日常

東田直樹さん

2016-04-15 01:00:20 | 
東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』
(「手のひらをひらひらさせるのはなぜですか?」という質問に対して)
「これは、光を気持ちよく目の中に取り込むためです。
僕たちの見ている光は、月の光のようにやわらかく優しいものです。
そのままだと、直線的に光が目の中に飛び込んで来るので、あまりに光の粒が見え過ぎて、目が痛くなるのです。
でも、光を見ないわけにはいきません。
光は、僕たちの涙を消してくれるからです。
光を見ていると、僕たちはとても幸せなのです。
たぶん、降り注ぐ光の分子が大好きなのでしょう。
分子が僕たちを慰めてくれます。
それは、理屈では説明できません」



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東田直樹さんの、『自閉症の僕が跳びはねる理由―会話のできない中学生がつづる内なる心』エスコアール (2007/2/28)『跳びはねる思考』イースト・プレス (2014/9/5)を読んだ。
その後、『君が僕の息子について教えてくれたこと [DVD]』(2014年8月16日 NHK総合で放送)も同時に見た。










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<跳びはねる思考 Amazonより>
僕は、二十二歳の自閉症者です。人と会話することができません。
僕の口から出る言葉は、奇声や雄叫び、意味のないひとりごとです。
普段しているこだわり行動や跳びはねる姿からは、僕がこんな文章を書くとは、
誰にも想像できないでしょう。――(本文より)

著書『自閉症の僕が跳びはねる理由』の翻訳書『The Reason I Jump』が、英米でベストセラー入り! いま、世界が最も注目する日本人作家の最新刊。
人生とは、運命とは、幸せとは。
「生きる」ことの本質を、鋭く、清冽な言葉で考えつくした、驚異のエッセイ。
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■動画はYoutubeでも見れます。是非時間を作って見てほしい。
自分は特に2-3で出てくる実際の東田さんの映像が好きだ。

君が僕の息子について教えてくれたこと

どれも大変に素晴らしい作品だった。
人間、表現、美・・・、そういう根源を改めて考えさせられるものだった。




アイルランド在住の作家デイヴィッド・ミッチェルは映画「クラウドアトラス」の原作を書いた作家(素晴らしい映画!)。
映画「クラウド アトラス」(2013-11-29)

彼には自閉症の息子がいる。息子の言動の理解に苦しみ、自分の運命を呪ったこともあったという。
ただ、日本語教師もしていたミッチェル氏は東田直樹さんの著作と偶然に出会う。
自閉症の息子がなぜ床に頭を打ちつけるのか、なぜ奇声を発するのか・・・

その一つの解答を、東田さんのテキストを通して息子の言葉として受け取った。ミッチェル氏はみんなに伝えるため、その本を英訳する。

The Reason I Jump」(日本題:「自閉症の僕が跳びはねる理由」)という本は世界20カ国以上で翻訳されることになった。
アイルランドでの日本の作家と言えば、Murakami Haruki, Mishima Yukio, Higashida Naoki、、、となるほど有名、とのことだ。



NHKのドキュメンタリーは、そうしたミッチェル氏と東田さんの交流も映像に写したもの。
とても心を動かされるものだった。




あらゆるものが内なるコトバを秘めている。

大切なのは通路だ。
コトバは通路を介して移動する。
通路さえあれば、意味が分からなくとも暗号として、コトバは伝わる。
日本語や英語のような確立した言語体系ではなく、固有のコトバを発している人たちがいる
飛び跳ねること、大声をあげること、、、それはすべて彼らの身体言語だ。それは広義のコトバ。


自分は医療の世界で体を専門にしている。
体を毎日色々な角度から見ていると、体自体が固有のコトバを持っていて、常に何か表現していることに気づく。
胸が痛い、めまいがする、下痢をする、、、体は一瞬一瞬表現し続けていて、それをコトバと捉えて受けとるかどうかで、コミュニケーションの通路が開かれるかどうかも決まる。
体は内なる自然だから、自然界の植物や花が発するコトバも同じようなもの。否応なく敏感になる。



東田さんのテキストを夜中に読んでいると、彼の言動や思いが一塊となり時空を超えて伝わってきて、感動する。


東田さんのコトバ、金澤翔子さんの書道、居川晶子さんの孔雀の絵、アウトサイダーアート(アールブリュット)の芸術で感動するのは、彼らが障碍を持つ人だから、ということに本質があるわけではない。
金澤翔子 書画展(2015-12-21)
居川晶子さん御家族(2015-11-03)
「アール・ブリュット・ジャポネ展」(2011-04-24)


彼らや彼女らは、一般的な教育システムに入ることを拒絶された。
融通の効かない現代の教育システムからは、規格外の存在は否応なくはじかれてしまう。

ただ、通常の画一的な教育システムに入らなかったからこそ、自分たちのコトバや表現を探し出す必要に迫られた。
短期的には不幸に見えても、長期的に別の角度から見ると幸運でもあった。
誰かのコピーではない自分自身の深いコトバの鉱脈を掘り出さざるを得なかった。
そして、結果的に内なる鉱脈へと到達した。
その全体のプロセスにこそ、僕らは感動しているのだろう。

誰のものでもない自分のコトバを話しているという事実に。
向かい風を追い風に逆転させて、人生を真っすぐ生きているという事実に。


人は、自分自身のコトバを発するようになると、極めてシンプルで素直になるらしい。
そんな東田さんの素直なコトバに、何か原始的な生命記憶が揺り動かされるみたいだ。

いまだ発するコトバを持たなかった、幼少期。
言葉を覚えて何かこの世界が分かった気になる前の、幼少期。
すべてが未知の世界で、何も分からず、何も分かった気にならなかった幼少期。
驚きと感動に満ちた幼少期の日常の世界に、東田さんのコトバが連れて行ってくれる。

何かに美しさを感じると言う事は、赤ん坊の時、幼少期の時、、、、自分が初めて光や水や風と出会ったときの驚きの瞬間に立ち返り続ける、ということだと思う。


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●東田直樹『君が僕の息子について教えてくれたこと』
「僕はきれいな桜を長く見続けることができません。
それは桜の美しさがわからないからではありません。

桜を見ていると、なんだか胸がいっぱいになってしまうのです。

繰り返す波のように、心がざわざわとかき乱されてしまいます。

その理由は感動しているせいなのか
居心地の悪さからくるものなのか
自分でもよくわかりません。

わかっているのは僕が桜を大好きだということです。」
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●東田直樹『君が僕の息子について教えてくれたこと』
「絵の具で色を塗っている時、僕は色そのものなります。
目で見ている色になりきってしまうのです。

筆で色を塗っているのに
画用紙の上を、自分が縦横無尽にかけめぐっている感覚に浸ります。

物はすべて美しさをもっています。

僕たちはその美しさを
自分のことのように
喜ぶことができるのです。」
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●東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』
「僕は飛び跳ねているとき
気持ちは空にむかっています。

空に吸い込まれてしまいたい思いが
僕の心をゆさぶるのです。

空らに向って体が揺れ動くのは
そのまま鳥になって
どこか遠くへ飛んでいきたい気持ちになるからだと思います。

どこか遠くの青い空の下で
僕は思いっきり羽ばたきたいのです。」
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●東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』
「そばにいてくれる人は、どうか僕たちのことで悩まないでください。
自分が辛いのは我慢できます。
しかし、自分がいることで周りを不幸にしていることには僕らは耐えられないのです。
思いはみんなと同じなのに、
それを伝える方法が見つからないのです。」
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●東田直樹『自閉症の僕が跳びはねる理由』
(「どうして水の中が好きなのですか?」という質問に対して)
「僕らは帰りたいのです。
ずっとずっと昔に、人がまだ存在しなかった大昔に。
自閉症の人たちは、僕と同じようにそう考えていると思います。
生物が生まれて進化して、なぜ陸に上がって来たのか、人になって時間に追われる生活をどうして選んだのか、僕には分かりません。
水の中にいれば、静かで自由で幸せです。
誰からも干渉されず、そこには自分が望むだけの時間があるのです」
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●東田直樹『君が僕の息子について教えてくれたこと』
「自由の女神を見たときに
自分もこんな風に
空に向かってまっすぐに
生きて行きたいと思いました。」
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●東田直樹『跳びはねる思考』
「人をみかけたら「こんにちは」を言うだけのどこが難しいのか、みんなは不思議に感じるでしょう。

僕には、人が見えていないのです。

人も風景の一部となって、僕の目に飛び込んでくるからです。
山も木も建物も鳥も、全てのものが一斉に、僕に話しかけてくる感じなのです。
それら全てを相手にすることはもちろんできませんから、その時、一番関心のあるものに心を動かされます。

引き寄せられるように、僕とそのものとの対話が始まるのです。
それは、言葉による会話ではありませんが、存在同士が重なり合うような融合する快感です。」
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「人生にとって重要な学びはふたつあるのではないでしょうか。
ひとつ目は、勉強をして、考える力を身につけること。
ふたつ目は、自分の幸せに気付くことです。
外から知識を吸収するだけでなく、自分の内面を豊かにするのも大事なことだからです。」
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「自己の確立というのは、人とのつながりの中で育つものではなく、
自分で自分のことを支えようとする生き方から、生まれるものだと思っています。」
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東田直樹オフィシャルサイト

君が僕の息子について教えてくれたこと(動画)