和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

立ちどまってはいけません。

2018-09-11 | 詩歌
古本で
岸田衿子詩集「ソナチネの木」が
送料ともで、380円。はい。買いました。
それが届く。

青土社の詩集。
絵は安野光雅。1981年。

絵柄が茶色っぽいためか、
古本のくすみかどうか、
シミと絵柄との見分けがつかない。
うん。ひょっとすると、それを意識しての
配色だったのかなあ(笑)。
とすると、今が読み頃。

以前に
新刊で、岸田衿子詩集「あかるい日の歌」を
買ったのですが、こちらは表紙カバーもなくなり、
手垢にまみれて、臭うようになっております(笑)。
これも絵は安野光雅でした。

「ソナチネの木」をはじめて手にとりました。
こちらの詩集の方が、絵が凝っておりました(笑)。

ということで、詩を引用。

 一ぽんの木は
 ねむっているわたし
 幹は夜を吸いこんで
 梢は夢のかたちにひらく

   *


 まぶしい花火の終ったあとで
 あの人は一本の
 線香花火を とり出す
 忘れものを 思い出すために


   *

 小さい波は 語りかけるように
 わたしを とりかこむ
 大きい波は わたしから
 なにもかも うばってゆく

   *


 雪の林の奥では
 立ちどまってはいけません
 歩いていないと
 木に吸いこまれてしまうから




はい。ほぼ20年ほど前。
小学校のPTA役員をおおせつかっておりました(笑)。
部外者として立ち寄る小学校は、
私には言葉の咲きわう場所に思えました。
校長先生は、校長だよりを書いており。
各学級では、学級だよりを書いてます。
町の違う小学校にも、立ち寄らせてもらうと、
隣の小学校低学年の先生は、毎日学級だよりを
父兄に書いて配布されているのでした。

大抵の場合、そんな便りは、
最初に、わかりやすい詩が引用されていて、
あとに、便りの本題が語られていました。

うん。その詩を読むだけでも楽しかったなあ。
これを低学年の児童は、読んでいるのだろうかと思ったりして。

そうだ。思い出した。その学級では、
詩を朗読していて、家でも親の前で朗読する。
どれくらいの数が朗読で、暗唱できるかを
丁寧に、しかも楽々と試みておりました。
そんな話を、放課後の教室で、担任の先生から聞いていると、
私は、まるで別世界に紛れ込んだような気分でおりました。



それはそうと、
田村隆一の詩集「誤解」のなかに、
こんな詩があります。

   命令形    田村隆一

 ゆき 
 ゆき 
 もつと ふりなさい

 狐のような女の詩人が歌いながら
 ぼくの夜の森から出て行つたが
 この歌の命令形が好きだ

 ・・・・・・
 ・・・・・・

 人は人に命令できない
 命令形が生きるのは
 雪

 そして詩の構造の光りと闇の
 谷間にひびく
 人間の言葉


この詩には、最後に注がありました。
注によりますと、詩の最初の3行は
『岸田衿子の童謡から。』とあります。

う~ん。どの童謡にあるのか?
いまだに、知りません。


注】学級便りには
岸田衿子や田村隆一の詩は、出て来ませんでした。
コメント
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