うさとmother-pearl

目指せ道楽三昧高等遊民的日常

井上尚弥に捧ぐ

2023年12月26日 | ことばを巡る色色
試合が始まった。
前の試合の時に書いたもの。今度も試合を見られる幸せを感じながら、王者に捧ぐ

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昨夜、井上尚弥の試合を見た。地上波で放映されないのは、日本国民にとっては残念だけど、何はともあれリアルタイムで見せてくれたLeminoさん、ありがとうございます。
ボクシングの王者は昨夜もやはり、王者の試合であった。
王者の仕事は「時の支配」であり、「場の支配」である。多くの人は、対戦相手を支配することと思っているかもしれないが、王者は人に勝とうとしているのではない。であるからこそ、王者は王者であるのだ。藤井君しかり、平野君しかり、である。人に勝とうと思っている人は結局、人との戦いの中でしか戦えない。王者が時と場とに戦いを挑んでいるからこそ、私を惹きつける。気負いなく見つめ、先を読み、狙いをすますこと。浄らかな戦いを見ることは人としてこの上ない喜びであり、またその時を味わいたくて戦いを見に行くのだ。
昨夜もそんな戦いであった。

2年前に思っていたこと、同じ思いを昨夜も味わわせてくれたのは、やはり彼が王者であるからだ。お帰りなさい。

「理解と一打」  2021-06-16 
https://blog.goo.ne.jp/admin/editentry/?eid=3ae1a68f654ba2a74efe41d1ffd095fe&sc=c2VhcmNoX3R5cGU9MCZsaW1pdD0xMCZzb3J0PWRlc2MmY2F0ZWdvcnlfaWQ9JnltZD0mcD01

20日がもうすぐやってくる。井上尚弥の試合だ。
ずいぶん前、彼の試合を始めて見た時の衝撃は忘れられない。それまで、ボクシングというのは、打って打って相手にダメージを与え、攻め続けて決着をつけるものだと思っていた。その時の彼は相手を追い詰めて、一瞬時が止まったように、少し笑みを浮かべてパンチを出した。「ああ、笑っている」と思った。それは相手を(見切った)ということなんだなと、初めて分かった。間合いと距離を測りながら、ちょっと相手にたたかせたりしながら、最適の瞬間、最適の位置を見切った時、相手を仕留める。見切ることは相手を深く理解することだ。
その時から、彼以外のボクシングの試合がつまらないものに見えてしまっている。
戦いは、血みどろの力任せのものではないのだ。最もダメージの少ない静かな一瞬を見切ることが大切だ。相手と対峙し、相手を知り、受け入れ、後にも先にもない一瞬を見極める。その戦いは美しい。相手の時間と距離を自分の中に取り入れながら、自分を失わず相手を打つ。
そうだね、戦いは、自分の強さを誇示することではない。軽いフットワークで相手を見つめ、ちょっとぶつかったりしながらも決定打を食らうのを避け、相手を的確に知った者だけが勝者となるのだね。それは、日々の戦いとも共通している。
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秋に巡る

2023年12月05日 | ことばを巡る色色
秋の繁忙期が過ぎて、ちょっとだけ、浴びに行く。



まずは高山の日下部民藝館の落合氏の展示。民藝や古いお家でやろうとすると、結局こうなってしまうのかな。既視感のあるものが多かった。AIの答える仏像というものが見たくて行ったのだけど、それは端正なお方ではあったが。仏はやはり人の頭の中に描くものであるのだろう。日下部民藝館。その昔の民芸運動というものは、幾分お大尽の、君たちのことも私にはわかるのだという趣味的なものであったのだろう。再発見されなくとも民藝はそこにあり続けているのであり、滅びるものも滅びぬものもまた、民藝であり続けるはずだからね。

金沢の国民文化祭に伴う特別展にぎりぎり駆けつける。若冲は二つしか来ていなかったけど、天皇さんにささげられた数々の宝物を見た。兼六園あたりはさまざまに博物館美術館があるということを初めて知った。石川県立美術館の常設で鴨居玲を見れたのも、国立工芸館が隣に移設されているのを知れたのもよかった。特別展のない時にまた国立工芸館に行こうと決めた。


加賀前田家成巽閣に行ってみた。殿様の、お姫様の、御台所様の、貴族様のお宅は立派だけど、どこかかわいらしくて、寒い広いお家だ。家を背負うということはきっととてもとても寒いことなのだろう。




かっこいいのが建ってるじゃんと、建物に惹かれ西田幾多郎記念館に行く。なんだか楽し哲学。




安藤忠雄氏のらせんの建物は、実際、哲学だった。思いがけず、静かな建物の中で哲学の色々を読むのはいいね。こんなこともあるから無計画の旅は面白し。

渡世のいろいろに、スポイトできゅーっとバイタル的なものを吸われている状態のわたし。立ち上がろう。俯かず背中を伸ばして少し先を見よう、と思う。
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