グリム童話のなかの呪われた話
著者 金成 陽一
大和書房
1996年10月07日 第1刷発行
1999年2月25日 第6刷発行
1700円+税 222ページ
このシリーズは今回も面白かったので、一気に読んでしまいました。
あ、メモは面倒になって、とり忘れてしまいました。
(写真は月餅、全部で百円位だそうです。特に杏餡が美味しかった)
SALMER FRA KJOKKENET キッチン・ストーリー
満足度 ★★★★★
感動度 ★★★★★
色彩 ★★★★★
構図 ★★★☆☆
影像美 ★★★★☆
話の展開★★★★★
音楽 ★★★★☆
キャストの表情★★★★★
2003年 ノルウェー・スウェーデン 108分
監督 ベント・ハーメル
脚本 ベント・ハーメル
ヨルゲン・ベリマルク
音楽 ハンス・マティーセン
キャスト ヨアキム・カルメイヤー
トーマス・ノールシュトローム
ビョルン・フロベリー
リーネ・ブリュノルフソン
スブレエ・アンケル・オウズダル
レーフ・アンドレ 他
今回もBSジャパンです。
北欧らしい雪と糸杉(?)のユトリロを感じさせる風景が美しい。
受賞歴は
2003年 カンヌ国際映画祭監督週間出品 青少年映画賞受賞
2003年 ヨーロッパ映画際 学生賞受賞
2003年 トロムソ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞
2003年 アマンダ賞最優秀作品賞受賞
2003年 コペンハーゲン国際映画祭最優秀監督賞受賞
2003年 フランドル国際映画祭最優秀脚本賞受賞
2003年 リューベック北欧フィルム・デイズ バルト映画賞受賞
2003年 サンパウロ国際映画祭最優秀監督賞受賞
といった仰々しいまでもの 数々の受賞。
だが見ている側にとっては受賞に関係なく、ノルウェーの真っ白な空の下、冷たい空気と静かなときの流れのなかで静かに話は進んでいく。
『感動!』といったオーバーなものではなく、血流に乗って涙がしっとりとしたためられてしまう、そんな作品です。
国境、人種、年齢、仕事の義務といった制限のなかで、心の葛藤の末に禁じられた友情と絆を繰り広げていく。
北欧の素朴な暮らし、食事、心通わす会話やユーモア。
それに対して貧困、質素、物理的不足、老人と馬の病、雪や寒さ、電力問題をさりげなく織り交ぜながら、重厚な話のつくりで進められて行く。
この作品の大きな力はなんといってもキャストの魅力。
少し大げさ目の表情や仕草、声色がたまらなく魅力的。
各人の自然なメークも好きだ。
風景の『白』と『黒』、室内は『暖色系で工夫』
これは北欧の現状とつつましやかだが人間本来の生きる喜びの表現。
つるされた室内の衣類のズボン下の色は真っ白ではなく『ブルー』をかけてあるのは信用のおけない人間である彼らを除くため。
少し老人が心を開きはじめるとトマト煮込みの『赤に近いオレンジ』
二人の心を開き始めたきっかけの ゆで卵と塩は『純白の白』
初めて心を通わせたスウェーデンタバコとコーヒーといった扉は『焦げ茶色』
友情が深まってから二人ので窓を覗くシーンの顔の色は『オレンジ』
老人の顔がサンタにも見え、最後の話の『クリスマスをともに・・・』といった場面につなげてくる。
そして工作員(友人)が国境までしぶしぶキャンピング・ルーム(車付属)を運ぶ場面は空虚感の『白』
老人の家に戻った時には馬は引き取られ、トラックが去った後には救急車。家の中からはタンカが運ばれていた。このときの一連は『灰色』
ベント・ハーメル 監督は人物の心情や場面を表す場合、ことごとく色で表現されているのには感心した。
この作品でおもしろいもう一点は国同士の互いのプライドのぶつかり合い。
スウェーデンの工作員という上の立場から ノルウェーの貧しい一人暮らしの老人を監視するという いわばスウェーデンの方が上の立場に立ちたいという願望。
それに相反しての映写機の進歩の差。
映写機がうまく作動しない時も
「だからスウェーデンの製品はダメなんだ・・・」
とスウェーデンがはき捨てながらもスウェーデンとしてのプライドは高い。
スウェーデン製が学会でもたつくなか、近所のおばさんといった人が難なくノルウェー製映写機をボタンひとつで映し出してしまう。
食べ物(ビン詰めのニシンの酢漬けや缶詰ソーセージ、ハムのチーズサンドなどの簡単な料理に対してひとり暮らしの老人が一度だけ作ったトマト煮込み)
スウェーデンタバコはまずいと思っているノルウェー人。
ヨーロッパでは車はノルウェーも含めて右側通行が多いが、スウェーデンは左側通行。
「右側通行すると頭痛が起こり吐き気がする、まるで内臓が左に引き出されたようだ・・・」
の言葉はスウェーデン人の誇りと頑固さの象徴のようで印象深い。
皆さんにもお薦めしたい とても心に残る作品のひとつでした。