IO NON HO PAURA ぼくは怖くない
満足度 ★★★★★
感動度 ★★★★★+おまけ★
話の展開 ★★★★★+おまけ★
影像美 ★★★★☆
野生動物の使い方 ★★☆☆☆
構成・構図 ★★★★☆
音楽 ★★★☆☆
2003年 イタリア 109分
原作 ニコロ・アンマニーティ
脚本 ニコロ・アンマニーティ
フランチェスカ・マルチャーノ
監督 ガブリエーレ・サルヴァトーレス
キャスト
ジュゼッペ・クリスティアーノ
マッティーア・ディ・ピエッロ
アイタナ・サンチェス=ギヨン
ディーノ・アッブレーシャ
ジュリア・マットゥッロ
ディエゴ・アバタントゥオーノ
ジョルジョ・カレッチャ
ステファノ・ビアーゼ
ファビオ・テッタ
ファビオ・アントナッチ
アドリアーナ・コンセルヴァ 他
感動した…実に筋がしっかりと仕立てられている。まるで上質の靴のような作品だ。
初めは話がどう展開するのかが読めなかった。この不安定なる心地のママ話が進み、恐怖心とは裏腹に、南イタリアのまばゆいばかりの自然の明るさのアンバランスが絶妙といってよい……
10歳の少年ミケーレは偶然 廃屋の大きな穴があることに気づき、覗き込んでしまいます。
【ここでは日本の民話における『見るなの倉』や『鶴女房』と同様、『見るなのパターン』が使用されています。】
ミケーレは穴の中に恐ろしい恐怖の光景を目の当たりにします。
10歳といった大人にはなりたい、またなりたくないといった不安定気で、ミケーレもガキ大将の命令で 廃屋の細い朽ちかけた骨組身の上を歩く時も
『僕がガラスだ。落ちたら粉々になる…』
といった。
呪文によって自分の恐怖心をふき飛ばそうとします。
あの秘密の穴へと降りていくときも、
『ぼくは怖くない、ぼくは怖くない……』
と呪文を唱えることによって、恐怖心を押さえ 勇気を与えてくれます。
そしてミケーレは穴の中の少年が自分と同学年の少年であることに気づき、交流を深めていきます…。
ミケーレは穴の中の少年に懇親的にできる限りのことで接していきますが、穴の少年は実は父やその周りの大人たちが身代金目当てに誘拐を企てたことを知り、深く傷つきます。
また見知らぬ大人たちにろくに食事も与えられず穴に中にあしがせされ閉じ込められた少年は、親が助けに来てくれないのは親たちも死んだのだと信じ、恐怖心から自分は死んでいるのだと思い込んでいる程に心身ともに傷ついていました。
その重苦しさを吹き飛ばすのはバン・ゴッホのような黄金の麦畑やポピーの花や一面に広がる青い空。また黄金の畑の中に車一台が通れる位の石ころだらけの一本道。
小屋に行く途中の豚小屋のぶたたちとその家の主も子どもにとっては怖く描かれ、これらのの存在感も見逃す頃はできない。
ただ数々の野生動物 (ふくろうやミミズク、道端の蛇やかえる、ハリネズミや3回出現のバッタなど…) の使い方は構図的には満足だが、少々とってつけたようで素晴らしい作品だけに残念であった。
ただし穴の中の少年の手のそばを這うミミズと 先での飼育豚たちの使い方は見事な表現。
話は二転三転するがここからが面白い。
結構内容的にも考えさせられる部分の多い作品で、少年たちの傷ついた拭い去ることのできない『深い悲しみ』と少年同士の『共通の満足感』といった一言では表現しにくい結末……
元穴の中の命を助けられた少年は自分を殺そうとしている大人のそばにいるミケーレのところに戻り 一言、
「僕と思って彼を打ったの?」
といった言葉はあまりにも深い。
少年だと思って発砲したのはまさにミケーレの父親で、
「お前とは知らずに打ったんだ…」
といい、ミケーレを抱きかかえて泣き崩れている…
穴の少年はミケーレに向かって手を差し伸べる。
幸いミケーレは急所をはずしていたようだ。
にっこりと微笑み、
少年に向かって手を差し伸べる。
ここで……
キタ、キタ、キタ~~~
涙がこぼれんばかりにあふれ出てしまった…
【興味深い事実二点】
①この映画での
『大人と子ども』、
『陰と陽』、
『恐怖心と開放感』、
『闇と日差し』
当の比較対称は興味深い。
そして上手いと感心したのが『少年とミケーレ』の設定の違い。
『富裕層と貧困』、
『愛情不足と貧しいが愛情の感じられる家庭』
そして決定的な違いは
『透明なる少年と人間味あふれるミケーレ』
これらを考えると原作者は何を伝えたいかがおのずとわかってくるような気がいたします。
多分で読めばまた違った一面を味わうことができるのでしょうね…
②イタリアは日本と共通している面も多いのでしょうか?
『イタリア版 だるまさんが転んだ
(坊さんが屁をこいた)』
や先出の
『見るなのパターン』。
また驚いたことには
『蚊取り線香』
イタリアにも蚊取り線香ってあったんだ・・・
また『ぼくは怖くない』は恐怖映画ではないが、洋画では珍しくと思われる(?)
小泉八雲や鶴屋南北などに共通する
『風邪や空間表現、時間の流れなどの
精神面に訴える恐怖』
のテクニックが目を引いた。
全体から考えてとても満足できる感動の映画でした。