ruruBの極楽な日々

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野田秀樹「ザ・ダイバー」

2009-08-25 02:47:46 | アート
友達Fと野田秀樹の「ザ・ダイバー」を観てきた。

池袋の芸術劇場、300人収容の小じんまりした小ホールである。

役者は大竹しのぶと野田秀樹など4人だけ。

いや~、おもしろかった。

不倫の愛憎が起こした放火殺人事件がベースなので、テーマは暗くて重い。でもそこへ源氏物語の恋愛が絡み合って来て、ストーリーは現実と平安を行ったり来たりする。
お囃子の雅な響きに扇、布が効果的に使われて、ベンチを使って空間を上手に使う工夫もされていた。ここらへん、野田秀樹の演出がすごいんだな~

大竹しのぶが不倫相手のふたりの子供を殺す狂気のOLを演じていて、天才的にうまかった。この人を好きかどうかと問われると微妙なのだが、演技はさすがだった。

あまり覚えていないが、日野殺人事件というのは実際にあった事件らしいので、帰って調べてみた。

驚いた。今日のお芝居の印象に残っているセリフは現実の事件の調書に書かれていたものとそっくり同じだったからだ。

しかもネットというのはとても残酷である。OLの実名、生い立ちから不倫相手の実際に勤めていた企業名、死んだ子たちの最期の様子、それぞれのその後まで書かれていた。

OLは無期懲役として現在も服役中。
驚いたのは、不倫相手の夫婦は離婚することもなく、その後ふたりの子供を生み育てているとのこと。そこには私たちの常識では思い及ばない何かが働いている気がした。

でもどうなのよ。
現実に生きている人たちのことを芝居にして、芝居にされたほうはどう思うかしらね。
私は芝居を観ただけなのだが、それでもなんとなく居心地の悪さや割り切れなさを感じた。

この話を取り上げた意味ってどこにあるのだろう。わからない。

それに不倫の末に殺人を犯すという犯罪自体が今の時代と微妙に空気感が違う気がした。とてもバブル的に思えて。登場人物のだれにも共感ができなかったのだ。

今は愛憎や怨恨よりも行き当たりばったりの衝動的な犯罪がふえているものね。

時代が変わって、犯罪形式だけでなく、私たち一般庶民の感情にもいつのまにか変化が起こっているということなのかしらね。

感情の湿気が薄れて来たってことかな。より演歌的でなくなってきたというか。

このお芝居をバブルのころに見ていたらもっと共感できる感情が残っていたかも、なんてふと思ったので。