urt's nest

ミステリとかロックとかお笑いとかサッカーのこと。

中田薫構成/中筋純撮影『廃墟彷徨』ぶんか社文庫

2006年08月03日 | reading
ネタバレ特になし。 文庫サイズの廃墟写真集。俺が買わずに誰が買うというのか。ぶんか社に電話注文したっつの。搬入時間かかり過ぎやねん。 で、中田薫って人が写真選んでコメントつけてんだけど、はっきり言ってジャマくさい。この人、ネタ的、アドベンチャー的な廃墟愛好者やと思うね。僕はあまり相容れません。自身の言葉を借りれば廃墟の「臭い」を、軽薄なコメントで邪魔してると思うよ(なにこのマジコメント)。なぜか . . . 本文を読む

山田正紀『風水火那子の冒険』光文社文庫

2006年07月31日 | reading
ネタバレ一応注意。 流浪のアルバイト探偵、風水火那子のシリーズ短編集。四編収録で、どれもシチュエーションが抜群に面白い。「サマータイム」は夏の終わりの海の家での殺人。その日の内に取り壊されてしまう「現場」がある内に、事件は解決されなければならない…というもの。「麺とスープと殺人と」はラーメン・テーマパークで起きた殺人事件。実はこの辺はまだまだ序の口で、「ハブ」では爆薬の仕掛けられたバスの中でのア . . . 本文を読む

城平京『名探偵に薔薇を』創元推理文庫

2006年07月30日 | reading
ネタバレ注意。 なんだこのカッコつけた文章! 《街は不夜とはいえ、場所によっては先見えぬ澱みがあり、時によっては人寄らぬ風穴がある。(中略)たとえ煌々と明かり射し、騒々しく人の満つる所であっても、その気になれば懐に刃呑み、知れず死をもたらすこと困難ではない。街とはそういうものである。三橋は自分でも神経質とは思いながらタクシーに乗った。》(59p) 単にタクシー乗るだけの描写に、これだけスカし . . . 本文を読む

北森鴻『緋友禅 旗師・冬狐堂』文春文庫

2006年07月26日 | reading
ネタバレ一応注意。 固定の店舗を持たない骨董商=旗師。虚実入り混じる骨董の世界を独り駆ける美貌の女旗師、「冬狐堂」こと宇佐美陶子のシリーズ中短編集。 『狐罠』『狐闇』の長編では、「長さ」を生かした重層的なプロット、伏線運びの上手さが際立っていたので、短編という形が馴染むのかどうか、興味深く読みました。 どの話でも、題材・プロットの卓抜は見えますが、結末に至る推理や話運びはやはり性急の感を拭えませ . . . 本文を読む

井上雅彦『異形博覧会』角川ホラー文庫

2006年07月24日 | reading
ネタバレ一応注意。 「怪奇幻想短編集」はこの作家の本領だけあって、粒揃いです。ショートショートでも、ミュータントものでも、モダン・ホラーでもノスタルジックなものでも…気品のある文章と奇想・アイデアが噛み合った、高品質の作品集です。 ホラー短編では「エイプリル・グール」が良かった。幻想本格として『霧越邸』に次ぐ成果と評価している『竹馬男の犯罪』の作者だけあって、ミステリ的な驚きが土着的なスプラッタ . . . 本文を読む

森博嗣『ウェブ日記レプリカの使途 I Say Essay Everyday』幻冬舎文庫

2006年07月23日 | reading
ネタバレ特になし。 「思考と生活」シリーズ(だっけ?)の第四弾。既読だったらどうしようとずっと不安を抱えつつ読んでいたのですがどうやら大丈夫だったみたい。昔は新刊すぐ読んでたからそんなこともなかったんだけど、最近は記憶が曖昧だわ…。 で、以下所感を列挙。 ・幻冬舎文庫、手垢つきまくりでムカつく。 ・MORI LOG Academyに比してフレンドリィな文章が懐かしくなりました(にこにこ)。 ・ . . . 本文を読む

多田文明『ついていったらこうなった』彩図社

2006年07月22日 | reading
ネタバレ特になし。 たまにはこんなの読んでもいいじゃない。 キャッチセールスに自分から引っ掛かりに行くルポルタージュ…のハズだったのですが、どうやらこの人、ナチュラルに騙されてるw。普通に携帯の契約させられてるし、結婚相談所には入会してるし、文○社商法にカモられてるし(泣ける)、悪徳プロダクションにもしっかり所属しちゃってるぢゃん! てかね、エキストラとフリーライタを兼任して(それってつまりプー . . . 本文を読む

松尾由美『安楽椅子探偵アーチー』創元推理文庫

2006年07月21日 | reading
ネタバレ注意。 これミステリーランドで書かせりゃよかったのにな…松尾由美にその予定はないのでしょうか。講談社でも出してるやろ(…まああんまり売れてへんのかも)。 「安楽椅子そのものが探偵」という、素っ頓狂な設定を取り入れたアームチェア・デテクティブ連作。「日常の謎」を基調に、物語の大枠には「安楽椅子探偵」アーチーをめぐる因縁の活劇的な要素もあり。端的に面白かったです。特に冒頭「首なし宇宙人の謎」 . . . 本文を読む

都筑道夫『都筑道夫コレクション《本格推理篇》 七十五羽の烏』光文社文庫

2006年07月19日 | reading
ネタバレ一応注意。 表題の長編と、代表三シリーズの短編を収録。 表題作に関して。章題に小見出しを付ける手法は倉知淳『星降り山荘の殺人』の源流だし、ミステリとしてのプロットにも評価するべき点があるのだと思う(この長編好きなのは西澤保彦だったっけな)。しかしぶっちゃけ、独特の文章があまりにも読み難くて、評価するまでに至りませんでした。なんとか読みきった、という感じ…読み手としての力量が足りなかったで . . . 本文を読む

滝本竜彦『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』角川文庫

2006年07月18日 | reading
ネタバレ注意。 もっとブッ飛んだ話を期待していたんだけど、そうでもなかった。いや、設定――《平凡な高校生・山本陽介の前に現れたセーラー服の美少女・雪崎絵理。彼女が夜な夜な戦うのは、チェーンソーを振り回す不死身の男。何のために戦っているのかわからない。が、とにかく奴を倒さなければ世界に希望はない。》――じたいは充分ブッ飛んでるんだけどね。 でも俺が読みたかったのは、「ファウスト」掲載作などで見せた . . . 本文を読む

恩田陸編/木原浩勝+中山市朗著『新耳袋コレクション 恩田陸編』メディアファクトリー

2006年07月14日 | reading
ネタバレ特になし。 外出中どうにも手持ち無沙汰になったので、予定を外して購読してしまいましたとさ。 「新耳袋」のシリーズは初めて読みました。全部聞き取りからってことで、変に「作った感」がなく、完成度の低さが妙に怖かったり、オチがつかないままで放り出されるのが「奇妙な味」になっていたりと、独特の雰囲気があるシリーズですね。結構好きです、こういうの。 そういう意味で良かったのは「エレベーター」「泳ぐ . . . 本文を読む

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社文庫

2006年07月12日 | reading
ネタバレ一応注意。 《そして僕はその昔、セックスが山火事みたいに無料だったころのことを思い出した。本当にそれは、山火事みたいに無料だったのだ。》(「雨やどり」、142p) 短編集。一応、連作なのかも。 村上春樹を読んでの感想は、大体いつも同じこと。イメージが豊かで清冽。文章は心地よさの極み。いつもwell-madeです。彼の小説は。 今作は春樹本人の対象者からの聞き取りという体裁を取っており、 . . . 本文を読む

伊坂幸太郎『重力ピエロ』新潮文庫

2006年07月11日 | reading
ネタバレ一応注意。 という訳で読みました。 仙台の街で起こるグラフィティアートと放火事件の奇妙な符合を追いながら、本質的には主人公と弟、春を中心に「家族」を描く小説。なかなか感動的ではあります。 リズムのある文章、オフビートな展開、春に象徴されるところのクールでユニークなキャラクタ、会話のユーモア…伊坂小説に期待されるところのほぼすべてが、ややこなれていない印象を伴いながらも楽しむことができます . . . 本文を読む

米澤穂信『さよなら妖精』創元推理文庫

2006年07月06日 | reading
ネタバレ注意。 ラストの余韻は圧倒的である。あまりにも苦く、哀切なこの物語の終焉をどういう言葉で評価すべきか、とても難しい。単にキャラクタへの愛着だけがもたらすものではない感情への侵食作用は、この小説の「小説」としての高い達成を示すものであると思う。…そんな風にしか評価できない。俺は。 ストーリーとしては、主人公とその友人たちが、ユーゴスラヴィア人の少女マーヤとの出会いと交流を通して、日本文化に . . . 本文を読む

垣根涼介『ヒートアイランド』文春文庫

2006年07月03日 | reading
ネタバレ一応注意。 んー。前作に対する不満がそのまま当てはまってしまうような。無味乾燥な文章(硬質、というのとは違う)、平板であざといキャラクタ造型(アキ、柿沢、あるいは久間は「ホラホラ、かっこいいだろ?」つって差し出されてる感じがして嫌悪感すら感じた。カオルとの関係はベッタリ書きすぎで、そっち方面の需要を狙ってるようにしか思えなかった)、ストリートギャングって題材も、IWGPのが遥かに活写でき . . . 本文を読む