の童話をラジオで聞いている際に、
『これが色彩と、音響と、ことばとで織りなされた幻想的な映画になったなら』
と綴っておりました。(p112 「賢治の神秘」佼成出版社・1985年)
イーハトヴ童話『注文の多い料理店』全をひらいて
序のあとにつづく童話『どんぐりと山猫』をめくっていたら、
そのオノマトペのオンパレードに、ついつい
紀野氏の『色彩と、音響と、ことばで織りなされた』という箇所が
思い浮かんできました。
はい。これは山猫の裁判の様子が童話で描かれているのですが、
ここには、オノマトペを列挙してみることに。
おかしな葉書が舞いんできたところから、はじまります。
「字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらい・・・」
「山猫のにゃあとした顔や」
「 まわりの山は、みんなたったいまできたばかりのように
うるうるもりあがって、まっ青なそらのしたにならんでいました。」
「 すきとおった風がざあっと吹くと、栗の木はばらばらと実をおとし 」
「 笛ふきの滝でした。・・滝がぴーぴー答えました。」
「 一本のぶなの木のしたに、たくさんの白いきのこが、
どってこどってこどってこと、変な楽隊をやっていました。」
「 すると、男はまたよろこんで、まるで、
顔じゅう口のようにして、にたにたにたにた笑って叫びました。」
「 そのとき、風がどうと吹いてきて 」
「 足もとでパチパチ塩のはぜるような、音をききました。」
「 草のなかに、あっちにもこっちにも、黄金いろの円いものが、
ぴかぴかひかっているのでした。」
「 こんどは鈴をがらんがらんがらんがらんと振りました。」
「 革鞭を二三べん、ひゅうぱちっ、ひゅう、ぱっちと鳴らしました。」
「 それはそれはしいんとして 」
「 鞭をひゅうぱちっ、ひゅうぱちっ、ひゅうひゅうぱちっと鳴らしました。」
はい。まるでオノマトペを聞き惚れるようなやすらぎ感。
ちなみに、新潮社文庫の「注文の多い料理店」には
「どっててどっててどっててど」とはじまる
「 月夜のでんしんばしら 」の楽譜がp325にありました。
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