ネタバレ一応注意。
あまり期待はしてなかったんだけど、予想外に良かったです。既読の田中作品ではベストかな。
「笑酔亭」一門に無理矢理入門させられたヤンキー、竜二を主人公にした(…なんだか既視感が)連作短編集。何より見事なのは、タイトルに冠された古典落語がうまくプロットに落とし込まれ、ユーモアも交えて端整な「落語小説」として仕上がっていること。元ネタの魅力も充分に伝えてるし、この構成力は意外な手腕 . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
なにげに西村京太郎の長編読むの初めてかも(短編は法月編のアンソロジーかなんかで読んだ)。デビュー当時は本格志向だった(らしい)国民作家の、そっちの畑では代表的なシリーズの復刻版。ナイス講談社文庫出版部。最近いいぞ。あとは浦賀をなんとかしてくれ。
で、ポアロ、クイーン、メグレ、明智小五郎という四カ国の名探偵が終結するパスティッシュ。この設定からしてワクワクするが、意外ながらスト . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
なんか昨日ドラマやってたみたいですね。ナイスタイミング。
で、俺んなかでは石田衣良と並んで、「昔から上手くて好きだったけど、売れっ子になるとやっぱり筆が荒れてきて、最近あんまりテンションの上がらない作家」として位置づけられている荻原浩。今作は平成のフリータと昭和の青年海軍兵士の、入れ替わり・タイムスリップ小説。
俺は戦争小説ってあまり読まないんだけど(哀しくなるじゃん)、これ . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
勝手に連作でラストに繋がると思ってたので梯子を外された感がありましたが、一話ごとに見ても、それぞれ見所のある短編集です。この作家の、恐ろしく破壊的な過去の作品から見ればおとなしくはありますが、やってることはなかなかに先鋭的。
それぞれの作品に「偶然」が強く作用している。その形を取り出すのがこの作品ににおける名探偵・真紅郎の「シンクロ推理」。どこか人工的なものを感じさせる世界観のな . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
ドラマと併せて書こうかと思ったんだけど、理系男子っぽいいたなさがまったくないオトコマエ二人に観る気を削がれ(俺あの平岡くんって子が生理的にダメだわ。鳥羽潤以来)、録画だけして寝てしまったので、その話はまたいずれ。
で、小説の方は純粋に「楽しい」作品でした。カリカチュアされた舞台設定、魅力的な「謎」、愛らしいキャラクタ。謎解きはそう高いクオリティのものではありませんが(暗号一 . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
ハードボイルド、あるいは恋愛小説を主戦場とする直木賞作家の、唯一の本格作品。この作家の作品は初めて読んだのですが、残念ながらやはり、余技は余技でしかないな、という印象でした。
死体にパパイヤ被せられてたりする謎は魅力的ながら、解決があまりにも粗雑。込み入った物理トリックってやつは個人的に好きじゃなくて、どうしても点は辛くなってしまうのですが。タイトルから連想される「意外な動機」に . . . 本文を読む
ネタバレ特になし。
いつも以上。いつも異常。
この作家らしい、パルプ・フィクションと呼ぶことさえ躊躇われる「激安」ストーリー。今回は昭和史をなぞって激安人物大量登場。さらにはプラスしてエログロ五割増しで大量投入。特に一章は読んでて気分悪かった。
『なぎら☆ツイスター』みたいに物語としての面白さがあるわけでもなく、ただただ「安い」。こんなもん読むのは完全に時間の無駄だし、もちろん得るものなどなにも . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
夢水清志郎のシリーズが文庫に。これは嬉しい。
伏線があからさま過ぎ。トリックが素直過ぎ。…などと、オトナのミステリ読みとしてぐだぐだと言うのが恥ずかしくなるほど、物語として良くできています。読んでいて純粋に「面白い」と感じられるということ、それはジュブナイルとして何より大切なことでしょう。まあ犯人もその意図も、早い段階で見抜けてしまうんだけど…って、また言ってしまった。
しか . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
という訳でこんな時でもないと読まねえと思って、鯨作品と続けて読んでみました。しかし鯨は、なんで「閉じた空」に「白い月」を使わなかったんだろ。ちょっとハマり過ぎってぐらいにハマってるけどなあ。
「天上縊死」なんかはどっかで読んでて、その不穏さから勝手に印象の良い詩人でしたが、ちゃんと読んでみたらやっぱり肌に合う感じでした。死・病・狂気・夢幻といったモチーフ、色濃い「都市」の空気。今 . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
萩原朔太郎を探偵役に据えた連作短編集。いつものようなギャグの連打は気持ち控えめで、大正時代のしっとりした感じを出そうという努力の跡は窺えるも、結局『太陽に吠えろ!』のパロディやっちゃったり(解説で言われるまで気付かんかったが)、通常の鯨バカミスに漸近しているのはご愛嬌。
各話の事件から着想を得た、という設定で、実際の詩作が巻末に置かれる構成。このあたりのカラミが作品のポイント . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
クソみたいな小説を読まされてしまったので、お口直しをしなければなりません。
というわけでニール・ケアリーシリーズの最終作。今回はシリーズをシメるための、後日談的な趣もある小品。メインの事件はあるけど、それもニールが背負ったものとの決着を導くためのもの。
物語としてのスケールは小さいですが、もうコント小説と言ってしまってもいいような、全編に満ち溢れて零れてしまいそうなユーモア・セン . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
今からこの小説を口汚く罵りますので、それが読みたい方だけ先にお進みください。
総論的には、物理的な厚さに比して、内容はなんとも薄っぺらいものだった。ペンタゴンの下請け諜報機関のアナリストを主人公にした、基本的には私立探偵風味の国際スパイ小説と言っていいと思うが、謎を解き、謀略の正体が明らかになっていく過程にまったくスリルも面白みもない。きっかけはいつも向こうからやって来る。ある . . . 本文を読む
ネタバレ一応注意。
「裏(マイナー)京都ミステリー」と題された、京都を舞台にした連作。
主人公は実在の仏閣・大悲閣の架空の寺男・有馬次郎。友人(?)の女性新聞記者から持ち込まれる事件に巻き込まれ、その情報と透徹なる住職の示唆、何より「前職・広域窃盗犯=怪盗」の特殊技能を用いて解決していく。
ミステリとして、論理にやや飛躍が見られもするが、町屋などの住環境、食文化、京都タワーや大文字焼きといった観 . . . 本文を読む
ネタバレ特になし。
「思考と生活」シリーズ最終巻。
感想を箇条書きで。
・蘇部健一を読み、そして日記に書く程度には評価しているという事実に衝撃。
・山形市立図書館が『スカイ・クロラ』のカバーを外していたことに(買ってもいないのに)憤激していましたが、森によればアレは「捨てるデザイン」らしい。俺にアレを捨てることはできないが、司書の方が分かってやってたならお見それしました。
・幻冬舎の編集の笛キャ . . . 本文を読む
ネタバレ注意。
ゴッホの八枚目の「ひまわり」をめぐるハードボイルドだっつーあらすじを読んで、スケールの大きい国際謀略サスペンスだと思ってたら、なんかやたらとマッタリ。新幹線移動だし。世捨て人的な主人公のテンションに引き摺られてるのね(別に欠点ではないよ)。
敵役もなんだかしょっぱくて、ドラマ性にはやや物足りない部分もある。でも文章上手いし、エピソードの作りと繋ぎ方もなかなか。原田などのキャラクタ . . . 本文を読む