うさとmother-pearl

目指せ道楽三昧高等遊民的日常

ロンダリング

2006年02月25日 | ことばを巡る色色
ある日突然、ブログが書けなくなってしまった。
事件が起こったからだ。事件はまだ続いている。わたしはブラックな情報の網目を漂い彷徨い、新聞を読み、雑誌を読み、何が起こっているのかを知ろうとした。そこにはわたしが今まで触れたことのないような事実や虚偽が溢れかえっていて、わたしはその中で溺れている。
わたしたちが受け取る情報はロンダリングされている。洗われる前の情報を誰も日の下で語らない。しかし、声に出されぬ情報は、ログに刻まれ、黒い口を開けて晒されるのを待っている。ネットの暗い穴の中に、人は大声で叫ぶ。そうだよ、王さまの耳はロバの耳だよ。君には見えないのかい、王冠がぷっくりと持ち上がっているのが。
なぜ、わたしは知りたがっているのだろう。この深い穴の底にあるものを。なぜ、見たがっているのだろう。こんなに怖がっているのに。ロバの耳だからといってどうなんだ、ウサギの耳もロバの耳も、聞こえさえすればいいじゃないか。いや、耳がなくったって構わない。だのに、ロバの耳だと騒ぎ立てる。だって、ほら、ロバの耳なんだよ。きっと、違った音が聞こえているんだよと指をさす。そうして、わたしも、「ロバの耳だ」と小声でつぶやく。

人はジクジクとした傷を持って生きている。いつまでも乾かない、かさぶたのはらない傷だ。だのに、他人の傷を告発する。ほら、こんなところに傷があるんだよ。みんな来てごらん。見てごらん。
なぜ、人はそう囁きたくなってしまうんだろう。なぜ、自己承認と他者批判は表裏となってしまっているんだろう。守ることが攻め立てることにすりかわってしまうのはなぜなんだろう。

後ろ暗いところは、ざぶざぶ洗ってロンダリング。出自、育ち、学歴、刑罰、障碍、金儲け、家庭、情事、取引。
しかし、ロンダリングしたいと思う自分を作っているのは、ロンダリングしたい自分であり、その後ろ暗さの中でつくられた自分からは逃れられない。逃げても洗っても消しても、逃げたい自分洗いたい自分消したい自分、が、自分であるのだ。ロバの耳を持っているからこそ、王様になったのだ、ロバの耳だからこそ王冠でそれを隠したのだ。大声で抗議しようと、絶交しようと、ホテルで切りつけようと、それは洗い流したい自分なのだ。

人の不幸は、洗い流したい自分にもかかわらず、他者を指差す「業」にある。罪深い生き物だ。

やはり、わたしはそのふかいそこをしりたい。なぜ人は、私は、こんなにも罪深いのかを知りたい。知恵が足りないのか、経験が足りないのか、『愛』が足りないのか、神が足りないのか。何があれば、人は、私は、この罪深さを飲み込むことができるのか。私は何を語れば、この罪から私と人を引き上げることができるのか。

ゆっくりゆっくり眼を閉じて聞こう。ゆっくりゆっくり眼を開けて見よう。ここに立って。けして後ずさりせず。

事件はまだ、終わっていない。真っ黒な重い液体を、どくどくと飲むのだ。時が経っても忘れず、顛末を見続けるのだ。
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アッカンベー その7

2006年02月23日 | ことばを巡る色色
アッカンベー その6

姫の毎日はあわただしく動いていた。父王は、そのまた父から王位を受け取っただけののんきな人だったので、自分が「フツウ」の人になってしまうということがよくわかっていなかった。元王ということで、領地が落ち着くまでの間、城の高い塔の中ほどに幽閉されることになった。
姫は、多くのメールを受け取った。

受信「姫(失礼しました、つい慣れているもので。もう姫でいらっしゃるわけではありませんでしたね)お洋服のご注文が宙ぶらりんになっております。どうなさいますか。もちろん代金さえお支払いただければ、いつでもつくらせていただきます」
受信「姫(ほかにどのようにお呼びしたらいいのかわからず、こうお呼びすることをお許しください)先月のお支払が滞っております。お支払いただけないようですと、恐れながら、訴訟ということになってしまいます。どうぞ、お急ぎ、お支払ください」
受信「姫、わたしは領地の住人です。わたしたちは王の治世で貧しいながらも穏やかに暮らしておりました。これからは、新しい王がいらっしゃるようですが、不安です。なぜ、このようなことになってしまったのでしょう。住民の不安を姫はどう考えていらっしゃいますか」
受信「姫、あんたたちがのんびり過ごしている間に、この国は敵対勢力に目をつけられてしまった。いったいこの国は、この先どうなるんだ。領民はみんな脱出の準備をしている。この責任、どう取ってくれるんだ。」

「hime」あてに来るメールもあった。
受信「hime、お城では大変なことになってしまっているようですね。himeは無事ですか。でも、王さまも、王一族も、敵対勢力を考えもしなかったのだから、この国がこうなってしまったのも、しようのないことかもしれません。himeも、お城なんて出て、城下にいらっしゃいよ」

姫は、これだけは自分のものとしてもよいだろうという、わずかばかりの本と服と身の回りのものをトランクに詰めていた。
「わたくしは、何にも知らなかった。知っていると思ったもの、持っていると思ったものは、幻だったのかもしれない。わたくしが本当に考え深かったなら、この国を違う方向に持っていけたかもしれないのに。」トマトのようだった唇は強くかみ締めすぎて、ひび割れていた。けして泣くまいと思ったのに、トランクの中に一粒涙がこぼれた。

「姫、はじめまして」

その聞き覚えのない声に、姫は涙を気取られぬよう注意しながら振り返った。

「はじめまして、姫。わたしがこれからこの国を治めるhokanです。おや、ご旅行ですか。まあ、姫にとってもあわただしい日々でしたでしょうから、短い旅などもよいかもしれませんね。しかし、必ず、またここに帰ってきてくださいよ。『城』に『姫』は付き物です。お待ちしておりますよ。」
青年は、姫に城に居ろという、その意味は何だろう、それより、なぜ、この年若い人がこの国の新王となることができたのだろう。疑問はたくさんたくさんわいてきた。この国は、これから彼の思うままなのだ。何かを「姫」として言わなければならないと思いながらも、何をどう聞いていいのか姫には思いつかなかった。青年は、akanと同じ白い上着を着ていた。同じ国からきたのだろうか、と姫はぼんやり考えていた。

「新しき王hokanさん、はじめまして。わたくしが、この国の『姫』です。よろしくお願いいたします。私は父同様、城を追われるべきものです。ですから、城に居ても、私にはもう、何の役目もないはずです。どうぞ、あなたの思惑をお聞かせください。」

「姫、僕は王でも王子でもありませんよ。僕は単にこの国を買っただけです。貧しさの中でも懸命に働く住民たちを先ほど見せていただきました。いい買い物、安い買い物をしたと満足しています。いくつかの商いをしてきましたが、いつかは『国』を手に入れたいと思っていましたから、それが実現し、しかも、『姫』まで付いてきた。買おうとしなかった他の奴らは馬鹿ですよ。あなたは、『姫』をやってくださればいい。それで、国にも箔がつくってものです。僕はこれからいくつもの国を手に入れる。これはほんの一歩目です。手に入れた城で、あなたがまた『姫』として領民の前で手を振ってください。きっと領民は国が買収されたなどということは忘れ、美しい姫の民であることに熱狂するでしょう。そう、僕は経営者で、姫はビジネスパートナーってことですよ。」

青年はうれしそうに笑った。きっと、前にはだかる者があるのなら、躊躇せず切り捨てていくのだろうなと思わせる冷たい眼をしていた。そうして、自らが斬りつけた者の下敷きになったスミレを、そっと起こしてやるのだろうなと思わせるような、悲しい眼をしていた。
冷たい眼と悲しい眼を一緒に持っている人を、姫ははじめて見た。
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叱責アンダーグラウンド

2006年02月16日 | ことばを巡る色色
もう、何日も何日も
地下にもぐっている。
そこは腐海のようだ。
胞子がたくさん飛び交っていて、息ができない。前が見えない。粒子だけが流れていく。

続きを書こうと思うんだけれど、なかなか書けない。
つまりは、地下の世界がわたしの免疫系を刺激しているってこと。
飲み込んで、
異物とするのか否かを判断して、戦って、新しく免疫系をリストラクト。
タミフルなんて飲まないよ。
だって、
だって、
本当は楽しいんだもん。
だって、
昔はそんな芝居をしたこともあった
だから、
アンダーグラウンドって、古巣みたいなんだもん

あんまりもぐっているので、
友に叱られた。
いつも月夜だとは思うなよ、ということもあるのだとさ。

さあ、にがいおくすりをつくらう

しりたいのだ
ひとのこころのおくのくらいへやの
でも そこにひかりをともす器があるのかどうかを
わたしのこころのしめった しかし くさいっぽんはえていないところにたねをまくことができるかどうかを
金でかえぬものがそこにあるのかどうかを
しんじたいのさ しんじたいのだ しんじているのだ

詳細はまた後日。
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アッカンベー その6

2006年02月09日 | ことばを巡る色色
アッカンベー その5 

あれからhimeは、少しだけお友達ができた。
好きな花のお話とか、食べ物のお話とか、髪型のお話とか、どうでもいいことなんだけれど、そんなお話をしているとhimeは、自分が「姫」ではなくなったようで、楽しかったのだ。

-受信-「hime、あなたはお城に住んでいるということだけれど、お城でどんなお仕事をしているんですか。私は町外れに住んでいるので、お城には一度も入ったことがありません。お城はさぞかし、光り輝くものでいっぱいなんでしょうね。」

-受信-「hime、あなたの住んでいるお城に、王様一家がいらっしゃいますが、王様たちはどんな生活をしているんでしょうか。うちの母は、今日も朝のパートと昼のパートと夜のパートに出かけていきました。himeを雇っている王様や、姫様は働いているんでしょうか」

「働く」 姫はこれまでその意味を「過ごす」ということと同じだと思っていた。「お金」というものも「引換カード」のようなものだと思っていたし、「蓄える」ということも、蔵にある物の位置を変える程度にしか思っていなかった。世の中の人々は、このカードによって、忙しく働かなければならないらしい。強いカードをたくさん集めると、「バトル」に勝てるらしく、人生のほとんどの時間を費やしてこれを収集するらしい、ということを知った。
また、「収集」によりバトルを行える人は余裕のある人で、過半数の人は、毎日の食べ物に交換するだけで、カードをくるくると交換しているだけだということも知った。

姫は久しぶりに、「姫」の名で、akanにメールを打ってみた。姫が携帯を使うようになって、akanはぷっつりと現れなくなっていたのだ。
「akanさん。ご無沙汰をしています。姫です。あなたのおかげでいろいろな人とお友達になれました。本当にありがとう。城下の人たちが、毎日の生活に走り回っているということもわかりました。私が、そういうカードを持っていないのに、ゆっくりと生活できていることも知りました。私は恥ずかしくなりました。働いていないのに、私はたくさんの物を持ち、使い、暮らしています。そんな、無駄使い者のわたしを、akanは軽蔑して、アッカンベーをしたんでしょうか。教えてください。私は私が姫であることを恥ずべきなんでしょうか。」 -送信ー

-返信-「久しぶりですね、姫。私は、働かず贅沢な生活をしているのに、ほこらしやかに暮らしている姫を軽蔑してアッカンベーをしていたのではありません。むしろ、その逆です。なんてうらやましいんでしょう、って思っています。働かず、花や、山を見て暮らすのは人の理想の生活です。そんな自分に疑問も恥も持たず生きているのは、万人の憧れの生活です。だから、人はそれを手に入れようとより強いカードを手に入れようとあくせくし、その中で自分をなくしたり、自分を磨いたりして人生を終わっていく。姫はそれを持っていた。だから、私は悔しくってアッカンベーをしたんですよ。」

姫は、褒められているのか、けなされているのかわからなくなってしまった。
私の生活は、自分では気がつかなかったけれど、「万人の憧れ」であったらしい。できることなら、人は働かず、贅沢な生活をしたいものらしい。しかし、私は何の苦もなくそれを持っていた。「姫」というカードには、本当の私の絵が描いてあるのだろうか。「姫」という文字がかいてあるだけで、それは「私」ではないのではないだろうか。

と、姫が哲学的な思考に頭を悩ませていると、城のそこかしこからざわめきが響いてきた。
そうして、ジイが、ここ何年も見たことがないような全速力で、姫のもとへとやってきた。

「姫、大事でございます。皇帝様が王様を廃位なさるとの勅令をお出しになりました。」

え、廃位?それってクビってこと?お父様が王位からリストラされたってこと?     つづく
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ボクノスキナホリエモン

2006年02月05日 | ことばを巡る色色
ホリエモンが塀の中に入り、私はちょっと自分がさびしがっていることに気づいた。嫌いじゃなかったんだって気づいた。「カイテン、カイテン」と言わなくなったテレビも、お祭りが終わった後みたいだし。その不器用っぽさが嫌いじゃなかったんだろうな。なんだか急いでるかんじ、えらぶってるのに、自分の駄目さを自分であざ笑ってるかんじが嫌いじゃなかったんだろうな。
ずっと、ひょっとしたら、オンザエッヂの頃から、「光クラブ」みたいだなあって思ってた。でも、そう言うと本当に「光クラブ」みたいになってしまいそうで、縁起悪いなって言わなかった。そういう意味でも、「光クラブみたいだと言いたくなかった」って意味でも、嫌いじゃなかったんだろうな。自分が「道化」のようだと思いながら、そうでないと思いながら、そうかもしれないと思いながら、くるくる回っている彼が、妙に正直そうだなあって思ったのだ。違法すれすれと言うなら、「法」こそが変えられるべきであると思うし、「金がすべて」と言ってみるのも、ある意味かわいらしいっておもっていたんだろう。

私は、こっそりニュースサイトを読んでいる。特に、まなめはうすさんのニュースサイトは、まなめはうすさんのコメントがとてもスキで、お世話になっている。
(ちなみに私は、こっそり、http://d.hatena.ne.jp/kiwofusi/さんや、http://sinseihikikomori.bblog.jp/さんのファンである。こっそり読んでは、頭の中の言葉の膠着を攪拌している。何も、こっそりすることでもないのだけどね。)
実は、この10数日、まなめはうすさんのところに貼り付けてあったサイトから、いろいろなサイトに飛び、今回の逮捕劇、その他に関する記事を読んだ。そうして、どっぷりつかってしまった。今、息を吐けばそれは灰色っぽいことだろう。そのおかげで、なかなか記事も書けず、昨日のアクセス数は、見たこともないような数字にへこんでいました。
インサイダー情報やら、ロンダリング、アングラマネー、宗教、ほにゃらら、R⇔L、政界、財界、分割、アジア
今まで私が読んできたものは、日の当たる情報だったのだなっと思った。当然、すべてが真実とは思わないけれど、こういうものも、きっと私はこれから読んでいくのだろう。
その意味は、
なんだろう。
しかし、私はやっぱり知り尽くすことを、昨日も今日も明日も、100年前も今日も100年先も渇望しているのだ。
最近bookmarkしたところ(よい子は目をあわさぬようにして通り過ぎましょう)
http://critic2.exblog.jp/ http://hetareguma.cool.ne.jp/index.html http://www.nikaidou.com/index.html http://kikko.cocolog-nifty.com/kikko/  http://straydog.way-nifty.com/yamaokashunsuke/ http://gekkankiroku.cocolog-nifty.com/edit/

えっと、それから、ホワイトバンドの収支ってどうなったんだろう。みんな忘れてない?私は気になってる。

ごめんね、姫、akan。ちゃんと続きを書くからダークサイトにいる私を許してね。
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