うさとmother-pearl

目指せ道楽三昧高等遊民的日常

アッカンベー その4

2006年01月24日 | ことばを巡る色色
アッカンベー その1 
アッカンベー その2 
アッカンベー その3 

姫は今日も解読にいそしんでいた。
何だろう、この文字のようなものは。
@というのだけが花の茎のようにも見える。
数々の埃くさい古文書を調べてみたが、
「人と人をつなぐ線に使ったもの」
と書かれているだけで、どうも要領を得ない。

今日も、図書室で本を繰っていると、
あの子が書架の横に立っていた。
「ねえ、あなた。私はあなたのくれた文字の意味を調べているわ。
いったいあれは何の呪文。どうやったらあなたとお話をする線が繋がるの」

あの子は、アッカンベーをしようとした手を止めて、
今度は紙包みを投げてよこした。
放物線を描いて飛んでくる大きな紙つぶてを、
姫は背伸びをして受け止めた。
広げてみると机いっぱいはあるような紙に、
銀色の塊が包まれていた。

宝石箱のようだけれど、花やら鳥やらの装飾はない。
姫はこんなに、固い冷たい箱を見たことがなかった。
姫の知っている「箱」は、森の木を伐り出して作られたものだけだったから。
あの子に、聞こうと思って顔を上げたが、やはり、あの子の姿は見えなかった。
姫はなんだか恐ろしくなり、机の上にそれをそっと置いた。

すると、箱が身をよじらせて、
りりん
と鳴いた。

姫は意を決して、箱をそおっと開けてみた。

「ケータイも知らないなんて、だから姫って、アッカンベーなのよ。」

という文字が浮かんでいた。
どうも、これは手紙を送る箱のようだ。
何とか言ってやりたい。私は姫なのに、これでは言われっぱなしだわ。
姫は箱についているボッチをいろいろと押してみた。

「あわわ はか まま なまなま らららら ばかばか ぱらなざざざざざ あららら」  ー送信ー
もう、泣きたくなってきた。

しかし、ちゃんとお返事は来た。
「マニュアルを第三書架の2段目に置いたわ。勉強してね。
わたしは akan。
姫、あなたの名は何」

姫は戸惑った。姫は姫だ。
姫であることを疑ったことはない。
こうして名を尋ねられたこともない。
でも、私の名は何?    つづく

うさとより、 じれったくってごめんね。
コメント (16)
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